2018年5月18日金曜日

米国ウィスコンシン州の製油所で爆発、貯蔵タンクが被災して火災、20名負傷

 今回は、2018年4月26日(木)、米国ウィスコンシン州ダグラス郡スーペリアにあるハスキー・エナージー社の製油所で、流動接触分解装置が爆発し、金属片がアスファルトの貯蔵タンクに当たって穴が開き、火災となった事例を紹介します。
(写真はCbc.caから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国のウィスコンシン州(Wisconsin)ダグラス郡(Douglas)スーペリア(Superior)にあるハスキー・エナージー社(Husky Energy)の製油所である。

■ 発災があったのは、ハスキー・エナージー社スーペリア製油所である。スーペリア製油所の精製能力は50,000バレル/日である。製油所は、5年ごとの定期検査のため、4月30日(月)から運転停止して5週間の定期検査を準備しており、広範囲の開放工事を予定して多くの作業員が入構していた。
ハスキー・エナージー社スーペリア製油所付近  (矢印が発災タンク)
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2018年4月26日(木)午前10時頃、ハスキー・エナージー社スーペリア製油所で爆発が起こり、続いて、火災が発生した。現場からは有害な煙が大気中に放出された。

■ 最初の爆発が起きた後、金属片がアスファルトの貯蔵タンクの1基に当たって穴が開き、2度目の火災になった。タンク側板の穴の開いた箇所から真黒い液体が奔流となって落ち、数時間にわたって流れ出した。2回目の爆発が午後12時30分頃に起こった。その後、午後から複数回の爆発が発生した。
(写真はHuffingtonpost.comから引用)
■ 製油所から約1マイル(1.6km)離れたところにある店の主人は、「照明が3回ほど付いたり消えたりし、建物全体が揺れました」と語った。製油所から約2マイル(3.2km)離れたところに住んでいた夫婦は、爆発が起こったとき、家に車か何かがぶつかったと思ったという。犬が吠え始めた。犬と猫を抱きあげ、友人宅に避難し、最新のニュースを見ていたという。

■ この事故に伴い、少なくとも13名が負傷した。うち6名が病院へ搬送され、7名は現場で治療を受けたという。その後、5月1日(火)時点で負傷者は少なくとも20名いたことが分かった。

■ 事故が起こったのが午前中の休憩時間だったことは、不幸中の幸いだったといえよう。現場には、請負会社の多くの作業員が入構していた。

■ 製油所から半径5km圏内の住民に、また、煙が流れる南の方向では16kmの範囲に避難指示が出された。また、近隣の住宅、学校、病院に避難指示が出された。製油所は工業地区にあるが、北東側の2km以内に住宅地がある。このため、千人以上が避難し、3つの学校と1つの病院が予防措置として避難した。風下の南側は人があまり住んでいない地区だった。

■ 発災に伴い、消防署が出動した。消防署によると、火は午前11時頃に消えたと発表したが、現場ではなおも煙が出続け、火災が再び起こった。警察は避難した人のために、再点火したということをツイッターで公表した。警察は近くの道路の交通を遮断した。
(写真はEcowatch.comの動画から引用)
■ 426日(木)の午後になると、火炎の勢いが増し、消火を試みることができなかった。消防隊は近隣のタンクに冷却水を掛け、火災が拡大するのを防ごうと試みた。消防隊員は火炎だけでなく、発火する恐れのある他のケミカル類や石油製品に関する危険性を考慮しなければならない。しかし、午後遅くなって約30名の消防隊員からは、十分な消火水と水圧が得られたと報告があった。その後、泡消火が試みられた。

■ 火災は、4月26日(木)午後6時45分頃、消された。しかし、熱い油が現場に残っており、別な火災の原因になったり、ほかの問題を生じる恐れがあるため、消防隊は27日(金)まで現場に残って監視を続けた。

避難指示解除で帰宅する住民
(写真はStartribune.comから引用)
■ 住民の避難指示は継続され、解除されたのは4月27日(金)午前6時だった。

■ 製油所でフッ化水素を使用しているために、住民を避難させることにつながった。このことはスペリオル市長が明らかにした。市長は以前からフッ化水素の代替物質を検討すべきという意見をもっていた。現場では、フッ化水素が爆発や火災に関係ないということを確認するのに、1時間ほどかかったという。
 米国の製油所では、ガソリンのオクタン価を上げるため、まだフッ化水素を使用しているところがある。フッ化水素は有毒ガスであり、長年警告が発せられてきた。公衆衛生センターの2011年報告書によれば、スーペリア製油所で使用されている量は、最悪の場合、180,000人が死や重大な人身傷害に至る恐れがあるという。

被 害
■ 流動接触分解装置の一部が損壊し、火災で焼損した。
 アスファルト貯蔵タンク1基が破片で損傷し、内部の流体が流出して火災となった。

■ 事故に伴い、20名以上が負傷した。

■ 住民が、火災の煙とフッ化水素の懸念のため、千人以上が約20時間避難した。実際の避難者数は分かっていない。

< 事故の原因 >
■ 発災の起点は流動接触分解装置の爆発によるものである。爆発の原因は調査中である。
 アスファルト貯蔵タンクの損壊は、装置の爆発のよって飛散した破片が側板に当たって貫通したものである。
(写真はEcowatch.comの動画から引用)
(写真はEcowatch.comの動画から引用)
< 対 応 >
■ 米国環境保護庁は、現場まわりの大気(空気質)の状況の監視を行った。4月27日(金)朝の状況では、安全な状態であることを確認したという。

