2017年9月14日木曜日

米国ニューメキシコ州の石油施設で爆発・火災、死者3名

 今回は、2009年9月1日(金)米国ニューメキシコ州エディー郡カールズバード近郊にあるカザ・ペトロリアム社の石油タンク施設においてタンクが爆発・火災を起こした事故を紹介します。
(写真Currentargus.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国ニューメキシコ州(New Mexico)エディー郡(Eddy County)カールズバード(Carlsbad)近郊にあるカザ・ペトロリアム社(Caza Petroleum Inc.)の石油タンク施設である。

■ 発災があったのは、油井から生産される原油の貯蔵タンクである。タンクは原油を貯蔵するほか、パイプライン入れる前に容量を計測するために使用されていた。
                                   エディー郡カールズバード付近 (白く見える点は油井施設) 
(写真はGoggleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2009年9月1日(金)午前10時50分頃、カールズバード近郊にある油井関連の石油タンク施設で、爆発・火災があった。

は、午前10時50分頃、ロンドン通りとグランディ通りの交差点付近で爆発があったという通報があった。

■ 発災に伴い、近隣の消防署の消防隊が出動し、消火活動が行われた。火災は3時間後の午後2時頃に制圧された。

■ 消火活動中、発災場所の近くのロンドン通りとグランディ通りは交通規制が行われた。

■ 制圧後の火災現場から3名の死者が確認された。死亡者の身元は判明していないが、作業員とみられる。
(写真Currentargus.comから引用)
被 害
■ 石油タンク施設のタンク1基が爆発によって損壊したほか、火災によって複数のタンクが焼損した。被害の範囲は程度は分かっていない。

■ 事故に伴い、3名の死者が出た。

< 事故の原因 >
■ 爆発原因および死亡原因は調査中で、分かっていない。

< 対 応 >
■ 出動した消防隊は、カールズバード消防署とラビング消防署のほか、ボランティア型消防署のアトカ消防署、オーティス消防署、ハッピーバレー消防署、ラウエルタ消防署である。

■ 9月4日(月)、亡くなった作業員のうちの一家族が、カザ・ペトロリアム社に対して訴訟を起こした。
カザ・ペトロリアム社はコメントを発していない。当局も同社に関する情報を発表していない。
(写真Currentargus.comから引用)
(写真Currentargus.comから引用)
(写真Currentargus.comから引用)
補 足
■ 「ニューメキシコ州」(New Mexico)は、米国南西部にあり、人口約208万人の州である。
 「エディー郡」(Eddy County)は、ニューメキシコ州の南東部に位置し、人口約54,000人の郡である。
 「カールズバッド」 (Carlsbad)は、エディ郡の中央部に位置し、郡庁所在地で人口約26,000人の都市である。
米国の各州とニューメキシコ州の位置 
(写真Nizm.co.jpから引用)
■ 「カザ・ペトロリアム社」(Caza Petroleum Inc.)は、2006年に設立された石油会社で、テキサス州ミッドランドを拠点にテキサス州、ニューメキシコ州、ルイジアナ州などで原油・天然ガスの探査・開発・生産を行っている。

■ 発災場所をグーグルマップで探したが、ニューメキシコ州カールズバッド周辺は数多くの油井施設があり、特定できなかった。カールズバードのオーティス地区近くで、ロンドン通りとグランディ通りの交差点付近という位置情報をもとに探したが、この道路沿いに該当するような施設は見当たらなかった。比較的新しい施設である可能性もある。

所 感
■ これまでの報道では、今回の事故の状況や原因ははっきり分からない。事故の写真を見ると、タンク屋根が防油堤外に落下しており、タンク本体(側板)の損壊も激しいと思われる。
 過去の同種事例を見てくると、最も可能性が高いのは、タンク内外での火気作業であろう。自社あるいは請負会社によって何らかの火気作業が行われていたものと思われる。米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」が生かされていない事例ではないだろうか。7つの教訓の項目はつぎのとおりである。
   ①火気作業の代替方法の採用  ⑤着工許可の発行
   ②危険度の分析        ⑥徹底した訓練
   ③作業環境のモニタリング   ⑦請負者への監督
   ④作業エリアのテスト 


