2012年7月26日木曜日

米国テキサス州の油井用タンクに落雷で火災

  今回は、2012年7月12日、米国テキサス州ウッド郡の森林の中にある油井用タンクに落雷があり、火災となった事故について紹介します。
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・KLTV.com, Oil Tank Fire  in Wood Co. Possibly Linked to Lightning, July 13, 2012
  ・CBS19.TV, Oil Tank Fire Burning  in Wood County  under Control,  July 13, 2012
  ・News-Journal.com, Lightning Suspected Cause of Tank Fire in East Wood County,  July 13, 2012 

<事故の状況> 
■  2012年7月12日(木)午後5時半頃、米国テキサス州ウッド郡にある油井用のタンクに落雷があり、火災となる事故があった。事故のあった油タンク施設はウッド郡3824番地で、農道FM14号線から少し入った所で、農道FM2869号線とFM49号線の間である。この地区はウィルフル・クロッシングと呼ばれている所である。
農道FM14号線沿いの風景  (写真はグーグルマップのストリートビューから引用)

■ ホーキンス消防署のジョン・ジョーンズ署長によると、最初に通報を受けたのは7月12日木曜の午後5時30分で、AKPオイル社の3基のタンクが火災になっているといい、つぎのように語った。
 「雷雲を伴った嵐が通過中であり、タンク施設に落雷があったことは明らかです。タンクが火災になり、我々が出動することになりました。別な隊を含めて3つの消防隊、45名の消防士が出動して、消火活動に当たりました。少なくとも2回は炎上しています」
 消火活動についてジョーンズ署長はつぎのように話している。
 「我々は、できる限り早く、水を確保しようと努めました。そして、水を使い切ると、別の水の供給を待たなければならず、その間に火が再燃しました。こんなことが2回ほどありました」
■ 消防士によると、彼らが現場に到着したときには、現場は火に包まれ、火炎は40フィート(12m)の高さにまで上がっていたという。 怪我人が出ず、近くに民家もなかったことは幸いだったと語った。
3つのボランティア型の消防隊が、深い森の中の道を先導して走る消防車のわだちに沿ってタンク
火災現場へ走っていく。木々の上方に立ち上る黒煙と炎の様子から別なタンクが炎上したことが
消防士にはわかった。                   (写真と解説はNews-Jarnal.comから引用)

■ ジョーンズ署長は、火災現場は消火用水の乏しい地区で、給水が困難だったといい、つぎのように語った。
 「現場は森林地区の真っ只中でした。ここに通じる道は一本だけで、行くにしても出るにしても同じ道を通るしかない状況でした。 火災を制圧下に入れた後、我々は現場に留まり、安全に燃え尽きさせる戦術をとることを決めました」 
■ 事故現場を目撃した人によると、大きな火柱が上がったという。 3つの消防隊が火災への対応を行ったが、報告によると、森林地区へのフェンスを壊さなければ火災現場に行けないと思ったという。この時点では、心配するような構築物はなかった。
 ウッド郡の消防署長によると、消防隊は消火せずに燃え尽きさせる戦術をとったという。というのは、貯蔵されている油が流出すれば、近くのクリークが汚染される可能性があり、そうなることを避けたからである。
■ 火災によって燃えた油の量は80バレル(12KL)だった。

(写真はCBS19.TVから引用)


補 足                                                         
■  「テキサス州」は米国南部に位置し、人口約2,500万人で、州都はオースティンである。 テキサス州は、フロリダ、アラバマ、ミシシッピー、ルイジアナなどメキシコ湾岸沿いの落雷の多い州の一つである。 
 「ウッド郡」はテキサス州の東部に位置し、人口約36,000人の郡である。
 「ホーキンス」はテキサス州ウッド郡にある町で、人口約1,300人の町である。 


■ 「AKPオイル社」はテキサス州にある原油生産の石油会社であるが、詳細は不詳である。おそらく、地方で小規模の原油掘削・生産を行っている会社と思われる。

■ 「ホーキンス消防署」は、ウッド郡のホーキンスにあるボランティア型の消防署である。今回の火災現場に出動した3つの消防隊はウッド郡にあるボランティア型の消防署と思われる。
                 ホーキンス消防署  (写真はFireDEpartment.orgから引用)

      今回の火災現場に出動した消防車    (写真はNews-Jarnal.comから引用)

所 感
■ 落雷によるタンク火災事故の紹介は今年3件目で、今回は米国の中でも落雷の多いテキサス州で、且つ油井用タンクで起こった典型的な落雷によるタンク火災の事例である。
■ 火災のあった場所から最も近い町のホーキンスは人口約1,300人で、ウッド郡全体でも人口約36,000人である。このような地方で起こったタンク火災の事故報道では、主に地元の消防隊による消火活動が記事になっている。
 地方のボランティア型の消防署が複数出動して対応するという米国らしい消火活動の事例である。大規模な火災ではないが、森林の中にあるタンクで道が1本という消防隊のアクセスが容易でなく、消火用水の確保に難儀するという条件下での消火活動であった。おそらく、最初は森林への延焼を憂慮したはずである。今回の事例では、状況を伝える写真が公開されており、記事と読み合わせるとよく理解できる。
 日本では、今回のような消火活動を行う機会はないと思うが、アクセスが容易でなく、消火用水の確保に苦労する条件はありうるし、最終的に燃え尽きさせる戦術をとるなど、状況に応じた判断(力)について考えるよい事例である。

後記; 最近、右ふくらはぎの上部が凝ったような痛みを感じ、スポーツトレーナーに相談してみました。痛みの要因は、ふくらはぎではなく、太腿の裏側(ハムストリング)が固くなっているためで、ハムストリングをストレッチするのがよいというアドバイスで、伸ばす方法を教えてもらいました。
 これが正解でした。ストレッチングをしたあと、これまで長い距離を歩くと痛くなっていた右ヒザが軽く感じるのです。ただし、効果は長い時間続きません。毎日、少しづつ続けてやる必要があるということでしょう。しかし、改善できるという確信が持てました。
 人間の体って不思議なものです。バランスが悪くなると、思わぬところにひずみが出てきます。今は、ハムストリングについてストレッチングとともに、刺激を与えるために軽い負荷の筋トレをやり始めました。