■ 米国化学物質安全性委員会(The U.S. Chemical Safety Board ; CSB)は事故調査を行うことととした。また、4月27日(金)、米国化学物質安全性・危険性調査委員会(The U.S. Chemical Safety and Hazard Investigation Board)は、調査のため4人のメンバーを派遣することとした。調査メンバーは、つぎのような点を焦点をおいて調査を行い、予備調査結果にもとづき、さらに調査を進める予定である。
 ● 物理的な証拠を収集して文書化。
 ●  製油所内と事故現場の撮影。
 ●  事故に関連する可能性あるのハスキー・エナジー社と請負会社の従業員への事情聴取。
 ●  事故当時に製油所内で実施される作業に関連する文書の入手。この中には、作業計画、安全計画、ハザード分析、安全分析を含む。
 ●  事故に関連していると疑われる機器の建設、保守、検査記録の入手。
 ●  事故時の緊急対応の有効性の検証。この中には、避難対応を含む。

■ 5月1日(日)、米国化学物質安全性・危険性調査委員会は、最初の爆発が流動接触分解装置(13,000バレル/日)で起こったことを明らかにした。今後、なぜ流動接触分解装置が爆発を起こしたかを調べるため、金属分析を行う予定で、金属片について物理的性質と化学的性質が調べられる。

■ ハスキー・エナージー社は、5月4日(金)時点で、1,045通のクレームを受け取ったという。そのほとんどは、避難中に発生した経費や損失に関するものだった。ごくわずかであるが、傷害に関わるクレームもあるという。
(写真はFirehouse.comから引用)
(写真はDenver.cbslocal.comから引用)
                       事故後の状況   (写真はStartribune.com から引用)
飛散した破片
(写真は、左と中: Csb.gov、右: Superiortelegrarmcomから引用)
補 足
■ 「ウィスコンシン州」は、米国の中西部の最北に位置する州で、五大湖地域に含まれる。人口約570万人で、州都はマディソンである。 
 「ダグラス郡」(Douglas County)は、ウィスコンシン州の北西部に位置し、五大湖地域にあり、人口は約44,000人の郡である。
 「スーペリア」(Superior)は、ウィスコンシン州北西端に位置し、ダグラス郡の郡庁所在地で、人口は約27,000人の都市である。スーペリアには、ウィスコンシン州で唯一の製油所であるスーペリア製油所がある。
ウィスコンシン州ダグラス郡スーペリアにあるスーペリア製油所付近
(写真はGoogleMapから引用)
■ 「ハスキー・エナジー社」(Husky Energy Inc.)は、1938年に設立し、カナダのアルバータ州カルガリーを本社とする石油と天然ガスのエネルギー会社である。カナダを始め、世界で原油と天然ガスの探査、開発、生産などの業務に従事している。香港を本社とする多国籍企業のハチソン・ワンポア(Hutchison Whampoa Ltd.)の子会社のひとつである。2008年に中国海洋石油がハスキー・エナジー社の子会社の株式の50%を取得した。2009年、ハスキー・エナジー社は南シナ海で大型ガス田を発見している。

■ 「スーペリア製油所」(Superior Refinery)は、ハスキー・エナジー社が2017年にカルメット・スペシャリティ・プロダクト・パートナーズ(Calumet Specialty Products Partners. LP)から買収して得た。精製能力は50,000バレル/日で、アスファルト、ガソリン、ディーゼル燃料、重油を製造する。当時の従業員数は180名である。製油所は、アルバータのオイルサンドと軽質のノースダコタのバッケン原油の両方を処理する。また、製油所には、2つのアスファルト・ターミナルと360万バレル(57万KL)の原油と石油製品の貯蔵タンクがある。
 なお、スーペリア製油所では、カルメット・スペシャリティ・プロダクト・パートナーズ時代につぎのような事故を起こしている。

■ 「発災タンク」はアスファルト用で保温付き固定屋根式タンクであるが、仕様は分からない。グーグルマップによると、直径約28mであり、高さを10mと仮定すれば、容量は約5,800KLとなる。
               事故前の発災タンク(矢印)   (写真はGoogleMapから引用)
所 感 
■ この事故は流動接触分解装置の爆発に伴って、破片が隣接するアスファルトタンクの側板を貫通して火災になるという極めて珍しい事例である。プロセス装置が爆発して、貯蔵タンクが被災するという事例は、架空で想像したような筋書きであり、実際に起こりうるといことに驚く。少しでも破片の衝突がズレておれば、キズがつくにしても開口することはなかっただろう。

■ 流動接触分解装置のプロセスは、温度は高い(約430~540℃)が、圧力は低い(0.1~0.2MPa)装置であり、本体系装置の爆発ではないだろう。破片がタンク側板を貫通させるくらいの強烈な爆発力であり、2次装置の液化石油ガス(LPG)系などの異常によるものではないかだろうか。それにしても、破片の写真を見ると、配管ではなく、何かの機器で結構な大きさのものであり、脆性的な割れの様相が見られる。あるいは、製油所は定期検査のためのシャットダウンに入っており、非定常運転による要因が関係しているのかもしれない。事故調査には公的機関が入っており、明らかにされるだろう。