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
      ・Kob.com, 3 dead after Plant Explosion near Carlsbad,  September 01,  2017  
      ・Abcnews.go.com, 3 Dead in New Mexico Battery Tank Explosion,  September 02,  2017  
      ・Currentargus.com, Tank battery explodes in Otis,  September 01,  2017
      ・Currentargus.com, 3 dead in tank battery explosion,  September 01,  2017
      ・Currentargus.com, Tank battery explosion leads to lawsuit,  September 06,  2017



後 記: 米国ニューメキシコ州のタンク事故の情報を当ブログで紹介するのは初めてです。意外なように思います。実際に事故が無いのか、情報をキャッチできていないのかはわかりません。今回、3名の死者を出した事故の割に、メディアによる事故情報の中身が薄いと感じます。テキサス州の隣の州で、ハリケーン・ハービーの被災者を受け入れていますので、事故への関心が低いのかもしれません。ただ、最近感じるのは、メディアの体制や組織が弱体化しつつあるのではないかという危惧です。メディアだけでなく、米国政府は米国CSB(化学物質安全性委員会)の組織解散を考えているようです。事故が増えて、事故を報道しなくなるような世の中になるのは避けたいものですね。

2017年9月10日日曜日

米国テキサス州でハリケーン上陸による石油施設の停止と油流出

 今回は、2017年8月25日に米国テキサス州に上陸したハリケーン・ハービーによる石油施設への影響や油流出の事故について紹介します。
(写真はFoxnews.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国テキサス州(Texas)ヒューストン(Houston)周辺のメキシコ湾岸にある石油施設である。

■ テキサス州南部にハリケーン・ハービー(Hurricane Harvey)が上陸し、洪水が発生したため、各所の石油施設が影響を受けたものである。
                             テキサス州のヒューストン周辺 (丸印は石油施設の場所 
(写真はGoggleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
(写真はUsatoday.comから引用)
■ 2017年8月25日(金)、米国テキサス州南部にハリケーン・ハービーが上陸した。上陸時の勢力は中心気圧938hPa、最大風速58m/sで、ハリケーン分類の上から2番目に強い「カテゴリー4」だった。上陸後、勢力は弱まったものの、速度が落ち、テキサス南部に停滞した。ヒューストン周辺では、5日連続で雨が降り続き、総降水量が米国本土の最高記録である1,318mmに達し、このため1,000年に一度と言われる大洪水が発生した。洪水の面積は、秋田県2つ分以上に相当する25,000km2といわれ、多数の死者を出したほか、多くの被害家屋が出ている。このような状況の中で、石油施設にも影響が及んで製油所の操業停止や石油の流出事故などが起こった。

石油タンクの事故
■ 8月27日(日)、テキサス州パサデナにあり、128基の石油貯蔵タンクを有するキンダーモーガン社(Kinder Morgan)のパサデナ・ターミナルで、浮き屋根式タンク1基の浮き屋根が豪雨により沈降し、油流出と汚染物質の大気放散が生じた。流出した油は構内に留まった。このほかに2基の浮き屋根式タンクの浮き屋根が豪雨により沈降したと報じられている。  

■ 8月27日(日)午前5時頃、テキサス州ポートアーサーにあるカーバーン・オイル社(Karbuhn Oil Co)所有の油井施設で、ファイバーグラス製の原油貯蔵タンクにハリケーン・ハービーに伴う雷が落ちた。落雷によって2基のタンクで火災が起こり、原油約5バレル(800リットル)と塩水約20バレル(3,200リットル)が流出した。消防隊が到着時したときには、火災はほとんど燃え尽きていた。