2012年7月22日日曜日

ウェールズの貯蔵タンク施設で油流出

  今回は、2012年6月28日、ウェールズのペンブルックシャー郡ミルフォードヘブンにあるセム・ロジスティクス社の石油貯蔵施設で油漏洩事故について紹介します。油漏洩は構内に留まり、構外へ流出する環境汚染事故にはなりませんでしたが、ウェールズ環境庁など関係行政機関が事故対応にあたりました。
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・BBC.co.uk, Oil Leak at SemLogistics Tank Storage Site in Milford Haven, June 28, 2012
  ・WalesOnline.co.uk, Milford Haven Oil Leak Investigated by Environment Officials,  June 28, 2012 
  ・WesternTelegraph.co.uk, Investigation into Semlogistics Oil Spill,  June 28, 2012
  ・WesternTelegraph.co.uk, Semlogistics Leak Still Contained,  June 29, 2012 

<事故の状況> 
■  2012年6月28日(木)、ウェールズのペンブルックシャー郡にあるタンク貯蔵施設から油の漏洩事故があった。事故のあったのは、ペンブルックシャー郡ミルフォードヘブンのセム・ロジスティクス社のタンクで、漏れ量は多くないとみられる。
■ ウェールズ環境庁(EAW)はこの事故に関して調査を始め、EAWの担当者が現地で漏れの影響について評価し始めた。環境庁の広報担当によると、最初の観測状況では、漏洩油が封じ込まれた様子であることを示しており、流出による影響は大きくなく、水路系へ入る可能性はないと言い、つぎのように語った。
 「セム・ロジスティクス社とは完全に協力して作業を進めており、タンクおよび周辺施設のモニタリングを行い、必要な措置を講じ、現在は漏れ原因の調査を始めました」
■ ウェールズ公衆衛生局は、健康被害が出る可能性はほとんどないと発表したが、空気と水について現地で採取し、モニタリングを行うと述べた。セム・ロジスティクス社のタンク貯蔵施設は、EAWと健康・安全行政部(HSE)の双方から規制を受けて調査されることになる。
■ EAWの広報担当が付け加えたところによると、今回の事態対応については環境庁のほか、ウェールズ公衆衛生局、ペンブルックシャー郡議会およびセミ・ロジスティクス社の責任者で行うことが確立しており、流出の影響のモニタリングと評価を行い、地域社会と環境が守られることを確認していくという。 事故対応の監視団は、他の関係組織と協議会を開くことを申し合わせている。

■ ウェールズ環境庁が6月29日(金)に語ったところによると、タンク施設からの漏洩状況について徹夜での監視を行った結果、油漏れは構内だけに限られていることが確認できたという。状況は、漏洩事故の対応を行うとして結成された監視団によって行われ、油が構外に流出している兆候はないことがわかった。
 ウェールズ公衆衛生局は、最新の状況に基づいて今回の事故に伴う健康へのリスクはほとんどないことを改めて発表した。 ウェールズ環境庁も、漏洩した油は引き続き封じ込まれた状況にあり、環境汚染の恐れはないと語った。
 予防的措置としてとられている空気と水のモニタリングは、継続して週末(6月30日、7月1日)も実施し、地域社会と環境が守られていることを確認する予定だという。

補 足                                                          
■ 「ウェールズ」はグレートブリテン島の南西に位置する国で、首都はカーディフにあり、人口は約292万人である。ウェールズは、イングランド、スコットランド、北アイルランドとともに「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)を構成する国の一つである。
 「ペンブルックシャー郡」はウェールズの南西部に位置し、人口約12万人の郡である。 ペンブルックシャー郡には、現在、製油所が2箇所あり、ペンブロックにあるシェブロン社の製油所(精製能力22万バレル/日)では、2011年6月2日、容量730KLのタンクが爆発して4人の死者の出る事故が起こっている。当時、製油所はシェブロン社からヴァレロ社への売却が決まっていた。
 「ミルフォードヘブン」はペンブルックシャー郡の南方に位置し、天然の良港を有する人口約13,000人の町である。

座礁したシー・エンプレス号 (写真はKarapaiaから引用
 ミルフォードヘブンといえば、1996年の大型タンカーの座礁事故が有名である。1996年2月15日、13万トンの北海原油を積載したリベリア船籍大型タンカーのシー・エンプレス号(147千DWT)が港外で座礁した。直ちに救助作業が開始されたが、荒天に災いされ、漂流と座礁を繰り返した後、2月21日にようやくタンカーを港内の桟橋に着桟させ、船内に残った原油を陸揚げすることができた。 最初の座礁で約2,500トンの原油が流出し、更にその後の救助作業の間に69,300トンの原油が流出し、約200kmの海岸線が環境汚染された。

■ 「セム・ロジスティクス社」(SemLogistics)は、1998年に設立された石油の貯蔵・輸送を主とする石油会社である。ミルフォードヘブンの施設は、1968~1997年までガルフ社が操業していた製油所のタンク施設を受け継いだものである。タンク80基(最大タンク102,000KL、最小タンク800KL)、貯蔵能力147万KL、貯蔵油種はガソリン、ナフサ、ジェット燃料、軽油、超低硫黄ディーゼル油、原油である。最大着桟能力165千DWTの桟橋を有する。 セム・ロジスティクス社は米国オクラホマ州タルサに本拠を置く、セム・グループの傘下にある会社である。
 なお、このタンク地区には、2008年に北海油田から産出される天然ガスの貯蔵基地としてドラゴンLNGターミナルが併設されている。
WalesOnlineに掲載されていた発災事業所の写真であるが、煙突があり、旧製油所時代のものと思われる。
■ 「健康・安全行政部」(Health and Safety Executive;HSE)は1974年に設立され、イングランド、ウェールズ、スコットランドにおける国民の健康と安全を司る国の機関である。 工業界で起こった大小の事故に対してはHSEが調査を行っている。2011年6月に起きたシェブロン製油所のタンク爆発事故の原因調査を行っている。 HSEが行った事故調査で有名なものは、2005年12月に起きたイングランドのバンスフィールド石油貯蔵所における爆発火災事故(40名以上の負傷者発生)である。 