■ 事故対応の消防活動についてはあまり言及されていない。2015年のカルメット社時代の「米国ウィスコンシン州の製油所でアスファルト・タンク火災」では、公的消防と製油所消防の連携が良かったことが伝えられているが、今回は流動接触分解装置の爆発、アスファルトタンクの火災、フッ化水素の問題など考慮すべきことの多い事故だったので、現場では大変だったように思う。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Cbc.ca,  Fire Reignites at Husky Energy Oil Refinery in Wisconsin after Being Put Out,  April 27  2018
    ・Afpbb.com ,  米中西部の精油所で爆発・火災、6人負傷 住民に避難命令,  April  27,  2018
    ・Cbc.ca,  Officials Say 13 People Injured in Husky Refinery Fire in Wisconsin,  April 27  2018
    ・Reuters.com , Wisconsin Oil Refinery Fire Out, at Least 15 Hurt: Officials,  April 27,  2018
    ・Wdio.com,  Husky Receives 1,000 Claims After Refinery Fire,  May 04,  2018
    ・Mprnews.org,  Husky Energy Refinery Blast in Wisconsin: What We Know,  April 26  2018
    ・Theglobeandmail.com, Husky’s Wisconsin Refinery Fire Started in Gasoline Unit,  May 01,  2018
    ・Wpr.org,  Safety Board: Superior Refinery Explosion Happened In Fluid Catalytic Cracking Unit,  May 01,  2018
    ・Wbay.com ,  Fire is out at Superior oil refinery; evacuation order lifted ,  April 26,  2018
    ・Jsonline.com,  Fire Extinguished at Superior Oil Refinery after at Least 20 Were Injured in Explosions,  April  26, 2018
    ・Csb.gov,  Husky Energy Oil Refinery Investigation Update ,  May 02,  2018
    ・Csb.gov,  Husky Energy Oil Refinery Investigation Update ,  May 11,  2018
    ・Npr.org,  Emergency Evacuation Finally Lifted After Huge Oil Refinery Fire In Superior, Wis.,  April 27,  2018
    ・Superiortelegram.com,  CSB Issues update on Husky Energy Refinery Fire in Superior ,  May 15,  2018
    ・Denver.cbslocal.com , Explosion Rocks Wisconsin Oil Refinery; Entire City Could Be Evacuated,   April 26  2018
    ・Startribune.com, Wisconsin Gov. Scott Walker Inspects Damage at Refinery Blast Site,  April 30,  2018


後 記: 事故情報は多いのですが、はっきりしないことの多い事例です。米国では負傷者に敏感なはずですが、負傷者数は記事や日にちによって変わっています。20名としましたが、入構していた作業員のほかに住民がいるのかどうかがはっきりしません。また、事故の経過がはっきりしません。初めは原油またはアスファルトタンクが火災になったという情報でしたが、あとになって流動接触分解装置の爆発・火災が引き金になったことが報じられました。午前中に消火したという話や爆発が午後まで続いたという情報があり、事故の経過や消防活動がどうだったのかはっきりしません。
 ところで、ハスキー・エナジー社の経歴をみると、カナダの会社ですが、香港の多国籍企業ハチソン・ワンポアの子会社であり、米国のウィスコンシン州の製油所を買収したり、中国海洋石油がハスキー・エナジー社の子会社の株式の50%を取得し、ハスキー・エナジー社が南シナ海で大型ガス田を発見しているという話を聞くと、石油メジャーの姿が変わってきたなと感じますね。

2018年5月7日月曜日

タンク施設におけるサイバーセキュリティの危険性

 今回は、2018年2月、ハドソン・サイバーテック社のマルセル・ユッテ氏が解説した「タンク・ターミナルのサイバーセキュリティのリスク」(Tank Terminal Cyber Security Risks)について紹介します。
(写真はLinkedin.com,から引用)
< 概 要 >
 サイバーセキュリティの最適システム構築会社(ソリューション・プロバイダー)であるハドソン・サイバーテック社(Hudson Cybertec)のマネージメント・ディレクターであるマルセル・ユッテ氏は、各事業者が直面するサイバーセキュリティのリスクについて述べ、なぜ事業の運転技術の中のサイバーセキュリティが安全性と同じくらい重要であるかについて解説している。

< 基本認識 >
■ タンク・ターミナルでは、施設の管理、制御、維持のため、運転技術の領域を一体化したシステムを導入している。

■ 従来から使用されてきたシステムの基盤を新しいシステムの基盤と統合すると、運転技術の領域は複雑になっていく。効率化をねらって、オペレータがさまざまな(遠隔な)場所から作業できるようにしている。オンロード型にせよ、オフロード型にせよ、中継機能をもった物理的な要素をもはや必要としなくなった。運転技術の基盤設備やネットワークがどんどん複雑化していく中で、タンク・ターミナルの操業は、安全にターミナルの運転を支援するシステムにますます依存している。

■ プラント運転が運転技術の領域において統合システムや集中制御への依存度を高める中で、タンク・ターミナルへのサイバーセキュリティのリスクは大きくなっている。情報通信技術の領域と運転技術の領域には違いがあり、情報通信技術の領域において開発されたシステムの規格や最適な取扱い方法が、運転技術の領域におけるシステムに直接的に適用できないということである。というのは、これらの規格は特別仕様で作られた運転技術の領域の環境を考慮していないからである。ハドソン・サイバーテック社マネージメント・ディレクターのマーセル・ユッタ氏は、「情報通信技術のサイバーセキュリティの規格が運転技術の領域に適用されることが多々あり、その結果、セキュリティが不適切で、リスクが増えてしまうことがある」と述べている。

< サイバーセキュリティのリスク >
■ タンク・ターミナルにおけるサイバーセキュリティへのリスクはあらゆる形態で存在している。その脅威は組織の内でも外でも発生し、絶え間なく進化している。このため、企業の運転技術の領域におけるサイバーセキュリティも同様に進化することが求められている。

■ 企業などの組織は、サイバーセキュリティへのリスクに対して手抜かりなく準備を行い、もっとも新しい脅威の情報を得るとともに、サイバーセキュリティについて定期的にチェックすべきである。

■ 外部から侵入して操作しようとする者には、危険人物、対立相手、組織的犯罪グループ、その他ある目的をもった行為者などがあり、操業への混乱(荷役の積み降し)、金銭的誘導(株価操作)、産業スパイ活動(機密データへのアクセス)を行う。内部から操作しようとする者は、不満をもった従業員やサードパーティなどであり、故意にあるいは故意でないにしろ、サイバーセキュリティの事件を引き起こしてしまう。これは、サイバーセキュリティの管理が不適切であったり、トレーニングが不十分で認識が無いために起こる。