■ 8月29日(火)、テキサス州南部のデウィット郡にあるコノコフィリップス社(ConocoPhillips)の子会社であるバーリングトン・リソーシーズ・オイル・アンド・ガス社(Burlington Resources Oil and Gas)の油井施設用の貯蔵タンク4基が押し流された。油井施設はウェストホフの近郊にあり、タンクは油井から出てきた原油と廃水を保管するものとして使用されていた。4基のタンクには、約385バレル(61KL)の原油と約76バレル(12KL)の廃水が入っていた。流出した量は分かっていない。なお、当時、油井施設は停止されており、油井から直接の原油の流出は無かった。
 同じくバーリングトン・リソーシーズ・オイル・アンド・ガス社のデウィット郡ホーホハイムの近郊にある油井施設の貯蔵タンクも通信が途絶えて懸念されたが、現地を確認した結果、タンク内にあった約316バレル(50KL)の原油と廃水は流出を免れていた。
(写真はCrossroadstoday.comから引用)
■ 8月29日(火)、テキサス州ベイタウンにあるエクソンモービル社(ExxonMobil)のベイタウン製油所で、浮き屋根式タンク1基の浮き屋根が豪雨により沈降し、貯蔵されていた油が大気に曝露され、揮発性有機化合物などの環境汚染を引き起こす要因が生じた。

■ 8月29日(火)、テキサス州スウィーニーにあるフィリップス66社(Phillips66)のスウィーニー製油所で、浮き屋根式タンク1基の浮き屋根が豪雨により沈降し、ガソリンベーパーが大気に放散した。

■ 8月30日(水)、テキサス州ヒューストンにあるヴァレロ・エナージー社(Valero Energy Corp)のヒューストン製油所で、浮き屋根式タンク1基の浮き屋根が豪雨により沈降し、貯蔵されていた原油が防油堤内に漏洩した。漏洩した油量は分からないが、堤内に留まっており、クリーンアップ作業が行われた。

■ 9月4日(月)の報道では、つぎのように報じられている。
 ● テキサス州パサデナにあるフィリップス66社のパサデナ製品タンクターミナルで、浮き屋根式タンク4基の浮き屋根が豪雨により沈降した。
 ● テキサス州ディアパークにあるシェル・オイル社(Shell Oil)のディアパーク製油所では、 2基の浮き屋根式タンクの浮き屋根が沈降した。このうち1基からは油が漏洩し、防油堤内に流出した。漏洩は封じ込まれており、クリーンアップ作業が行われた。
 ● テキサス州テキサスシティにあるマラソン・ペトロリアム社(Marathon Petroleum)テキサスシティ製油所では、 浮き屋根式タンク1基の浮き屋根が沈降した。

■ 9月2日(土)、テキサス州ボーモントにあるエクソンモービル社のボーモント製油所で、市内で起った洪水の水が高さ10フィート(3m)の製油所用堤防を越えて構内に流入した。このため、製油所内の油がオーバーフローしてジェファーソン郡の郡道に出て油膜が浮かんだ。

製油所の操業停止
■ ハリケーン・ハービーの上陸によって、製油所が停止し、8月31日(水)時点で米国内の石油精製の生産能力は20%以上低下したといわれている。テキサス州のコーパス・クリスティからルイジアナ州境までのメキシコ湾岸沿いは石油およびケミカルの主要な供給地域であり、米国経済の約3%を担っている。

■ テキサス州のコーパス・クリスティ地域には複数の製油所があるが、ハリケーン上陸前の8月25日(金)に6つの製油所が稼働を停止させていた。精製設備の一部は8月30日(水)に稼働を再開したが、メキシコ湾岸沿いの製油所は、洪水によって8月31日時点で停止したままである。
 
■ テキサス州のヒューストン/ガルベストン地区にある複数の製油所のうち、8月29日(火)時点で、エクソンモービル社、ヴァレロ・エナージー社(Valero Energy Corp)、マゼラン・ミッドストリーム・パートナーズ社(Magellan Midstream Partners)、バックアイ・パートナーズ社(Buckeye Partners)、フィリップス66社(Phillips 66)の5つの製油所が、洪水のため、稼働を停止している。