所 感
■ 今回の事故は、タンク施設でいつ(時間)、どのような状況で、どのくらいの漏洩が起こったかという基本的な情報が明らかにされていない。油漏洩が施設構内に留まり、構外への環境汚染の恐れがない場合、重大なニュースとして取り扱わないという意識があるように感じる。ひとつは、実質的に住民への健康や生活に影響がないことがあろう。ふたつめは、発災事業所が旧製油所撤退後に継続する形で石油貯蔵所として操業し、雇用などの地域貢献を果たしており、過剰に企業をたたくような報道が避けられたのではないだろうか。世界的に経済不況の時代であり、メディアの意識も変化しているように感じる。
■ 一方、行政側の動向については細かく、報じている。油漏洩という環境汚染に対して住民の健康と安全を守るのは、所管する官庁だという意識が高い。今回の事例ではウェールズ環境庁であり、さらにウェールズ公衆衛生局と健康・安全行政部(HSE) が対応している。
 奇しくも同じ6月28日に起こった日本のコスモ石油千葉でのアスファルトタンクから漏洩して海に流出した事故の対応と比較すると、差異がある。 発災事業所が危機管理能力を持つことは勿論であるが、 「地域社会と環境を守る」という基本的な姿勢に立って行政側の危機管理に関する体制(組織)と対応実務能力について改善されることを期待する。

後記;  本州の西端、地元山口県では、7月末に知事選挙があります。明治維新の長州藩ですが、前知事が引退発表しても出馬する人が出るのだろうかというほど政治的に人材不足のような状況でしたが、最後になって4人が立候補し、選挙戦が始まりました。しかも、ここに来て全国的に注目される知事選になっています。それは、原発建設計画と岩国米軍基地へのオスプレイ陸揚げ問題が争点の一つになっているからです。もともと山口県上関町に中国電力の原子力発電所を建設する計画が30年前からあり、埋立てが始まりつつあったときに福島の原発事故があり、現在は埋立てが中断している状態です。岩国の米軍基地は日本との関係も良好で、基地で行われる航空ショーには多くの人が集まり、以前は基地内でトライアスロン大会が行われたりするほどでした。また、滑走路の民間共同使用されるようになり、この12月には岩国錦帯橋空港が開港することになっています。
 候補者の発言内容が永田町や霞ヶ関に伝わるようになり、メディアによると、霞ヶ関官僚出身の候補者は原発問題と岩国基地問題に関する話を避けるようになったそうです。昨年から山口県では、盛り上がりの欠けた2回り目の国体や全国植樹祭がありましたが、知事選での政治的な話題で関心を持たれることはいいことです。山口県民は、桂小五郎(木戸孝允)より本当は吉田松陰や高杉晋作のような行動的な人物が好きなんですがね。

2012年7月16日月曜日

米国ケンタッキー州で落雷によるタンク火災

  今回は、2012年7月2日、米国ケンタッキー州のウェブスター郡にある油井用の貯蔵タンク地区に落雷があり、タンクが爆発・火災を起こした事故を紹介します。噴き飛んだタンク屋根が近くを通っていたU.S.41号線バイパスの道路上に落下し、一時幹線道路が閉鎖されました。

本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・CourierPress.com, U.S.41-Alternate Reopens in Webster County after Lightning Strike Fire, July 3
  ・Wave3.com, Lightning Causes Explosion that Shuts down Portion of US41 in Webster County, July 3
  ・Kentucky.com, Lightning Strike Ignites Oil Well Tanks,  July 3, 2012
  ・WKMS. org, Oil Well Explosion in Webster County,  July 3, 2012
    ・Surfky. com, Oil Well Explosion/Fire in Webster,  July 3, 2012 

<事故の状況> 
(写真はSurfkyNewsから引用
■  2012年7月2日(月)午後10時頃、米国ケンタッキー州ウェブスター郡にある油井用のタンクが落雷によって爆発・火災する事故があった。この事故によって近くを通っているU.S.41号線バイパスが一時閉鎖された。
■ この事故に関するウェブスター郡への911番通報があったのは2日午後109分だった。ウェブスター郡緊急事態管理局長であるジェレミー・ムーア氏によれば、貯蔵タンク地区に落ちた雷はタンクを直撃し、複数のタンクが爆発を起こしたという。爆発を起こしたタンクのうち1基のタンク屋根部が道路上に落下した。消防隊が現地へ到着したときには、他のタンク2基が炎上中だった。
■  U.S.41号線バイパスを管理しているケンタッキー交通局はプロヴィデンスとディクソン間のマイル標識2.6の地点で同道路を閉鎖し、現場の交通遮断を約6時間と見込んで、迂回路を設定した。
(写真はSurfkyNewsから引用
■ 爆発の影響で現場近くの3相電力線が被害を受け、この地区が停電に見舞われた。
■ ムーア氏によれば、この油井タンクの操業を行っている会社の責任者が夜を徹して現場の監視を続けているという。タンクのうち1基のタンク燃え続けている。会社の責任者によれば、火災による災害を軽減するためタンクローリー車でタンク内の油を抜き取ったという。
 消防隊の消火活動によって7月3日(火)午前1時30分頃に火災は制圧下に入った。ムーア氏は、嵐による猛烈な雨によって火災が拡大しなかったことは幸いだったと語った。
 なお、この爆発・火災事故による負傷者もいなかった。
■ ケンタッキー交通局は、約3時間後の7月3日(火)午前1時30分頃に、閉鎖していたU.S.41号線バイパスの交通遮断を解除した。

