2013年1月30日水曜日

三井化学岩国大竹工場の爆発事故(2012年)の原因

 今回は、2012年4月22日、山口県和木町にある三井化学株式会社岩国大竹工場のプラントで起きた爆発・火災事故の原因について紹介します。この事故は貯蔵タンクではなく、レゾルシン製造施設の酸化反応器というプロセス機器ですが、2013年1月23日に第三者事故調査委員会の最終報告書が出されました。この報告書では、爆発の直接原因だけでなく、深層原因の解析が行われており、危機管理や事故の未然防止という観点から非常に参考になる情報だと思います。
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・jp.mitsuichem.co,岩国大竹工場爆発火災事故に係る事故調査委員会報告書について, January 23, 2013
 当該情報は第三者事故調査委員会の最終報告書(全44頁)として出されたものである。社外者から見ると、詳細すぎる点や理解しずらい点があり、内容をまとめた。特に、再発防止策は広範囲に亘っており、最も主要だと思われる点に絞った。

 <事故の状況> 
■  2012年4月22日(日)午前2時15分頃、山口県和木町にある三井化学株式会社岩国大竹工場のプラントで爆発し、火災が発生する事故が起こった。事故があったのは、タイヤなどの接着剤原料レゾルシンを生産するレゾルシン製造施設で、爆発・火災後、別のプラントにも延焼した。午前8時5分頃には、同じプラントで再び爆発したのち、火災が続いたが、同日午後5時15分に鎮圧された。
 この事故により、社員1人が死亡、他社の社員を含む11人が重軽傷を負ったほか、 近隣住民14人が割れた窓ガラスで切り傷を負うなどした。爆発による衝撃波で近隣地域の家屋損傷999軒などの被害をもたらし、轟音は隣接する廿日市市や広島市まで届いた。
2回目の爆発
■ 事故後の調査によって、爆発を起こしたのは、レゾルシンを生産するレゾルシン製造施設の酸化工程にある酸化反応器で、爆発によって破損した酸化反応器の破片が他のプラントや配管ラックに飛散し、延焼したことがわかった。 2回目の爆発は、最初の爆発後、酸化反応器の底部に残っていたハイドロパーオキサイド(HPO)が周辺の火災によって温度が上昇し、自己分解を加速させ、大量の可燃性ガスが噴出して着火し、直径約150mのファイヤーボールが発生した。 
 事故後の調査によって、爆発を起こした酸化反応器は本体上部が飛散し、本体下部とスカート部が残っているのみだった。構内の被害は爆発点から半径約300mの範囲に及んでいた。
構内の被害状況
 <製造工程> 
■ レゾルシン製造施設では、メタジイソプロピルベンゼン(m-DIPB)の空気酸化により中間体のジヒドロキシパーオキサイド(DHP)を生成し、さらにDHPの酸触媒クリページ反応により、レゾルシン(RS)を製造している。
 酸化工程の目的生成物はDHPであるが、実際に生成するハイドロパーオキサイド(HPO)は、ヒドロキシパーオキサイド(HHP)などの副生成物を含有した混合物となる。HHPは、次工程の再酸化工程でDHPとして回収する。酸化工程はバッチ反応で、再酸化工程以降は連続反応であり、中間タンクを設置してつなぎ込んでいる。
レゾルシン製造のブロックフローおよび反応式 
酸化反応器
■ 酸化工程の主要機器である酸化反応器は立型円筒式で、内径:5,150mm、高さ:12,000mm(TL長)、内容量:288㎥、材質:炭素鋼(SM490M)+ステンレス鋼クラッド(SUS304L)、設計圧力:0.8MPa、設計温度:125℃、コイル伝熱面積:80㎡である。
 酸化反応器には、1バッチの原料としてm-DIPB、純水および3.6%水酸化ナトリウム水溶液が仕込まれる。反応時間は約40時間で、仕込み・冷却・抜出しを含めたバッチサイクルは約46時間である。反応中の運転温度は520kPa、運転温度は96℃で制御される。この圧力・温度であれば、 m-DIPBの爆発範囲を常時回避できる。
 反応器に供給される空気は、反応用と攪拌用があり、反応中の空気は一定量が供給される。反応用空気はスパージャを通して細かい気泡で供給する。攪拌用空気は反応器の中央に設置したドラフトチューブ底部から供給し、エアリフト攪拌によって液相全体を攪拌する。全体として中央部が上昇流、器壁側は下降流となる。