■ このほかにサイバーセキュリティへのリスクとしては、従来から使用してきた設備とネットワークの基盤が運転技術の基盤と統合されているという複雑な基盤に関係していることがある。このような設備とネットワークは、その当時の規格や知識あるいは最適な取扱い方法によって設計されている。オリジナルの設計にサイバーセキュリティが考慮されていないというところから、サイバーセキュリティへのリスクが生じることになる。ハドソン・サイバーテック社のユッタ氏によれば、従来から使用してきた基盤のサイバーセキュリティのリスクを明らかにするには、運転技術の領域単独のサイバーセキュリティに関して精査する必要がある。

< 人の重要性 >
■ サイバーセキュリティの柱は、人、プロセス、技術の3つである。セキュリティを確保するためには、この3つの柱をバランスよく保つ必要がある。理想的なサイバーセキュリティは、組織内における日々のオペレーションを一体化するとともに、システム、ポリシー、操作方法をうまくサポートすることである。

■ サイバーセキュリティに関連する技術は、情報通信技術の領域としてもっとも一般的であり、組織内ですでに使用されている。一方、運転技術の領域では、それほど一般的でない。大抵の場合、二つの領域におけるサイバーセキュリティの差は5年以上である。

■ サイバーセキュリティの人的要因はよく見落とされる。一般に安全・安心のために管理すると言われているが、サイバーセキュリティ分野ではこのことが欠けており、このためサイバーセキュリティに脅威をもたらしている。管理者を含めたコンピュータのユーザは、意図せずに、ウェブサイトやEメールをクリックすることによって産業スパイ活動のマルウェアを作動させたり、感染した装置に接続することによって暗号化したランサムウェアを持ち込んでしまう。

■ このような攻撃を受けたあとから修復するには、困難さを伴ったり、時間がかかったり、多大な費用がかかったりすることが多々ある。サードパーティによる作業は、特定のサポート・システムやメンテナンスを行うために、自身の設備やツールあるいはコンピュータを使用する。時として、これらの業務が管理されない状態にある。導入したシステムのサイバーセキュリティについて責任の所在がはっきりしないため、脅威として認識ぜす、高いリスクをもたらしてしまう。こうして、コンピュータの脅威がコントロール下にあるとはいえない状態にある。ほかの脅威としてはポリシーと操作手順に不備があることである。本来は、高機能を有したシステムへのアクセスが確実に行えるようなポリシーと操作手順とすべきである。そして、機能は、許可すべき外部の人をサポートするため、サードパーティの人間が直接アクセスできるようにする。

■ 例えば、運転技術の領域においてセキュリティ対策が不十分なままのワークステーションやインターネットからセキュリティを継ぎ当て修復することである。ユッテ氏は、「人々はサイバーセキュリティについて安全性と同じように重視すべきである」と付け加えている。

< 運転技術のサイバーセキュリティの改善 >
■ 使う人の行動とセキュリティ対策の基本認識がサイバーセキュリティのポリシーとなる。このため、セキュリティの操作手順は、使う人が早く且つ正しく対応し、セキュリティの過程段階をスキップしないようにしている。これらのポリシーと操作手順で強調すべきことは、運転技術の領域とその組織において指定するニーズである。

■  「使う人のサイバーセキュリティ意識を高め、人為的ミスによるサイバーセキュリティ事件を起こさないようにすることがサイバーセキュリティのトレーニング計画の目的のひとつである。サイバーセキュリティの脅威は絶えず進化しており、従って、このようなトレーニングは既存のトレーニング計画と一体化したものとすべきである」とユッタ氏は語っている。

■ 運転技術の領域の性質上、情報通信技術の領域のために開発されたISO 27001(情報セキュリティマネジメントシステム)やISO 27002(情報セキュリティマネジメントの実践のための規範)のようなセキュリティの規格は、直接、運転技術の領域に適用することができない。産業用制御システムの分野では、特別にIEC 62443(制御システムのセキュリティ)という国際規格が開発された。この規格は、運転技術の領域における特性をすべて考慮している。

 < サイバーセキュリティの定期的な見直し >
■ どの対策が実際に役立つか企業が把握していれば、正しいセキュリティ対策をとることができる。そして、現在のタンク・ターミナルのサイバーセキュリティのレベルを把握していれば、おのずと導入の要否は決まってくる。

■ 運転技術の領域に関してIEC 62443規格(制御システムのセキュリティ)によって個々に審査を行えば、タンク・ターミナルの運転技術の領域におけるサイバーセキュリティの状態を知ることができる。

■ これによって、運転技術に関する組織内で、サイバーセキュリティの開発や強化に用いることができ、リスクを識別したり、リスクを軽減できる。ユッテ氏は、「経験からいえることは、あなたが現在の状態を知っていれば、サイバーセキュリティの事件が生じた場合にも適切な措置を講じることができる」と説明している。

■ 運転技術の領域におけるサイバーセキュリティは一度導入しておけば良いというものでなく、脅威が進化するため、サイバーセキュリティも常に進化させておかなければならない。運転技術の領域についてIEC 62443規格(制御システムのセキュリティ)と定期的なチェックや監査を行うことは、タンク・ターミナルの常用運転が、現在、安全な状態にあるのかを把握できるようになる。

■ 「タンク・ターミナルでは、安全に管理するのと同様、運転技術に関するサイバーセキュリティを管理する必要がある。遅くならない前に、いますぐスタートさせるべきある」とユッタ氏は付け加えた。

■ ユッテ氏は、2018年3月20日~22日にStocExpo Europa Conferenceの2日目にタンク・ターミナルにおけるサイバーセキュリティとサイバー攻撃の防止方法について講演する。