補 足
■ 「ケンタッキー州」は米国中東部に位置し、人口約430万人で、州都はフランクフォート市である。農業を主とする州であるが、ケンタッキー・フライドチキンを世界に広めたKFC社はケンタッキー州ルイビルに本社がある。
 「ウェブスター郡」はケンタッキー州の北西部に位置し、人口約14,000人である。
 「ディクソン」はウェブスター郡の郡庁所在地で、人口約630人の町である。「プロヴィデンス」はディクソンの南方に位置し、人口約3,600人の町である。

■ 「ウェブスター郡緊急事態管理局」(Webster County Emergency Management)は、ケンタッキー州ウェブスター郡の緊急事態時の対応部署である。事務所はディクソンのU.S.41号線バイパス沿いにあり、今回の発災場所から近いところである。
 米国には、政府機関としてアメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(Federal Emergency Management Agency of the United States; FEMA)が組織されている。FEMAは、洪水、ハリケーン、地震などの天災ほか、人災にも対応し、原子力災害も対象としている。災害に際して連邦機関、州政府、その他の地元機関の業務を調整する。各州には緊急事態管理局という下部組織がある。
 発足当初は、大統領直属の独立した連邦機関として災害を中心とする緊急事態に対し、軍や州兵を含む他の連邦機関・州および地方機関に対し、予算執行を含む強力な指揮命令権を有し、世界中の緊急事態対策の手本とされてきた。
 しかし、2003年3月の米国同時テロ事件以降、国土安全保障省の一部とされ、権限・規模が縮小された。そのため、2005年に相次いだハリケーン災害への対応が後手にまわり、対テロ政策偏重が問われることとなった。
ウェブスター郡緊急事態管理局の事務所 写真はグーグルマップのストリートビューから引用

所 感
■ 落雷によるタンク火災事故の紹介は今年2件目である。米国メキシコ湾沿いのミシシッピー、ルイジアナ、テキサスおよびアラバマは落雷の多い州として知られているが、今年の2件の落雷によるタンク火災はオハイオ(落雷または静電気による)およびケンタッキーという中西部の州であることが特徴といえる。
■ 今回の事故対応では、ウェブスター郡緊急事態管理局が指揮している。事故では、爆発と火災が発生し、嵐の中で油が流出し、汚染問題になる可能性もあり、さらに幹線道路にタンク屋根が落下している状況下で多面的な対応が必要な事態だったと思われる。ウェブスター郡は人口約14,000人であるが、郡緊急事態管理局が適切に機能した事例だと思われる。
 日本の内閣安全保障室は発足当時と違い、米国の国土安全保障省と同様テロ政策に偏重してきており、福島原子力発電所の事故において住民に対する緊急事態時の適切な対応ができなかった。最近の日本では、以前と違い、猛烈で集中的な豪雨による洪水などの災害に見舞われることが多い。内閣安全保障室をみるように組織化すればよいというものではないが、最近の日本事故(例えば、福島の原発事故、千葉のアスファルト流出事故など)を見ると、緊急事態時の対応を司る部署について再考すべき時期だと感じる。

後記; 九州北部で豪雨による洪水災害がありましたが、昔は川の水位が徐々に上がってきて、堤防を越えるという洪水で、時間的な余裕があったように思いますが、最近の洪水は、時間雨量100mmを超すような集中的な豪雨によりあっという間に水位が上がって氾濫するというようになりました。 
 雨があがったら、暑い夏の日差しがやってきました。我が家は周南市野球場のスコアボード側近くにあり、一日順延した高校野球山口県予選大会が始まりました。昨年は野球場の改修工事で別なところで行なわれましたが、今年は応援の声や音楽が聞こえています。夏がやってきたという気がします。






2012年7月12日木曜日

太陽石油で工事中の球形タンクから出火、負傷者1名

今回もまた、前回に続いて日本で起こったタンク事故を紹介します。2012年6月27日、愛媛県今治市菊間町にある太陽石油四国事業所の液化石油ガス用球形タンクにおいて工事中に出火し、内部にいた作業員1名が負傷する事故がありました。

本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・ITV愛媛, 太陽石油でタンク火災、作業員が重傷, June 27, 2012
      ・毎日jp, 火災:タンク出火、1人重傷・・・今治・太陽石油四国事業所, June 28, 2012
      ・朝日新聞, タンク火災1人重傷, June 28 2012
  ・毎日jp, 今治のタンク火災:太陽石油所長が県に謝罪と説明, June 29, 2012
  ・愛媛新聞, 配管内可燃性ガス漏れ込み引火? 太陽石油タンク火災, july 04, 2012
  ・今治のタンク火災:「配管からガス流入」 太陽石油が県に原因報告,  july 04, 2012 

<事故の状況> 
■  2012年6月27日(水)、愛媛県今治市菊間町にある太陽石油四国事業所において内部検査のため開放中の液化石油ガス用球形タンクから出火し、内部で工事中の作業員1人が負傷する事故があった。
■ 火災があったのは太陽石油四国事業所にある直径20m程のブタンガスを貯蔵するLPGタンク内で、27日午前10時50分頃、「タンク内で火災が起きた」と消防へ通報があった。
 火はおよそ30分後に消し止められたが、この火災の際、タンク内のはしごの上部に取り付けられていた作業員の安全ベルトを装着する際に使われる落下防止安全装置の部品で重さ約5kgの金属物が落下し、孫請け会社の作業員(配管工)の檜垣和史さん(33歳)の頭や肩に直撃し、檜垣さんは重傷を負った。落下防止安全装置はワイヤロープを介して人の体を支持するためのもので、避難途中に頭上から落ちてきたと思われる。
 その後、檜垣さんは病院へ搬送され、頭部裂傷(10針縫合)と左鎖骨骨折の治療を受けている。