■ テキサス州のポートアーサーにある米国最大の精製能力60万バレル/日を有するサウジアラビアン・オイル社(Saudi Arabian Oil)とシェル・オイル社(Shell Oil)の合弁企業であるモティバ・エンタープライズ社(Motiva Enterprises)のポートアーサー製油所も、地域の洪水によって、8月27日(水)に停止した。 

■ ルイジアナ州のレイク・チャールスにあるヴァレロ・エナージー社とモティバ・エンタープライズ社の2つの製油所は通油量を落として稼働している。
(写真はNewsrepublic.comから引用)
(写真はFoxnews.comから引用)
(写真はBreitbart.com から引用)
 港の閉鎖
■ テキサス州にある港のうち、ボーモント港、ネダーランド港、オレンジ港、ポートアーサー港、ポートネーチス港、サビーネ港、サバインバー港が閉鎖され、ルイジアナ州のレイクチャールス港も閉鎖された。

石油ターミナルの運転停止
■ マゼラン・ミッドストリーム・パートナーズ社は、長距離パイプラインのブリッジ・テックス・パイプラインとロングホーン・パイプラインの2本の運転を停止した。キンダー・モルガン社は、テキサス州を走る30万バレル/日の通油能力をもつ原油・天然ガスのパイプラインを選択停止させた。

■ マゼラン・ミッドストリーム・パートナーズ社はコーパス・クリスティにある原油ターミナルの運転を停止した。 バックアイ・パートナーズ社もコーパス・クリスティにあるマリーン・ターミナルの稼働を停止し、原油、天然ガス、燃料油、ナフサ貯蔵施設の運転を停止した。

■ フィリップス66社は、テキサス州のフリーポート港が閉鎖された後、フリーポート・ターミナルとテキサス・ターミナルの運転を停止した。また、同社はテキサス州のネダーランドにある原油および石油製品の貯蔵ターミナルの運転を停止した。

■ ニュースター・エナージー社(NuStar Energy)は、コーパス・クリスティにある原油および石油製品の貯蔵ターミナルの運転を停止した。

■ コロニアル・パイプライン社(Colonial Pipeline)は、8月30日(水)、ハリケーン襲来のため、ルイジアナ州レークチャールスの西にあるパイプライン施設を一時的に運転を停止した。30日(水)の夜には、ディーゼル燃料と航空機燃料を移送するコロニアル・ライン2の施設が停止された。8月31日(木)には、ガソリンを移送するコロニアル・ライン1が停止された。
(写真はBusinessinsider.comから引用)
被 害
■ 石油施設において物損や操業ロスなどの被害が出ているが、被害額は分かっていない。

■ 9月3日(日)、テキサス州知事はハリケーン・ハービーによる州の被害総額は1,800億ドル(約20兆円)に達する可能性があると語った。ハリケーンによる死者は50人とみられ、被害家屋は20万戸を越え、家を追われた人は100万人を超えるといわれている。

< 事故の原因 >
■ 事故原因は、ハリケーン・ハービーによる風水害である。

< 対 応 >
■ 9月2日(土)、環境保護団体のスカイ・トゥルース(Sky Truth)は、ハリケーン・ハービーの環境への影響を衛星写真による分析を行い、インターネットへの投稿を始めた。
スカイ・トゥルースが発表した衛星写真の分析例
ドレイヤーから西に2kmほど離れた油井施設が洪水で冠水した地区の衛星写真である。洪水の水が濃い色になっているのは、油またはケミカルが流出していることを示す。
(写真と解説はSkytruth.orgから引用)
■ 9月6日(水)、ハリケーン・ハービーで停止した米国テキサス州の製油所の復旧が進んでいると報じられてる。エクソンモービル社のベイタウンの製油所は9月初めに操業を再開した。マラソン・ペトロリアム社のガルベストン製油所は稼働率45%の水準で操業再開した。シェル・オイル社はディアパーク製油所の9月5日再開を発表した。フィリップス66社のボーモントの製油所およびシトゴ社(Citgo)のコーパスクリスティーの製油所はまもなく再開すると発表した。一方、モティバ・エンタープライズ社のポートアーサー製油所の再開は2週間ほど先となる見込みだという。