所 感
■ タンク・ターミナルを念頭にしたサイバー・セキュリティを論じており、興味深い話である。
化学プラントやタンク施設に関連するサイバー攻撃の疑いのある話題としては、つぎのような事例がある。
 これらの事故では、当時、「サイバー攻撃は、石油化学会社の工場の制御システムに侵入したものではなく、攻撃を受けたのは事務管理システムではないだろうか。これが両国のサイバー攻撃に関するハッキング技術のレベルなのか、もっと重大な被害を与えるまでの前哨戦(偵察活動)なのか分からない。しかし、目で見えないサイバー空間で戦いが行われていることを認識しておかなければならないだろう」と所感で述べたが、サイバーセキュリティの専門家の話だけに、サイバー攻撃の進化は早いということがわかる。

■ サイバーセキュリティに関して「運転技術のサイバーセキュリティの改善」、「サイバーセキュリティの定期的な見直し」が提言されており、特に「運転技術の領域に関してIEC 62443規格(制御システムのセキュリティ)によって個々に審査を行えば、タンク・ターミナルの運転技術の領域についてサイバーセキュリティの状態を知ることができる」という具体的な話は参考になるとのではないか。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Linkedin.com, Tank Terminal Cyber Security Risks, February  20, 2018
 このほかに参考にしたのはつぎのとおりである。
  ・Arcweb.com. IT とOT の融合が必要となる場とその理由について,  January  26,  2018
      ・Nisc.go.jp,  サイバーセキュリティ戦略本部,   April  04,  2018
      ・Kantei.go.jp,  サイバーセキュリティ対策の強化に向けた対応について,   November 09,  2016
      ・Ipa.go.jp ,  制御システムにおける セキュリティマネジメントシステムの 構築に向けて ~ IEC62443-2-1 の活用のアプローチ ~,  2013 


後 記: 今回の情報は、タンク・ターミナルに関するサイバーセキュリティに関する話なので、できるだけ分かりやすくなるように努めました。例えば、「Operating Technology Domain」、「IT-Domain」を「OT-ドメイン」、「IT-ドメイン」と書けば、なじみのない人からすれば、拒絶反応があるでしょう。そこで、「運転技術の領域」、「情報通信技術の領域」としました。「IT」は、通常、「情報技術」でしょうが、あえて狭義の「情報通信技術」としました。また、「OT」は「運用技術」で通っていますが、ここでは「運転技術」としました。タンク・ターミナルを前提にすると、その方がよいと考えたからです。今や、サイバーセキュリティは、タンク・ターミナル施設の安全性と同等に扱う必要性があると言われる時代にあって、IT用語を理解しておかなければならないという考えもあるでしょう。しかし、意味をよく理解できない言葉の続く、分かりづらい文章では、まずいように感じます。

                       

2018年4月27日金曜日

インドネシアのボルネオ島で海底パイプラインから油流出、死者5名

 今回は、2018年3月31日(土)、インドネシアのボルネオ島においてプルタミナ社のバリクパパン湾に敷設している海底パイプラインから原油が流出した事故を紹介します。
(写真はTheguardian.com から引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、インドネシア(Indonesia)のボルネオ島(Borneo)の東カリマンタン州(East Kalimantan)バリクパパン(Balikpapan)にある国有石油会社プルタミナ社(Pertamina)の石油パイプライン施設である。

■ 発災があったのは、バリクパパン湾に敷設されている原油用の海底パイプラインである。海底パイプラインは、東カリマンタン州ラウエ・ラウエのタンク・ターミナルからバリクパパンにある製油所へ移送するため、バリクパパン湾を横断するためのもので、呼び径20インチ、炭素鋼製API 5L Grade X42、厚さ12.7mmで、深さ22mの海底に敷設されている。 パイプラインは1998年に設置されたもので、水圧や腐食に耐えられるようコンクリート被覆されている。
インドネシアのボルネオ島(カリマンタン島)周辺
(写真はGoogleMapから引用)
 < 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2018年3月31日(土)、プルタミナ社がバリクパパン湾に敷設している海底パイプラインから油流出事故が発生した。

■ 油流出は、3月31日(土)の午前3時頃、地元の漁師が製油所の近くの海で変な臭いに気がついて連絡したことから分かった。

■ 油流出の発見後、3月31日(土)午前10時30分頃に火災が発生した。火災による黒煙が空高く立ち昇り、煙はバリクパパンの市街地から見ることができ、周辺に臭いが漂った。近くにいた釣り船と貨物船(石炭運搬船)が火災に巻き込まれた。この災害に伴い、釣り船に乗っていた5名の漁師が死亡した。停泊していた貨物船エバー・ジャジャー号(EverJudger)の乗組員は救助されたが、1名が火傷を負った。このほかに20隻ほどの船が湾周辺にいたが、安全に避難した。火災は、クリーンアップのため海面の浮遊油を燃焼させるために点火して生じたものだったとみられる。

■ 火災は、パリクパパン消防署、シェブロン社の消防隊、プルタミナ社の消防隊の共同作業によって消された。消火時間は3月31日(土)の正午頃までに消されたという。
(写真はThejakartapost.comから引用)
■ 当初、死亡事故は、クリーンアップの作業に当たっていた漁師が、海面の浮遊油を燃やして浄化させようとした際に制御不能な火災になってしまったことから発生したという情報が流れたが、後に否定された。漁師たちは一緒に休暇をとって、釣りに出かけた男性グループだったという。

■ 油流出事故の影響は、多くの住民に呼吸困難や吐き気などの健康被害を引き起こし、マングローブの林を汚染した。4月1日(日)には、油流出のあった海岸で、絶滅の危機にあるイルカ1頭が死んでいるのが発見された。死亡の原因は有害な油膜によるものとみられる。