 <事故の原因> 
■ 事故当時、蒸気発生プラントの不具合により、蒸気使用プラントの運転停止の指示が出された。これを受けてレゾルシン製造施設では、緊急停止処置(ESD)がとられ、インターロック作動により、酸化反応器を含め、プラントは安全に停止した。酸化反応器は空気からの置換および液循環維持にための窒素が導入され、冷却水が循環冷却水から緊急用冷却水(FW)に切り替わった。
■ 酸化反応器の内部温度は緩やかに低下したが、その後1時間ほどして、オペレーターは冷却速度が遅いと判断し、緊急停止で作動したインターロックを解除し、通常の反応終了後の循環冷却水を使用する冷却方法に変更した。このときに液循環維持のための窒素導入が停止した。オペレーターは、このとき、窒素による液循環停止に気づかなかった。
■ 酸化反応器には、内部に水冷の冷却用コイルが設置されたおり、コイルのある酸化反応器下部は冷却されたが、コイルのない部分ではDHPの分解と発熱が始まった。このため、酸化反応器の温度・圧力が加速度的に上昇し、酸化反応器の破裂に至り、爆発・火災となった。次図は爆発・火災の発生過程を時系列的にまとめたものである。

■ また、通常運転時、インターロック作動時、インターロック解除時の各フローを以下に示す。



<原因の解析> 
■ 直接原因
  酸化反応器の緊急停止処置のインターロック作動を途中で解除したこと。
■ 一次要因
  ①インターロックを解除した方がよいと誤判断したこと。
  ②インターロックが容易に解除できる仕組みであったこと。
  ③インターロック解除によって、窒素供給が停止して内部の攪拌ができず、温度が上昇してしまうシステムになっていたこと。

<再発防止策> 
■ 一次要因に対する主な再発防止策はつぎのとおりである。
  ①インターロック解除に関して重要性および解除後のプロセス動作内容を教育し、訓練を実施する。
  ②インターロックを解除できる条件の明確化(安定状態の基準設定および上司承認)
  ③緊急停止処置時における酸化反応器の冷却に必要な能力の確保(冷却コイルの増強および攪拌状態の維持システム)

<深層原因の解析および再発防止策> 
■ 工場では、これまで「安全はすべてに優先する」という方針のもとに安全活動を展開してきたが、今回の爆発・火災事故の発生を重く受け止め、直接原因への再発防止対策のほかに背後にある深層原因について解析し、その再発防止策をまとめた。
■ 深層原因はつぎのとおりである。
 ①リスクアセスメントの不足 
  過去の運転条件に係わる変更管理時に緊急停止処置の問題を抽出できなかった。     
 ②技術伝承の不足 
  危険性の高い反応での緊急停止処置の安全設計がマニュアル類や設備に反映されていなかった。
 ③規則・ルールの軽視 
  規定されていた手続きをとらずに、インターロックが解除された。
 ④現場の安全管理力の低下 
  安全は確保できているという過信があり、過去の事故事例集を活用する姿勢が不足していた。
 ⑤当事者意識の不足 
  安全活動に対するやらされ感があり、緊張感と危機感の不足していた。
■ 深層原因に関する主な再発防止策はつぎのとおりである。
 ①リスクアセスメントの改善
  危険性の高い物質の関わる案件の緊急停止処置のリスク評価を確実に行うことができる仕組みを構築し、実施する。
 ②技術伝承の改善
  安全に関わる緊急停止処置の安全思想を確実に伝承することと、安全に係わる重要な緊急停止処置の訓練を行う。
 ③規則・ルール軽視の改善
  インターロック解除時のルール遵守を徹底する。
 ④現場の安全管理力の改善
   「事故事例から学ぶ」ことを実践し、爆発・火災に対する知識と意識を上げる。
 ⑤当事者意識の改善
  自ら考える習慣をつけるための危険予知活動のさらなる活性化を行い、危険に関する感性を上げる。