補 足
■ 「テキサス州」(Texas)は、米国南部にあり、人口約2,780万人の州で、州都はオースティンである。人口はカルフォルニア州に次いで全米第2位、面積はアラスカ州に次いで全米第2位の州で、日本より広い。原油が発見されて以来、テキサス州の経済は石油産業の状況に大きく依存してきた。テキサス州では、25個所の製油所がある。
 今回のハリケーン・ハービーの進路とテキサス州の石油施設の場所は図のとおりである。
ハリケーン・ハービーの進路とテキサス州の石油施設の場所 
(図はNrdc.orgから引用)
所 感
■ 過去にハリケーンや集中豪雨によって起った石油施設の事故事例はつぎのとおりである。

 今回のハリケーン・ハービーによる石油施設の被害や影響の特徴はつぎのとおりであろう。
 ● ヒューストンなどテキサス州のメキシコ湾岸の25,000km2という広い地域で洪水が起こり、製油所など多くの石油施設が浸水や冠水の影響を受けた。
 ● 5日間で最大1,300mmを超える猛烈な降水量の雨が降り、浮き屋根式タンクの浮き屋根が沈降するという事例が多く発生した。

■ ハリケーン・ハービーによる被害範囲があまりにも多く、浮き屋根式タンクの浮き屋根が沈降するという本来は注目すべき事故は個々の状況が報じられていない。おそらく、浮き屋根の雨水排水管入口部がサビやゴミで詰まり気味だったタンクで起ったものと思われる。ハリケーン襲来前には、事前点検が行われていると思うが、抜けや大丈夫だろうという予断があったのだろう。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。 
      ・News.yahoo.co.jp, ハリケーン・ハービー、ニ度目の上陸 これから懸念されること,  August 30,  2017 
      ・Conocophillips.com,  ConocoPhillips Responds to Harvey,  August 31,  2017  ​   
  ・Washingtonpost.com,  ExxonMobil Refineries are Damaged in Hurricane Harvey, Releasing Hazardous Pollutants,  August 31,  2017  
  ・Tankstoragemag.com, Tropical Storm Harvey Battles Gulf Coast,  August 29,  2017 
      ・Tankstoragemag.com, Storage Spill & Explosion as Harvey Continues to Thrash Gulf Coast,  August 31,  2017
      ・Foxnews.com, Harvey Damages Oil Tanks, Spilling 30,000 gallons of Crude,  August 31,  2017   
      ・Nbcnews.com, Harvey Releases 2 Million Pounds of Pollutants from Refineries, Plants,  August 30,  2017 
      ・Expressnews.com, Harvey Halts 20 percent U.S. Refining  Operations,  August 30,  2017 
      ・Chron.com, Lightning from Hurricane Harvey Hits Oil Storage Tank near Wildlife Management Area,  August 29,  2017 
      ・Crossroadstoday.com, Oil Spill in Dewitt Caused by Hurricane Harvey,  September  01,  2017
      ・Nola.com, Hurricane Harvey Aftermath: Chemical Plants Already Released 1 Million Pounds of Extra Air Pollutants ,  September  04,  2017 
      ・Fortune.com, Hurricane Harvey Damages Could Cost up to $180 Billion,  September 03,  2017 
      ・Breitbart.com, Exxon Mobil Oil Spills over ‘Harvey’ Flooded Levee,  September 03,  2017
      ・Nikkei.com, 原油価格が反発 ハリケーン被害の米製油所復旧見込みで,  September 06,  2017 
      ・Jetro.go.jp , テキサス州の製油所が徐々に操業再開-ハリケーンの影響、港湾やパイプラインは復旧遅れる,  September 04,  2017
      ・Skytruth.org Fortune.com, Hurricane Harvey Damages Could Cost up to $180 Billion,  September 02,  2017     