■ 4月3日(火)、当局は緊急事態を宣言し、住民に油流出地域でタバコを吸わないように警告した。また、当局は、刺激の強いヒュームや煙に対して防護するマスクを配布した。

■ 当初、パイプラインからの漏れはないと否定し続けていたプルタミナ社は、海上流出油がパイプラインの破損から出た原油であることを認めた。プルタミナ社によると、予備調査では、油は船舶の燃料だという判断だったが、4月3日(火)の夕方、プルタミナ社のパイプラインの破損部から出たものだったことを確認したという。事故が発見されて以降、予防的措置としてパイプラインの移送は停止しているという。

■ 環境省によると、3月31日(土)にバリクパパン湾で始まった流出は広がっていき、4月4日(水)には、湾外のマカッサル海峡側へ出て、面積はおよそ12,000ヘクタールに及んでいるという。影響を受けた海岸線はおよそ20km以上といわれ、多くのマングローブの林が油で覆われているという。

■ プルタミナ社のダイバーの調査によって、海底パイプラインがオリジナルの敷設位置から約120m移動していることが分かった。東カリマンタン州警察とプルタミナ社は漏洩の原因の調査を始めた。プルタミナ社は、20年間使用されたパイプに外部から大きな力がかかっていた可能性があるとみている。バリクパパン湾は船の通行量が多く、特にボルネオ島で産出される石炭を積出す桟橋への船舶が多いという。

被 害
■ 呼び径20インチの海底パイプラインが破損した。
■ パイプライン内部の原油が流出した。流出した油量は分かっていない。

■ 流出した油を燃焼させる作業中、火災に巻き込まれて5名が死亡した。このほかに1名の負傷者が出た。また、近隣の多くの住民が呼吸困難や吐き気などの健康被害を引き起こした。

■ 流出油が海岸に漂着し、マングローブの林が汚染されるなど自然環境が汚染された。また、この海域に住む絶滅の危機にあるイルカが1頭死んだほか、魚類や動物への影響が出た。
(写真は、左:Liputan6.com、右:Sarahbeekmans.co.idから引用)
(写真はMedia.greenpeace.orgから引用)
(写真はMedia.greenpeace.orgから引用)
(写真はMedia.greenpeace.orgから引用)
< 事故の原因 >
■ 事故原因は警察によって調査中である。海底パイプラインの破損部は切断して回収され、調査中である。
 一方、インドネシア政府(エネルギー省)およびプルタミナ社は、海底パイプラインが敷設されて投錨してはならない海域において貨物船がアンカーを下ろしたため、パイプラインが損傷して、内部の原油が流出したとみている。

■ プルタミナ社が4月15日(日)に公表したところによると、パイプラインはつぎのように良好な状態だったという。
 ● パイプラインは定期的に検査していた。
 ● 最近の検査は、2017年12月10日にダイバーによる外観検査、電気防食の検査、肉厚の抜取り測定を行った。
 ● 2016年10月25日には健全性検査が行われ、石油・天然ガス協会の使用許可証(有効期限:2019年10月26日)が発行された。使用許可証は3年毎に更新する必要がある。

< 対 応 >
■ 4月2日(月)、インドネシア政府は緊急事態を宣言した。この決定は、財源が確保され、より一貫性のある迅速な対応が可能となる。対応チームは環境省が主導し、警察、海軍、捜索救助隊、地方自治体が活動することになる。
 
■ プルタミナ社は、他の石油会社の支援を受けるとともに汚染対応に着手した。汚染区域を4つに分け、4つのチームで対応をすることとした。4つの区域に対して15隻の船を配備した。 

■ 4月3日(火)、環境省は、夕方までに約70,000リットルの油を回収したと発表した。さらに、流出油の囲い込みを行うために複数のオイルフェンスの展張を実施しているという。
 環境相は、流出油の刺激臭や潜在的な危険性を考慮して、集落付近の流出油のクリーンアップを優先するよう環境省の対応チームへ指示したほか、プルタミナ社にも伝えた。

■ 海岸のクリーンアップのため、約500名のボランティアが募集され、67の地区から軍人、大学生、教職員、ビジネスマンなどが支援に駆けつけた。

■ 環境省は、流出の広がりを確認するため、ドローンを飛行させた。さらに、影響を受けたエリアの衛星写真を提供するようラパンにある国立航空宇宙研究所に要請した。また、バカムラにある海上保安庁には、湾内での船舶の航跡に関するデータを収集するよう要請した。

■ バリクパパンの漁業者は、4月4日(水)、インドネシア政府とプルタミナ社に流出事故を説明するよう抗議活動を行った。

■ 4月4日(水)、プルタミナ社は、約1,000人の従業員を動員してバリクパパン湾のクリーンアップ作業をおこなっていると発表した。作業にはオイルフェンス、油吸収剤、油回収船などを使用している。

■ 4月4日(水)、米国の環境保護団体であるスカイ・トゥルース(SkyTruth)は、バリクパパン湾で起こった油流出事故の衛星写真を公表した。4月2日(月)に撮影された衛星写真では、油流出がバリクパパン湾から出てしまったことが分かる。
 また、スカイ・トゥルースは、当初、油流出源とみられた貨物船エバー・ジャジャー号が流出した油膜エリアのひとつの先端でじっと停止していることについて、船がアンカーを下ろして動かないためだろうと述べている。
           油流出状況の衛星写真   (写真はSkytruth.orgから引用)
           油流出と貨物船の衛星写真   (写真はSkytruth.orgから引用)
■ 4月6日(金)、エネルギー省は、パナマの国旗をあげた貨物船がアンカーを下ろしてパイプラインを損傷させた可能性が高いと語った。当時、天候が悪かったため、アンカーを下ろしたものとみられるが、この海域は船が投錨してよい場所ではなかった。