補 足 
■ 「三井化学株式会社」は、三井グループの総合化学メーカーで、東京都港区に本店を置く。山口県和木町で工場を開業以後、事業拡大・海外展開を行い、三井東圧化学と三井石油化学工業との合併を経て、1997年10月に三井化学となる。現在、国内に8つの工場を保有し、従業員は約5,200名である。
 日本におけるレゾルシンの製造は、三井化学(岩国大竹工場)と住友化学(千葉工場、大分工場)で行っている。しかし、三井化学は2012年12月25日、岩国大竹工場でのレゾルシン製造施設を新設しても採算に合わないことから、再建を断念し、12月末で事業撤退することを発表した。

■ 「インターロック」とは、ある操作を行う時、誤操作や誤判断によって不適正な手順による操作が行われるのを防止したり、正常な運転が行われる条件を逸脱した時に自動的に原材料等の供給を遮断するなどの運転を制御するものである。 具体的には、プラントの起動条件があらかじめ確保されていなければ、プラントや機器が動作しないようなシステムや一定条件に達したら自動的に停止するシステムが該当し、インターロック機構として、保安上、重要な部分の運転を制御する計装回路が組み込まれている。
 今回のレゾルシン製造施設では、緊急時に酸化反応器の運転を停止し、冷却を行い、暴走反応を回避する緊急停止処置のためのインターロックが組み込まれていた。暴走反応によって爆発する可能性のあるプラントでは、地震などの偶発的な理由で緊急停止を行わなければならない状況でも、最低限事故だけは起きないようにプロセス設計される。

所 感
■ 今回感じたのは、日本でもこのような率直な事故調査報告書が出るようになったという印象を持った。「事故(情報)は隠れたがる」といわれ、隠蔽体質でなくても、都合の悪いことは出さないのが、事故調査報告であるが、今回は踏み込んだ内容になっている。特に、直接原因だけでなく、深層原因について解析している点は評価する。ただし、深層原因の解析や再発防止策は網羅的で、やや総花的になっており、もっと焦点を絞ってもよいと思う。本ブログでまとめるに当たっては、このことを考慮して、原文の中から主要な一項目に絞った内容にした。
■ 過去の事故事例から、事故の未然防止のためには、①「ルールを正しく守る」、②「危険予知活動を活発に行う」、③「報告・連絡・相談(報連相)により情報を共有化する」の3つだと考えている。今回の事故は、この3つがいずれも欠けていたために起こった。今回の事例について「ルール」と「危険予知活動」と「報連相」に関して階層毎に分析してみれば、次表のようになり、失敗要因と対策がわかりやすくなる。 このことは本事例だけでなく、 「ルールを正しく守る」、「危険予知活動を活発に行う」、「報連相により情報を共有化する」職場を作れば、事故は未然に防止できると確信する。
■ 一方、最近の日本で起こった重大事故に共通するのは、非定常運転時に起こっていることである。2011年11月の「東ソー塩ビモノマーの爆発事故」はシャットダウン時であり、2012年9月の「日本触媒のアクリル酸タンクの爆発事故」はスタートアップ時であり、2012年6月の「コスモ石油アスファルトタンクからの油流出事故」はタンク開放準備作業中であり、今回の事故もシャットダウン時である。2011年3月の「コスモ石油の液化石油ガスタンクの爆発・火災事故」も、きっかけは地震であったが、発災起点となったタンクは水張り中だった。非定常運転時の「ルール」と「危険予知活動」と「報連相」が抜けやすいという弱点があると思われる。

後 記: 昔、木登り名人が弟子の木登り作業を見ていたそうな。木の高いところで作業しているときは何も言わなかったが、弟子が木から降りてきて地上に近づいたとき、「気をつけろ!」と怒鳴ったそうな。高いところでは、緊張感と危機感で弟子は自分自身で気をつけるが、地上に近づくと、安堵感で気が緩み、誤って落下する恐れがあるので、名人は忠告したそうな。これは昔話ですが、近年でも、化学プラントのラダー(はしご)を降りてきた作業員が地上まであと2段というときに、若い頃と同じようにぱっと飛び降りたところ、足をくじいて労働災害になった事例が実際にあります。
 危険予知活動は効果がありますが、惰性やマンネリでやっていると役に立ちません。今回の事故調査報告書の再発防止策の中に「自ら考える習慣をつけるための危険予知活動のさらなる活性化」とあり、原文には「非定常作業時のKYやプロセスKY」が挙げられています。しかし、このKYはリスクアセスメントの範ちゅうのように思います。余り難しいKYは現場向きではありません。上述の所感の中で敢えて「問いかけKY」を出しましたが、これはマネージャーが職場を巡回して、部下に「今、どのような危険予知をしているか」と問いかけるというKYです。これによってマネージャーは職場の危険予知活動の状況を把握でき、職場の危険予知活動のさらなる活性化が得られます。というようなことを考えさせられた事例でした。