後 記: 前回のブログの後記で、8月下旬、テキサス州にハリケーン・ハーベイ(Hurricane Harvey)が襲来し、ヒューストンで洪水が起こっていることを書きましたが、おそらく、油流出の事故(被害)が生じているだろうと思って調べ始めました。ハリケーンの被害は思っていた以上に広範囲で深刻なものが多く、個々の事故(被害)に関する情報は埋もれているような状況でした。浮き屋根沈降や油流出に関することは、多くの記事の中のほんの数行といった感じでした。
 なお、今回はハリケーン「ハービー」としました。日本語の表記では、ハーベイとハービーの2つに分かれていましたが、多い方のハービーにしました。

2017年9月1日金曜日

米国テキサス州で浮き屋根式タンクに落雷して火災(2009年)

 今回は、2009年7月23日(木)、テキサス州ガルベストン郡テキサスシティにあるシーウェイ・クルード・パイプライン社のタンク施設の原油タンクに落雷があり、火災となった事例を紹介します。
(写真はGalvnews.com から引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、テキサス州(Texas)ガルベストン郡(Galveston County)テキサスシティ(Texas City)にあるシーウェイ・クルード・パイプライン社(Seaway Crude Pipeline Company LLC)のタンク施設である。

■ 発災があったのは、テキサスシティのワイ地区の環状197号線近くにあるタンク施設内の容量600,000バレル(95,000KL)の原油タンクである。原油タンクには、軽質原油が貯蔵されていた。
テキサスシティのシーウェイ・クルード・パイプラインのタンク施設付近 
(写真はGoggleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2009年7月23日(木)午後6時頃、シーウェイ・クルード・パイプライン社のタンク施設内に複数基あった原油タンクのうちの1基に落雷があり、火災となった。当時、雷雨前線がテキサス州メキシコ湾からガルベストン郡を通過中だった。
■ 火災によって発生した黒煙がテキサスシティとラ・マークの上空を覆った。
 
■ 火災発生に伴い、タンク内に装備された自動システムの固定式泡消火設備が作動した。火災は、発災から45分ほどで制圧下に入った。

■ 火災は午後7時45分までに消火された。発災に伴い出動していた消防隊は、火災が再燃しないことを確認するため、夜通し、監視を行った。

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。発災時、従業員1名が施設内にいたが、落雷が起こったときにタンク近くにはいなかったという。

被 害
■ 容量95,000KLの原油タンクの浮き屋根シール部が焼損し、側板の一部が火炎にあぶられた。タンク内の軽質原油の一部が焼失した。

■ 事故に伴う負傷者は無かった。
(写真はGalvnews.com から引用)
(写真はGalvnews.com から引用)
< 事故の原因 >
■ 事故原因は、タンク浮屋根裏側にトラップされていた原油のベーパーが落雷によって着火したものとみられる。

< 対 応 >
■ テキサスシティ消防署のほか、近隣のラ・マルク消防署とテキサスシティに製油所をもつBP社からの応援による消防隊が共同して防災活動を実施した。しかし、火災の大部分はタンク内の固定式泡消火システムによって制圧された。

■ 消防隊が消火活動中、環状197号線、州ハイウェイ3号線の一部と州ハイウェイ146号線は閉鎖された。 テキサスシティ市役所は避難勧告を出さなかったが、火災状況について住民へ知らせるため電話の音声メッセージを流した。