鎮火直後のLPGタンク (写真は朝日新聞から引用)
■ タンク内は当時、定期点検のため、液化石油ガスは抜かれていて、檜垣さんは午前9時頃から同僚3人とタンク内で足場組みに関わる作業をしていたと見られている。
 太陽石油は会見を開き、「火災は作業員が足場を組むのに邪魔になる常設のはしごをガスバーナーで切断中に何かに引火した」と説明を行った。 この際、作業前には、タンク内のガス濃度については、ゼロであることを確認していたという。
 また、火災の衝撃で金属物が落下した可能性もあるとした一方で、「あくまで爆発はしておらず、火災と金属物の落下との因果関係は分からない」と話している。
事故翌日、実況検分のために製油所構内に入る
今治市消防本部   (写真は愛媛新聞から引用
■ 太陽石油四国事業所では20061月、原油タンク火災で作業員5名が死亡する事故が起きており、越智洋二副所長は「前回の火災を受けての対応が十分でなかった。原因を特定して二度と起こさないようにしたい」と陳謝した。627日事故当日に就任した松木徹所長も「警察、消防の原因究明に協力し、再発防止に取り組む」と約束した。
■ 警察によると、事故後もタンク内はガスが充満しているため、27日(水)は立入りができないため、翌日28日(木)に実況検分を行い、作業手順に問題がなかったかどうか調べる方針だという。
事故翌日、球形タンク下部で実況検分を行う
関係官庁機関  (写真は愛媛新聞から引用

■ 628日(木)、太陽石油四国事業所の松木所長らが愛媛県庁を訪れ、県の県民環境部上甲俊史部長に謝罪と説明を行った。上甲部長は、詳しい原因と再発防止策の報告を求めた。同事業所は原因究明後、文書で報告するとしている。
 愛媛県は高圧ガス保安法に基づき、同事業所のタンク設備を許可している。松木所長は「多大なご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と謝罪した。鎖骨骨折などの重傷を負った作業員の容体などを説明したが、これに対して上甲部長は、2006年1月に同事業所で作業員5人が死亡するタンク火災が起きたことに触れて「同じような火災が起こるのは遺憾である。原因究明と対策を強くお願いする」と要請した。

■ 7月3日(火)、太陽石油四国事業所の森戸隆志副所長は、出火原因について「フランジ(継手)が開放された配管からタンク上部に可燃性ガスが漏れ込んだと考えられる」と県に報告した。
 森戸副所長は県庁を訪れ、県の防災局中村博之局長に調査の途中経過として、火災は作業員がいたタンクの上部で発生したこと、当時タンク外(上側)の配管で別な作業員がフランジを開く作業をしていたこと、可燃性ガスがタンク上部のマンホールから入り込み、タンク内上部に溜まったガスにガスバーナーの火が引火したとの見方を示した。ガスの種類やフランジの開放作業に問題がなかったかについては「警察が捜査中」として明言しなかった。
 再発防止策には、配管内を通るガスの種類をフランジに表示するほか、移動式ガス検知器の増設などを列挙し、県が求める事故報告書は「警察当局の原因特定ができ次第、提出したい」とした。
 なお、警察は詳しい出火原因とともに、業務上過失傷害の疑いで調べている。
■ 太陽石油四国事業所では、20061月、原油タンク内を清掃中の作業員5人が死亡、2人が負傷した火災事故があり、業務上過失致死傷容疑で書類送検された同事業所の当時の工務部長ら9人について松山地検が200911月、不起訴処分とした。検察審査会の「不起訴不当」 の議決を受けて再捜査したが、201012月に嫌疑不十分で再び不起訴処分とし、不起訴が確定している。

 <太陽石油のニュース・リリース>   (太陽石油のホームページから引用)
2012627日 第1報 (四国事業所における小火発生について)
■ 本日11時頃、発生した小火(ぼや)について現在の状況をご報告いたします。
1.事業所概要;    精製能力 120,000バレル/日
2.小火発生場所;   LPGタンク
3.発生日時、状況; 2012年6月27日(水) 11時頃、LPGタンク開放検査中に小火が発生
4.発生原因;     調査中
5.負傷者;           協力会社の作業員1名が落下物により頭部に怪我
6.物的被害;        調査中
7.現在の状況;     小火は11時18分頃、公設消防により鎮火したことを確認
2012627日 第2報 
■ 本日発生した小火について、現在の状況をご報告いたします。
1.現在の状況;  10時45分(仮)に発生した小火は、11時15分(仮)、公設消防により鎮火したことを
            確認 (発生および鎮火の時刻は、消防が検証の上、確定します)
2.発生原因;   調査中 (消防、警察合同調査中)
3.負傷者;       協力会社の作業員1名が落下物により頭部裂傷(10針縫合)および左鎖骨骨折
4.物的被害;    調査中
2012629日 第3報 
■ 6月27日に発生した小火について、現在の状況をご報告いたします。
1.現在の状況;  6月27日(水)10時45分頃に球形タンクT‐116において発生した小火は、
               同日11時15分に公設消防により鎮火したことを確認
             6月28日(木)および29日(金)に消防、警察、労働基準監督署による合同の実況
             検分を実施し、終了
             6月28日に愛媛県に中間報告を実施
2.負傷者;       協力会社の作業員1名が落下物により頭部裂傷(10針縫合)および左鎖骨骨折)
            現在、治療・入院中
3.物的被害;     調査中