 


2013年1月24日木曜日

致命的な影響を及ぼす石油貯蔵タンク火災

 今回は、2011年6月28日にERM社のJeremy Goddard氏がまとめた「Storage Tank Fires Turn Fatal」(致命的な影響を及ぼす石油貯蔵タンク火災)を紹介します。
 本情報は2011年6月28日に「ERM Risk and Safety Blog」に出され、インタネットで公表された「Storage Tank Fires Turn Fatal」(By Jeremy Goddard)の資料について要約したものである。
■  2011年5月30日の週に、ヨーロッパで2件の大きな貯蔵タンク火災事故が起こった。ひとつはジブラルタルで起こったもので、もうひとつはウェールズ南西部で起こった事故である。特に、ウェールズで起こった爆発・火災では、4人が亡くなり、5人が重傷を負うという悲劇的な事故であった。
 偶然にも、私はその前の週から、たくさんの石油貯蔵タンクを保有している新しい陸上の石油・ガス生産施設におけるハザードおよびリスクを見直すプロジェクトで仕事をしていた。そこで、私が疑問をもったのは、貯蔵タンクの火災とは一般的なことなのかであった。早速、インターネットで調べてみたところ、わたしにとってちょっと驚くべきことがわかった。
■ 過去3か月間に、貯蔵タンクに関わる火災が少なくとも9件もあった。その多くは、複数のタンクを巻き込み、悲痛な死傷者を出し、甚大な物的損害が発生し、事業の中断を余儀なくされている。さらに、この原稿をまとめている6月7日、テキサス州の製油所で補修中に貯蔵タンクで火災が発生するという事故があった。しかし、貯蔵タンクの火災原因はいろいろな要因があり、つぎに示す図は約250件の火災について原因を分類したものである。(A Study of Storage Tank Accidents, Journal of Loss Prevention in the Process Industries 19 (2006) 51-59)
■ 貯蔵タンク火災の防止、制御、軽減に関する文献がこれまでに数多く出されてきたが、私にとって有益だったのはつぎのとおりである。
 ● 「Center for Chemical Process Safety (CCPS) Guidelines for Facility Siting and Layout (2003)」; この文献は、施設の安全な配置とタンク間距離に関してガイドラインを示したものである。この中で私が興味を持ったのは、CCPSによって推奨されている貯蔵タンクのタンク間距離が米国防火協会(National Fire Protection AgencyNFPA)よりはるかに大きいという点であった。
 ● 「UK HSE Safety and Environmental Standards for Fuel Storage Sites (2009)」;  この文献は、英国バンスフィールド貯蔵タンク爆発火災事故から得られた知見とともに、ガソリンまたは類似の蒸気圧を有する物質(例えばコンデンセート)の保管方法に関してガイドラインを示している。
 ● 「UK HSE HSG176: The Storage of Flammable Liquids in Tanks (1998)」;  この文献は古いが、貯蔵タンクの配置および火災に対する安全設計について有益な情報がまとめられている。この中で最小タンク間距離について推奨していることは、タンク群の中に重大な火災を引き起こすタンクが1基あれば、従来のタンク間距離では隣接タンクの損傷や損壊を防ぐことは無理だと述べている。しかし、緊急事態対応を実施し、事故によって危険を及ぼしている地区から人々を避難するための時間は十分とれる。
 ● 「US Chemical Safety Board, Death in the Oilfield (2006)」; この短いビデオは、3人の作業員が貯蔵タンクの保全を行っている最中に死亡するという事故を描いたものである。ビデオでは事故の原因について論じ、推奨すべき事項についてまとめられている。
〈教 訓〉
■ 貯蔵タンクの火災に対処する際、適切な装備とともに特別な訓練を受けた人材がいる場合を除き、地方の消防署では、タンク火災を消火するために必要な精神的且つ物理的な人員・資機材を備えていないということを認識しておくことは重要である。
■ 緊急事態対応部隊は、消火し終わった後に、タンク火災が再着火することがあることを認識しておくべきである。
■ タンク火災の原因として保全(補修)および火気作業に関わるものが多いので、タンク保全作業に入る前に、つぎのような点に関してしっかりした手順を確立しておく。
 ● あらゆる作業を実施する前のリスク・アセスメント(作業安全分析)
 ● 人材の訓練と力量(適格性)
 ● 縁切り、パージ、ガス検知、引火源の排除を行い、火気作業の管理および可燃性雰囲気の除去
 ● 基準・規格に則った最小のタンク間距離の順守 (例えば、NFPA30に則ったとしても、火災時にはタンクから別なタンクへの延焼を回避できるわけではない)
 ● タンクから敷地境界までの距離、タンクからプロセス設備までの距離、タンクから入出荷エリアまでの距離、タンクから建物までの距離を適切にとること。施設用の特別基準がない場合、 CCPSの「Guidelines for Facility Siting and Layout (2003)」が最も保守的なガイダンスとなる。
 ● タンク火災に対して唯一効果のある方法は泡消火であるが、大規模火災の場合は効かないこともある。
 ● タンク延焼の可能性を最小にする戦略をとるには、タンク間距離と火災抑制の両方を考慮すべきである。
 ● 個々のタンクについてタンク間距離を大きくとることができない場合、つぎの図のようにタンク群を分割することを考えるべきである。
 ● 危険性の高いタンク(例えば、引火性の高い液体を保管)の場合、自動過充填防止システムを設ける。そして、このシステムは、物理的・電気的に分離し、タンク・ゲージ・システムと独立したものとする。
 ● 過充填防止システムは定期的にテストを行う。長期間、作動したことがないと、システムは機能しないことがある。
 ● タンクの入口・出口配管には、ファイアセーフ型の孤立用バルブを設ける。
 ● 大容量の貯蔵タンクを最も安全に孤立させる方法は、遠隔操作型遮断弁を設けることである。
 ● 遮断弁のスイッチは、バルブ本体から離れたところで、且つ想定火災から十分距離を置いたところに設置すれば、タンク内容物を安全に孤立させることができる。
 ● 現場からの液流出や事故が大きくなって環境への影響が出ることを防止するため、3次の封じ込め方法を設ける。また、2次封じ込めから溢流するかもしれないことを考慮して、流出を封じ込めるような現場の排水方法や勾配について設計する。
〈この3か月間のタンク火災〉
訳者注; 上記2件の事故は当ブログで、「米国テキサス州のエクソンモービルでタンク火災」(2011年10月15日付け)、「シェブロンの製油所でタンクが爆発して死者4名」(2011年6月28日付け)として紹介した。