■ シーウェイ・クルード・パイプライン社は、今後、タンクにどのような損傷があるか検査し、損傷に応じて適切な補修を行うと語った。

■ この事例については、YouTube「Oilstorage tank struck by lightning in Texas City」に動画が投稿されている。
(写真はGalvnews.com から引用)
(写真はGalvnews.com から引用)
補 足
■ 「テキサス州」(Texas)は、米国南部にあり、人口約2,780万人の州で、州都はオースティンである。
 「ガルベストン郡」(Galveston County)は、テキサス州の東南部に位置し、人口約29万人の郡である。   
 「テキサスシティ」(Texas city)は、ガルベストン郡にあり、人口約45,000人の都市である。テキサスシティは石油・石油化学の工場のある工業都市である。 「ラ・マルク」(La Marque)は、テキサスシティに隣接し、人口は約14,500人の町である。
        テキサス州のテキサスシティ付近 (図はGoogleMapから引用)
■ 「シーウェイ・クルード・パイプライン社」(Seaway Crude Pipeline Company LLC)は、メキシコ湾岸で採掘された原油をパイプラインでテキサス州の製油所への輸送業務などを行っている。 今回の落雷事故のあったタンク施設は、原油を一時貯蔵する施設である。発災当時は、 テプコ・パートナーズ社(TEPPCO Partners L.P)系列の会社であったが、現在は、エンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ社(Enterprise Products Partners L.P.)とエンブリッジ社(Enbridge Inc.)との合弁会社で、2012年には、オクラホマ州側から原油を逆に移送するパイプラインを確立させている。なお、発災時に支援で出動したBP社の製油所は、現在、マラソン・ペトロリアム社(Marathon Petroleum Company)が所有するテキサスシティ・ガルベストンベイ製油所(459,000バレル/日)として操業されている。

■ 火災のあった原油タンクは修理を終えて、現在、操業を行っている。グーグルマップによると、容量95,000KLの原油タンクの直径は約91mであることから、高さは約15mクラスである。
テキサスシティにある現在のシーウェイ・クルード・パイプラインのタンク施設 
(写真はGoggleMapから引用)
現在のシーウェイ・クルード・パイプラインのタンク施設 
(写真はGoggleMapから引用)
所 感
タンク浮屋根部のシール構造の例 
(図はSuzuei.co.jpから引用)
■ 今回の事故は落雷による浮屋根式タンクのリムシール火災(リング火災)の典型的な事例である。リムシール火災は全周でなく、約四分の一周程度に限定されている。米国では、一般に固定式泡消火設備を設置したタンクは多くないが、原油パイプラインの一時貯蔵用タンク施設のため、タンクには自動システムの泡消火設備が設置されたものと思われる。このタンクに装備された固定式泡消火設備が有効に機能した事例でもある。
 
■ 今回の事例で興味深いのは、側板に黒い波形の筋がついていることである。 タンク浮屋根裏側にトラップされていた油のベーパーがシール部を抜けて炎となって側板をあぶったためと思われる。奇妙な形になっているが、すでに自動システムで消火泡が投入されているので、この関連があるのかもしれない。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
      ・Galvnews.com, Lightning Sparks Oil Tank Fire,  July 23,  2009  
      ・Galvnews.com, Lightning Sparks Oil Tank Blaze,  July 24,  2009  
  ・Khou.com, Lightning Hits Oil Tank,  July 24,  2009 
  ・Reuters.com, Texas City Tank Fire Quickly Extinguished-Spokesman,  July 24,  2009



 後 記: 先日、インドで落雷による浮き屋根式タンクのリムシール火災があり、このブログで紹介しました。一方、日本でも、8月19日東京で2時間に1,000発の落雷があり、8月22日には愛知県で落雷によるとみられる火災が3件あったというニュースがあり、落雷による火災のリスクが大きくなっています。ということで、以前の事故ですが、典型的な落雷による浮き屋根式タンクのリムシール火災事故を紹介することとしました。場所は米国テキサス州テキサスシティですが、この夏の8月下旬、テキサス州にハリケーン・ハーベイ(Hurricane Harvey)が襲来し、ヒューストンで洪水が起こっていると報じられています。ヒューストンの南にあるテキサスシティも災害に見舞われているようです。
ハリケーン・ハーベイによってテキサスシティ・ガルベストンベイ製油所前の冠水した道路(826日) 
(写真はCbcnews.comから引用)