補 足 
■ 太陽石油は、1941年(昭和16年)に設立し、東京に本社を持つ民族系石油元売の一つで、愛媛県を地盤として、主として西日本に展開し、従業員634名の石油会社である。北海道、東北、北陸地方の中にはガソリンスタンドがない所があり、東日本ではなじみがないが、ガソリンスタンドのブランド名は「TAIYO」から2008年に「SOLATO」(ソラト)に変更した。
 製油所は愛媛県菊間町の四国事業所のみで、精製能力は120,000バレル/日である。日本で初めてソ連やルーマニアなどの軽質原油を輸入して石油製品の白油化を進め、重油生産ゼロ製油所を目標に、約500億円をかけて残油流動接触分解設備25,000バレル/日、ガソリン脱硫装置13,000バレル/日、プロピレン精製装置5,400バレル/日、アルキレーション装置6,000バレル/日が2010年10月に完成した。
 この装置建設にあたっては、狭い敷地を有効利用するため、既設施設を移転しながら進められたが、今回の発災した球形タンクもこの新設装置建設に伴い、山の斜面を造成して建設された。
残油流動接触分解設備など新設装置の事業計画時の資料 (写真は太陽石油事業計画書から引用

■ 球形タンクは、開放検査時に内部に足場を組み立てなければならない。従来は丸太や金属パイプなどを使った足場が通常の方法で、球形のタンク内壁全面に組み立てることは難しく、日にちや費用のかかる工事であった。近年、ロータリーデッキという方法が開発されている。球形タンクの中心に柱を立て、その左右に半円形の羽根のような専用足場が架かり、それが柱を中心にして回る仕組みになっている。
 今回の事故では、作業員が足場を組むのに邪魔になる常設のはしごをガスバーナーで切断していたとあり、ロータリーデッキ型の足場方法を採用するために常設のはしごを切断する計画だったと思われる。

■ 出火原因は、タンク外(上側)の配管で別な作業員がフランジを開き、この開放された配管からタンク上部に可燃性ガスが漏れ込んだと考えられている。ガスの種類やフランジの開放作業に問題がなかったかについては、警察の捜査中であり、明言されなかった。
 なぜ、ガスの種類を明らかにすることを避けたかわからないが、タンク上部における実況検分の写真を見ると、液化石油ガスタンクの安全弁出口は大気開放型であるので、安全弁出口のフレアガス系統ではない。推測になるが、タンク開放時に使用された燃料ガスラインまたはフレアガスラインの仮設(または常設)で比較的小配管ではないかと思われる。
球形タンク上部で実況検分を行っている関係官庁機関 (写真は愛媛新聞から引用


■ 負傷した要因は、落下防止安全装置の部品で重さ約5kgの金属物が落下したためであるが、記事の内容から巻取り式墜落防止装置だと思われる。この装置は、使用中に万一墜落が 起こっても、人間を支持しているワイヤーロープが装置内のディスクブレーキによって衝撃を軽減することができる安全器具で、重量は約5kgである。
 巻取り式墜落防止装置(の上部フック)は球形タンク内のはしごの上部に取り付けられていたことになっている。装置内に巻かれたワイヤーロープの下部フックに安全ベルトを装着して作業していたものと思われるが、この状態でフックが外れることはなく、火災の衝撃で外れることも考えづらい。ただ、タンク内のはしごの上部に作業員3人分の巻取り式墜落防止装置上部フックをどのように取り付けていたかはわからない。

所 感 
■ 発災当日27日から29日にかけて3回にわたって事故のニュース・リリースをホームページに出していた太陽石油は、その後、自らは情報を発信していない。明らかに意図的な配慮を感じる。ただし、メディアが太陽石油の動きを取材して得た情報を発信している。これによって太陽石油が発信しているニュース・リリースだけではわからない事故の概要が理解できた。

■ この意図的な配慮は、日本独特の典型的な縦割り行政の事故対応のためだと感じる。負傷者が出ているため、業務上過失傷害の疑いで警察が主として事故を調査(捜査)することになる。出火に関する事項は消防本部が所管する。太陽石油のニュース・リリースの中で、出火時間や鎮火時間にこだわっているのはそのためである。 また、労働災害であり、労働基準監督署が関与する。おそらく、労災の事故報告書は請負会社から労働基準監督署へすでに提出されていると思われる。
 一方、液化石油ガスタンクは高圧ガス保安法の適用を受け、愛媛県の管轄であるが、当時、開放検査で液が抜かれた状態で高圧ガスとは関係のない軽微な事象と判断したためか、負傷者が出ている事故にも関わらず、愛媛県は実況検分に立入りしていない。メディア各社が「火災」と報じているにも関わらず、太陽石油がニュース・リリースの中で「小火(ぼや)」としたのはそのためだと思われる。しかし、その代わり、太陽石油が県庁を訪問し、事故の状況を逐次報告させられている。 この県庁訪問時に、太陽石油は取材に応じているが、発言内容は県や警察への配慮が見られる。 

■ 太陽石油としても刑事事件として業務上過失傷害の容疑者を出したくない立場であり、関係官庁機関は縦割り行政で事業者を監督・指導しなければならない立場(逆にみれば、監督不行届の責任)にある状況下で、果たして真実の原因調査結果が出るのか疑問が残る。
 事故事例は二度と起きないように、事実を明らかにし、再発防止策を出して活かすことである。そして、これは官庁の組織内や発災事業所内に死蔵することなく、公にして他社でも活用できるようにすることが重要であり、真実の原因調査結果が公表されることを期待する。

後記; 今年の夏は全国で節電が呼びかけられており、我が家も緑のカーテンとしてゴーヤとアサガオを植えました。最初は育ちが悪いかなと思っていましたが、ここにきてどんどん伸びています。ゴーヤのつるは観察していると面白いものです。台風の多い沖縄育ちのためか、つるが風に動じないよう網にしっかりと巻きついていきます。文化生活(?)でひ弱になった人間(日本人)が見習うべき強さです。
 先日、原発が稼働し始め、政府が節電目標を下げたことに対してせっかく高まった節電意識に水を差すような話だという人がいましたが、同感です。電灯やラジオくらいしか電気器具がなかった昭和20年代に帰ればいいとは思いませんが、節電や生活方法について考えるいい機会ですよね。