訳者注; 上記2件のうち、5月19日の事故は当ブログで、「落雷による火災に苦戦する消火活動」(2011年6月20日付け)として紹介した。

補 足
 「ERM社」(Environmental Resources Management )は環境、健康、安全、社会問題に関わるリスクマネジメントを専門に手がける世界有数のコンサルティング企業である。英国ロンドンを本部に、世界39か国に140以上のオフィスを有し、4,700名超の専門家を擁している。日本にも横浜にオフィスを持ち、活動している。
 アルジェリア人質事件の現場となった天然ガスプラント操業会社の一社であるノルウェーのスタトイル社(Statoil)には、2007年にウェブベースの初期段階リスク・アセスメントのツールを開発し、納めている。 なおスタトイル社は、アルジェリア人質事件に関して同社のウェブサイトでニュース・リリースを提供している。

所 感
■ 今回の資料(情報)は、 ERMというリスクマネジメントを手がける企業の専門家である著者が石油貯蔵タンクの事故の続いた状況からまとめたものであるが、その時期が20115月末であり、当ブログを開設した時期と同じ頃という点が興味深い。おそらく、2005年英国バンスフィールド火災事故におけるタンク爆発火災の衝撃的な事故が起こったあとも、タンク事故が無くならないことに疑問を持ったのに違いない。
 この資料の教訓で述べているように、実際のタンク事故事例からリスクマネジメント(危機管理)を通じて、貯蔵タンクの事故を減らしていく必要がある。しかし、世界規模で見ると、その後も、貯蔵タンク事故は起こっているのが現実である。