■ 4月9日(月)、プルタミナ社は、流出油のクリーンアップ作業の状況について公表した。クリーンアップは、「桟橋エリア」、「セマヤン〜バリクパパン・プラザ区域」、「カンポン・アラス・エアー〜カンポン・バル・ウル区域」、「ペンジャン区域」、「バリクパパン湾区域」、「カリアンガウ区域」の6つに分けて行われている。
 ● 「桟橋エリア」は、4月8日(日)時点で油回収が概ね完了しているが、軽質の油膜が残っており、クリーンアップ作業は継続中である。
 ● 「セマヤン〜バリクパパン・プラザ区域」は、海岸と海域周辺の油回収が行われ、外観上はきれいになっている。今後は、流出油にさらされた岩石エリアや防潮堤などのクリーンアップ作業になる。
 ● 「カンポン・アラス・エアー〜カンポン・バル・ウル区域」は、家庭用廃水が出ているところであるが、まだ油膜が残っている状況である。
 ● 「ペンジャン区域」と 「バリクパパン湾区域」は、4月6日(金)に油回収を終えてきれいになり、パトロールによる監視を行っている。
 ● 「カリアンガウ区域」 は、海岸部の油回収作業を船によって実施中である。

■ 4月11日(水)、プルタミナ社は、流出油のクリーンアップ作業を継続中ということのほか、住居環境に影響が出ている地区の調査や食料支援を行っている状況を発表した。

■ バリクパパンにある製油所は、被災を免れたサイズの小さい呼び径16インチのパイプラインからの原油供給とオイルタンカーからの荷揚げによって操業を継続している。

■ 環境保護団体によると、今回の油流出事故は、1989年のアラスカにおけるオイルタンカー「エクソン・バルディーズ号」による油流出事故や2010年のメキシコ湾におけるBPオイルの油井事故に比べると広範囲ではないが、環境回復には数年あるいは十年以上かかる可能性があると指摘した。

■ 4月18日(水)、インドネシア政府は油流出の原因はパナマの国旗をあげた貨物船によるものだとした。全長約230mのエバー・ジャジャー号が12トンのアンカー(高さ3m×幅2m)を下ろしたことによって海底のパイプラインを損傷させたとしている。当時、事故の海域にいた船はエバー・ジャジャー号のみだった。調査したダイバーによると、海底にアンカーによると思われる溝が約500mの長さにわたって残っていたという。溝は幅1.6~2.5m、深さ40~70cm、長さは498mだった。
 貨物船は中国の船長によって運行されていたが、船長や乗組員22名が起訴されるか未定である。なお、エバー・ジャジャー号は、インドネシアの石炭をマレーシアに運ぶ予定だった。

■ 4月15日(日)、プルタミナ社は、油流出のあった海底パイプラインの損傷部を切断して引き上げる計画であることを発表した。パイプラインの回収は、損傷の責任の所在を明らかにするためで、警察の立会いのもとに行われる。なお、切断部の復旧のため、1本12m長のパイプを22本準備しているという。

■ 4月19日(木)、プルタミナ社は、クレーン船を使って海底パイプラインの損傷部を切断して回収する作業を開始したと発表した。切断して回収するパイプラインは3分割し、1本目を4月19日(木)に行った後、4月21日(土)までに3本を陸上へ揚げる予定である。なお、切断部の復旧は、原因調査が完全に終わってから実施する予定だという。

■ 破損した海底パイプラインの切断・回収は、悪天候のため1日遅れの4月22日(日)午後に終えた。3つに分割されたパイプは、それぞれ7m×3.5トン、12m×9トン、24m×12トンだった。
(写真は、左: Tanyakan.news、右:Twwiter.comから引用)
(写真はMedia.greenpeace.orgから引用)
補 足
■ 「インドネシア」(Indonesia)は、正式にはインドネシア共和国で、東南アジア南部に位置する共和制国家で、人口約2億4,700万人の国である。首都はジャワ島にあるジャカルタである。
 「ボルネオ島」(Borneo)は、東南アジアの島で、インドネシア・マレーシア・ブルネイの3か国の領土で、インドネシアではカリマンタン島(Kalimantan)といい、南部がインドネシアの領土である。
 「バリクパパン」(Balikpapan)は、ボルネオ島南部の東カリマンタン州(East Kalimantan)にあり、人口約70万人の港湾都市である。この地方は資源が豊富なことで知られ、石油製品、鉱物資源を輸出し、スマヤン港(Semayang)やカリアンガウ港(Kariangau)がある。

■ 「プルタミナ社」(PT Pertamina)は、1957年に設立され、インドネシア政府が株式を所有する国有の石油・天然ガス会社である。国内に6箇所の製油所を持ち、5,000箇所以上のガソリンスタンドを有している。バリクパパンには、ボルネオ島で唯一の精製能力26万バレル/日のバリクパパン製油所を保有する。
 プルタミナ社の事故としてはつぎの事例がある。

■ 発災のあった「海底パイプライン」は、東カリマンタン州ラウエ・ラウエのタンク・ターミナルからバリクパパンにある製油所へ原油を移送するため、バリクパパン湾を横断するためのもので、呼び径20インチ、炭素鋼製API 5L Grade X42、厚さ12.7mmで、深さ22mの海底に敷設されている。
 米国の環境保護団体であるスカイ・トゥルースは、インドネシアのバリクパパン湾で起こった油流出事故の衛星写真を分析して推測した海底パイプラインの敷設ルートを発表している。
       海底パイプラインの敷設ルートの推測    (写真はSkytruth.orgから引用)
 呼び径20インチの海底パイプラインから流出した油量ははっきりしていない。仮に海底パイプライの全長を20kmとすれば、パイプ内の容量は約3,600KLである。4月20日(金)の報道の中に40,000バレル(6,400KL)という記事があるが、根拠ははっきりしない。しかし、1,000KLオーダーの油流出があったとみるべきだろう。