2012年7月7日土曜日

コスモ石油千葉でアスファルトタンクから漏洩して海へ流出

  今回は、2012年6月28日、千葉県市原市のコスモ石油千葉製油所においてアスファルトタンクからアスファルトが漏洩して、東京湾の海へ流出した事故を紹介します。日本で起こった事故であり、メディアから全国ニュースで流れましたので、ご存知の方も多いと思います。ほとんどの情報は28日または29日に出されたものなので、最初はメデイアなどから出された情報をまとめ、後半にこれらの情報からの推測と所感をまとめました。

本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・朝日新聞, 海上に液体アスファルト留出 千葉・市原のコスモ石油, June 28, 2012
     ・毎日jp, アスファルト;製油所から東京湾に留出 千葉のコスモ石油, June 20, 2012
     ・NHKWeb, 油流出 タンク内部加熱中に, June 28 2012
  ・千葉日報WEb, 東京湾にアスファルト流出 タンクに亀裂2~3メートル 市原・コスモ石油, June 29, 2012
  ・読売新聞, 加熱でタンクに亀裂か アスファルト流出, June 29、2012
  ・毎日新聞, アスファルト流出:タンクに亀裂、海に・・・市原・コスモ石油製油所, June 29 2012 

<事故の状況> 
■  2012年6月28日(木)、千葉県市原市にあるコスモ石油千葉製油所においてアスファルトタンクが破損し、貯蔵していたアスファルトが外部へ漏洩する事故があった。発災したのは容量1,000KLの505番タンクで、漏洩したアスファルトは防油堤内に溜まったが、一部は排水口を通って海上へ流出した。
(写真は毎日新聞から引用)
■ 6月28日(木)午前7時20分頃、市原市五井海岸のコスモ石油千葉製油所で、北東側護岸沿いにあるアスファルトタンク1基からアスファルトが海上に流出しているのを同社関係者が発見した。
 コスモ石油は午前8時頃にオイルフェンスを展張し、拡散防止を図った。流出は午前8時10頃に止まったが、海上へ流出した油の一部はオイルフェンスの展張範囲を越え、沖合へ流れた。
 千葉海上保安部によると、ゲル状のアスファルトが広がり、午前11時時点で幅約500m、沖合約250mの範囲の海上に広がった。市原市消防局と千葉海上保安部は現場海域にオイルフェンスを張り、千葉海上保安部の巡視艇が水を撒くなどして油の拡散防止を行った。しかし、千葉海上保安部によると、28日夜までに最大幅約200m、長さ約5kmの範囲に広がったという。
(写真は朝日新聞から引用)
■ 市原市消防局によると、タンクには約800KLが入っており、流出量は500KLに上るという。コスモ石油の発表によると、漏洩は437KLと推定されるが、海上への流出量は特定に至っていないという。流出したアスファルトは吸着マットなどを使って回収作業が行われているが、28日では終了せず、コスモ石油は24時間体制で回収作業を続けている。市原消防局と海上保安部は29日(金)朝から再開すると報じられている。
■ 発災したアスファルトタンクは、護岸から約100m内陸にあり、直径約11m、高さ約10mの鋼製タンクで、容量1,000KLである。タンクには、高さ約9mの位置に長さ約2mの亀裂が生じており、この亀裂からアスファルトが約15分間噴き出し、内部に入っていた818KLのうち437KLが外へ流出したと報じられている。
(写真は毎日新聞から引用)
■ このタンクは、2011年3月の東日本大震災以後は使われていなかったもので、再稼働に向けて最近、点検を始めており、6月16日(土)からは、中のアスファルトを軟らかくして抜き取る目的でタンクの内部を加熱していた。事故当日28日(木)朝のタンク内部は約160℃まで熱せられていた。 コスモ石油は、加熱作業により内部圧力が高まってタンクに亀裂が入り、中からアスファルトが噴き出したとみられると、読売新聞は報じている。
(写真は読売新聞から引用)
■ 読売新聞によると、同社では、事故の瞬間、製油所内に何かが割るような音が響き、確認にしたところタンクに亀裂が入っていたというと報じている。 NHKWebによると、アスファルトが漏れ出る前、近くにいた作業員がパンという何かが割れるような音を聞いていて、高さ10mほどのタンクの屋根と周りの壁のつなぎ目の部分が、幅2,3mほど損傷しているのが見つかったと報じている。
■ 発災タンクは1967年製造で、補強・改修を繰り返して使用していたと毎日新聞は報じている。このほか、同製油所には同種のアスファルトタンクが10基あるが、いずれも市原消防局から使用停止命令を受けて稼働を停止している。

■千葉県県議会の小松議員は同氏のブログでつぎのように述べている。
 「アスファルトのタンクヤードは、2011年3月11日の液化石油ガスタンクの炎上・爆発事故で17基の球形タンクが全焼・全損した3PKヤードと道路1本隔てて隣接しています。炎上・爆発時には、一番道路側(3PKヤード寄り)の510番アスファルトタンクの側板が開口して、アスファルトが漏洩しました。
 今回、漏洩事故を起こした505番タンクは、アスファルトのタンクヤードのほぼ中央に位置していますが、隣接の506番、507番、508番、509番タンクには、かなりの飛散物が衝突・落下しています。昨年、私たち議員がコスモ石油の現地調査に入った時も、アスファルトタンクの損傷が目につきました。
 その影響はないのかどうか、原因は調査中ということですが、徹底した検証が求められます」