後 記; 前回のブログの後記でアルジェリア人質事件について記しましたが、続きの話です。この事件は、アルジェリアのイナメナス(In Amenas)の天然ガスプラントで起こったと報道されていますが、実際は、イナメナスから約45km離れたティグエントゥリヌ(Tiguentourine)にある天然ガスプラントです。赤い火星のような砂漠で起こった今回の事件の情報は錯綜(?)して、日本では情緒的な報道が主になっていますが、海外の情報の中には、事件の概況をわかりやすく伝えているものがあります。3つの図(写真)を紹介します。
イナメナス(In Amenas)と約45km離れたティグエントゥリヌ(Tiguentourine)の施設の位置図
ティグエントゥリヌのガスプラントと居住区の位置図
事件の概況をまとめた図
 1月16日水曜にテロ集団の襲撃(2名死亡、6名負傷)、17日木曜にアルジェリア軍による攻撃(居住区にいた人質および誘拐犯の死亡、数百人の人質解放)、19日土曜にアルジェリア軍による最終攻撃(プラント地区にいた人質および誘拐犯の死亡)、20日時点での状況は、少なくとも人質25名死亡、誘拐犯32名死亡、792名の人質解放(うち外国人107名)、不明者19名(うち日本人10名・ノルウェー人5名・マレーシア人2名・英国人2名)というのが事件の概況です。日本国内の各種施設において「テロ対策中」という看板は見かけますが、果たして日本でこのようなテロ集団による襲撃があったらどうなるのでしょう。













2013年1月18日金曜日

米国ルイジアナ州でクリスマスに落雷によるタンク火災

 今回は、2012年12月25日のクリスマスの日に、米国ルイジアナ州ドゥソンにあるシェブロン・ガス井のタンクに落雷があり、火災となった事故について紹介します。
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・Klfy.com, Lightning Strike States Fire,  December 25, 2012 
  ・Katc.com,  Lightning to Blame for Gas Tank Explosion,  December 25, 2012
    ・TheAcdvertiser.com,  Acadiana Misses  Worst of Storms,  December 26, 2012

<事故の状況> 
■  2012年12月25日(火)午前7時過ぎ、米国ルイジアナ州ドゥソンにあるシェブロン・ガス井のタンクに落雷があり、火災となる事故があった。
          (写真はKlfy.comから引用)
■ 当時、大きな嵐が来る前兆で、雷雲が通過していた。12月25日午前7時23分に、ボランティア型のドゥソン消防署はキャメロン通り8900区にあるシェブロン・ガス井から煙が上がっているという通報を受け、状況を調査するため出動した。消防隊が現場に到着すると、よく油田現場で油の生産に使用される90バレル(14KL)の貯蔵タンクが火災を起こしているのを確認した。
■ このため、ラファエット消防署のハズマットHazMat)隊が支援のために出動要請された。ハズマット部隊は特別な泡剤を使用し、火災の制圧を支援した。ハズマット隊の別な隊員は、事故対応中、大気のモニタリングを実施した。生命を脅かすような問題はないことが確認されたので、避難の勧告は出されなかった。調査された結果、油の入ったタンクに直接雷が落ちて、火災に至ったことが明らかになった。
■ この事故に伴う負傷者はいなかった。環境浄化チームが呼ばれ、環境への影響が出ないよう、火災で生じた残留物が除去された。
■ ルイジアナ州のこの地区には、このあと、嵐が来襲して北部と東部には竜巻が発生し、少なくとも1人が亡くなるなど、最悪のクリスマスとなった。
写真はKlfy.comの動画から引用
写真はKlfy.comの動画から引用

補 足  
■  「ルイジアナ州」は、米国南部のメキシコ湾に面しており、州都はバトンルージュ、最大の都市はニューオリンズで、州人口は約457万人である。州は64の教区に分かれている。
 「ドゥソン」は、ルイジアナ州南部のアカディア教区とラファエット教区にまたがってあり、人口約1,600人の町である。
 「ラファエット」は、ルイジアナ州ラファエット教区にある都市で、人口は約12万人である。