所 感
■ この事例は、貨物船の投錨によって海底パイプラインが破損したとみられ、かなり大きな油流出事故である。日本でも、海底パイプラインを保有している会社は少なくなく、他山の石とすべき事例であろう。

■ 一方、この事故にはいろいろな疑問がある。
 ● プルタミナ社は当初なぜ海底パイプラインからの流出を否定したのか。
  そして、パイプラインからの流出だと確認するまでになぜ4日間もかかったのか。
 ● 貨物船のアンカーの引きずった跡と海底パイプライン破損部の位置に相関はあるのか。
 ● 貨物船船長の証言に関する話がなぜ報道されないのか。
 ● 海面の流出油を燃焼させる処置は誰が考え、誰が承認し、誰が実行したのか。

■ 海上流出油事故の緊急事態対応は不適切で、後手後手の対応になってしまった。プルタミナ社は自社の油ではないと言い続け、初動対応が極めて遅れている。インドネシア政府が緊急事態を宣言し、環境省が主導する対応チームを立ち上げたのは、事故発生から3日目で、初動対応がとれていない。この間、対応としてとられたとみられる浮遊油の燃焼によって最悪の死者を出している。
 それ以降のクリーンアップ活動も場当たり的で、戦略的な対応をとられた様子がうかがえない。「敵である流出油」の推測量と挙動(拡散状況)にもとづき、クリーンアップ戦略(体制・組織、人員投入、回収資機材の配備)を立て、実際の対応(戦術)をとっていく必要があった。途中で70KLの油を回収したという発表はあったが、クリーンアップ作業によって油回収量がどの程度になっているか分からない。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Thejakartapost.com , Pertamina, BPBD Deny Fire Caused by Oil Spill Clean-up,  April 01  2018
    ・Marinelink.com, Oil Spill Blaze Kills Two off Borneo Island,  April 01  2018
    ・News.mongabay.com,  Indonesia investigates deadly oil spill in eastern Borneo,  April 03,  2018
    ・Bbc.com , 6 Indonesia Declares State of Emergency as Oil Spill Spreads,  April 03,  2018
    ・Radioaustralia.net.au,  Borneo Oil Spill: Police Question Bulk Coal Carrier Crew after Four People Killed, Water Polluted
,  April 03  2018
    ・Pertamina.com, Synergy to Cleanup Oil Spill,  April 04,  2018
    ・Time.com, Indonesia Has Declared a State of Emergency as Borneo Oil Spill Spreads,  April 04,  2018
    ・News.mongabay.com, Deadly Oil Spill in Eastern Borneo Spreads to the pen Sea,  April 05,  2018
    ・Offshore-technology.com, Indonesia Blames Bulk Coal Carrier for Oil SpillApril  06, 2018
    ・Pertamina.com,  Oil Spill at Balikpapan Bay: Pertamina to Perform Sweeping and Countermeasures,  April 09,  2018
    ・Liputan6.com , Pertamina Pastikan Pipa yang Putus di Teluk Balikpapan Sesuai Standar,  April 17,  2018
    ・Hazardlab.jp ,  ボルネオ島沖合 原油が大量流出 海洋生物が大量死! ,  April 05,  2018
    ・Dw.com,  120-square-kilometer Oil Spill off Indonesia Caused by Broken Pipeline, Official Says,   April 06  2018
    ・Skytruth.org,  Pipeline Falure Cause of Fatal Oil Spill in Indonesia,  April 05  2018
    ・Phys.org , Deadly Indonesia Oil Spill Caused by Burst Pipe: CompanyApril  04, 2018
    ・En.tempo.co , Alert on Pertamina Invisible Oil Spill ,  April 09  2018
    ・Lifegate.com,  Indonesia, What the Balikpapan Oil Spill Has Cost Communities and EcosystemsApril  12, 2018
    ・Thejakartapost.com , Balikpapan Oil Spill: What We Know and Don’t KnowApril  11, 2018
    ・Pertamina.com, Oil Spill Restoration Continues, Pertamina Provide Food Aid For Marho Mulyo and Kariangau Resident,  April 11,  2018
    ・Pertamina.com, Balikpapan Oil Spill’s Broken Pipe Will be Removed,  April 15,  2018
    ・Borneobulletin.com.bn, Indonesia Says Panama-flagged Ship Caused Major Oil Spill,  April 19, 2018
    ・Reuters.com,  Indonesia Removes Pertamina Chief after Oil Spill, other issues,  April 19,  2018  
    ・Pertamina.com, Pertamina Hopes to Reveal External Factors of Balikpapan Oil Spill after Lifting the Broken Pipeline,  April 19,  2018
    ・Thejakartapost.com , Pertamina Completes Removal of Broken Oil Pipes in Balikpapan,  April 23,  2018


後 記: この事故の情報を調べていくと、消化不良というかフラストレーションが溜まっていく事例でした。事故直後の情報から見ていくのですが、あとから見ると大きな誤報が続きます。まず、油は船から出たものだという情報、火災で亡くなった漁師は火をつけた本人だったという情報などです。続いて、油汚染の範囲に関するデータが情報源で違っており、どれを信頼していいのか分かりません。よく言えば、いろいろな人がオープンに話していますが、悪くいえば、いい加減な情報をもとにしているようです。通常、日にちが経つと報道される情報がなくなりますが、今回は事故に関する続報が割に出されているので、ある程度まとめることができました。パイプライン破損部の検査結果が待たれるところですが、いつのことになるのか、また公表されるのかわからないので、待たずに投稿することにしました。