<コスモ石油のニュース・リリース> 
2012628日 第2報 (海上へのアスファルト漏洩について)
■ 本日発生した海上へのアスファルト漏洩につきまして、近隣住民の皆さま方をはじめ、多くの方々に多大なご心配・ご迷惑をおかけしておりますこと深くお詫び申し上げます。
 現在、漏洩したアスファルトの回収と原因の究明に全力を挙げ取り組んでおりますが、現時点での状況につきまして、以下のようにご報告します。
1.漏洩日時; 2012年6月28日(木)午前7時18分頃   現在、漏洩は停止しています。
2.漏洩場所; コスモ石油千葉製油所 505番アスファルトタンク(容量:1,000KL)
3.タンクからの推定漏洩量; 437KL(15℃換算)
                   一部が海上に流出しましたが、流出量の特定には至っておりません。
4.漏洩原因; 調査中
5.対   策; 8時頃オイルフェンスを展張し、油の拡散を防止。 現在、アスファルトの回収を実施中。
6.負傷者;   無し 


(注記; 市原市消防局および千葉海上保安部はウェブサイトをもっているが、本事例について住民向けの情報は出していない)

補 足
■ 発災したアスファルトタンクの容量は1,000KLであるが、大きさについては直径11m、高さ10mというデータのほか、直径約12m、高さ約11mという報道もある。亀裂は高さ約9mの位置にあるという報道は多いが、この位置をタンクの屋根と周りの壁のつなぎ目の部分と報じているところもある。
  内部圧力が高まってタンクに亀裂が入り、中からアスファルトが噴き出したとみられるので、おそらく、タンク屋根と側板の溶接部が一部破断したものと思われる。
 ブログ「産業安全と事故防止を考える」の投稿者が同事故に関するコメントの中で、「屋根と側壁のつなぎ目部分に亀裂が入ったという件、おそらくは放爆構造が功を奏したということだろう」と述べている。コーンルーフ式タンクでは過圧防止のために、意図的に屋根と側板の溶接部を弱くする放爆構造が採られており、この放爆構造が機能したと思われる。 


■ 亀裂部がタンク液面(約7mと推定)より高い位置にありながら、内容液818KLのうち約半分の437KLが噴出していることから激しい突沸現象が起こったと思われる。
 アスファルトの比重は0.9~1.05である。一般的には、温度が低い状態では水より重く、高い温度では水より軽く、例えば、25℃で1.03、150℃で0.93というデータがある。今回のタンクの運転状況から考えて、長期停止期間中にタンク内へ水が入り、徐々にアスファルトを加熱していった際に遊離水となって徐々に沈降して行き、ある時点で一気に沸騰し、突沸現象を起こしたものと思われる。


■ オイルフェンスは、コスモ石油、市原市消防局、千葉海上保安部によって展張されたようだが、どのような役割分担で張られたか報道ではわからない。コスモ石油はニュース・リリースの中で午前8時に展張したと言っており、これは護岸近くに張られたオイルフェンスと思われる。しかし、写真では、このオイルフェンスを越えて拡散し、この対応に新たなオイルフェンスが展張されつつあるのがわかる。
 明らかにオイルフェンスの展張が後手になっている。 また、夜間になって油回収作業はコスモ石油のみで、消防局や海上保安部は作業を中断している。どこが環境汚染の対応を主動している部署か曖昧な点の一つである。
 このような海上での油流出事故対応の専門機関としては、独立法人「海上災害防止センター」が存在するが、今回の情報の中では、同機関が活動したのかどうかわからない。



所 感
■ アスファルトは準危険物といわれ、消防法による危険物から除外され、引火点が250℃以上なので、自治体の火災予防条例の指定可燃物の扱いで、危険性の少ない石油製品と受け取られている。しかし、アスファルトタンクの事故は少なくなく、2011年5月2日に起こった米国カリフォルニア州にあるグラナイトロック社の舗装用アスファルト製造プラントにおいてアスファルトタンクが爆発・火災事故を起こした事例を当ブログで紹介(2011年6月)した。 このほかに、2006年5月、日本の東亜石油京浜製油所におけるアスファルトタンクの爆発事故などがあり、運転管理に注意を要するタンクの一つである。
 アスファルトタンクで注意すべきことは、軽質油留分の混入、運転温度の上げすぎ、屋根部裏面の硫化鉄の生成などであるが、最も基本的な留意点は水による突沸である。原因は調査で明らかになると思うが、水があっても徐々に加熱すれば、水は徐々に蒸発していくという予断があったのではないだろうか。まさに事故は弱点を突いてくるという印象を持つ事例である。
■ 今回の事例では、アスファルトタンク地区の排水系統も問題だった。防油堤内に留まっておれば、海上汚濁問題へは発展しなかったが、おそらく、ここでもアスファルトは漏れても固化して、排水系統から海へ流れることはないという予断があったのではないだろうか。
■ 海上へ流出した油膜の状況は、地上の護岸からは目線の関係で視認しづらい。我々は報道機関の飛行機による航空写真を見ているので、オイルフェンスの展張が後手になっているのがよくわかる。
 今回のような海上への油流出事故の対応について地方自治体の環境担当部署、海上保安部(署)、消防局(署)の役割と責任範囲が曖昧である。基本は、地方自治体の環境担当部署が汚濁状況を把握し、拡散防止策を主動すべきである。この拡散防止策の遂行の中で、海上保安部(署)などの役割がある。そして、今回、活動がはっきりしない海上災害防止センターを活用して24時間体制で回収作業を行い、その経費は発災事業所の負担とすべきである。 今回の事例を活かすことを期待する。




後記; 今回の事故は最初にテレビのニュースで知り、日本の事故なので、情報整理は簡単だろうと思っていましたが、記事を読むと、次々と疑問が湧きました。液面はどの高さだったのか、なぜ9mという高い位置にある亀裂から多量のアスファルトが漏洩したのか、オイルフェンスは適切に展張されたのかなどです。ここで役立ったのは写真です。記事だけでは理解できないことが、写真を見るとわかることがあります。
 これから調査が行われて原因が明らかにされ、情報公開されると思いますが、写真も公開してもらいたいと感じる事例です。タンクの屋根と側板の放爆状態を実際に見た人はほとんどいないと思います。貴重な情報を次代に伝えるという観点から情報公開を期待したいですね。