■ 「ラファエット消防署のハズマット隊」(Lafayette Fire Department Hazardous Materials Response Team; LFDHMRT)は、ラファエット消防署に組織された危険性物質を取扱う特別なチームで、化学、生物、放射能および爆発混合物の事故の対応を行う。ハズマット隊の人員は32名であるが、2010年に新しく入った7名の消防士に危険性物質の取扱いに関する教育・訓練を行っているほか、署内には危険性物資に対応できる消防士は80名になっている。ハズマット隊はフォードF-550で牽引する長さ9mのトレーラーを保有している。トレーラー内には、危険性物質の様々な状況を処理するため、防護服、処理装置、資機材、計測機器などを装備している。
ラファエット消防署のハズマット隊 (写真はLafayette Fire Department WebSiteから引用

■ 今回のドゥソンの事故現場は「シェブロン・ガス井」(Chevron Gas Well)と報じられているが、石油メジャーのシェブロン社との関係は不明である。米国の地方に見られる原油または天然ガスの油井だと思われ、キャメロン通りから少し入った所にあり、小さな施設で、落雷のあったタンクの規模も小さい。
 発災前のドゥソンのタンク施設 (写真はグーグルマップから引用)      

所 感
■ 今回の事故は小型タンクではあるが、2基のタンクは完全に焼損し、1基は完全に座屈している状況である。しかし、油井用のタンクにおける落雷による火災で、米国では比較的発生頻度の高い事故であるため、報道も淡々として状況を伝えているという印象である
 米国(というよりキリスト教社会)では、クリスマスの日を大事にするが、20091224日クリスマスイブの日に、米国モンタナ州のコノコフィリップス社ビリングス製油所においてコーカー装置のタンクが火災を起こす事故があった。関係者落胆するだろうが、事故は日時や人の気持ちに関係なく起こるということである。
■ 今回の事故対応では、ハズマット(HazMat)隊が出動している。2012年10月23日、米国カリフォルニア州ロサンジェルス市街地で起こった油流出事故(当ブログ2012年11月に紹介)の所感で、「危険性物質の取扱いを熟知しているハズマット隊が出動している。日本では、生物・化学テロの対応を想定し、大都会の消防庁・局にしかハズマット隊を組織していない。しかし、最近、日本の石油化学コンビナートで起こる事故において消防機関の危険性物質の対応が適切でない事例が出ている。地方の消防機関、特に石油化学コンビナート地区を管轄する消防署でも、住民および消防士を守る上から、危険性物質(Hazardous Material)を専門とする人材を育成すべきである」と述べたが、今回のラファエット消防署は、人口約12万人の地方都市であるが、ハズマット隊を組織し、さらに教育・訓練を行い、人材の育成を行っている。他国とは言え、見習うべき点だと思う。

後記; 本情報をまとめているとき、アルジェリアの石油施設の建設現場で人質事件が発生したというニュースが報道されました。事故発生の第一報は不正確なものですが、今回は時間が経っても確かな情報が出てきません。そのうち、アルジェリア軍による救出作戦(制圧作戦?)がとられたという情報が出ましたが、ますます混乱しています。外遊している首相が人命第一に対応するというのも虚しく聞こえますね。










2013年1月15日火曜日

インディアン石油の貯蔵所で爆発し、死者3名

 今回は、新年早々の2013年1月5日、インドのクジャラート州スーラトにあるインディアン石油のハジラ・ターミナルのガソリン用タンクにおいて爆発・火災が発生し、3名の死亡者の出た事例を紹介します。
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・FireDirect.net, Major Fire at Indian Oil Corporation’s Hazira Depot, January 7, 2013 
  ・News.com.au, Three Killed in Indian Pil Depot Blaze, January 7, 2013
      ・AFP, Three Killed in Indian Oil Depot Blaze: Police, January 7, 2013
      ・NewsWala.com, Surat Indian Oil Blaze Killed Three, January 6, 2013
      ・NewsBullet.in, Two Killed in Indian Oil Depot Blaze near Surat, January 6, 2013

<事故の状況> 
■  2013年1月5日(土)午後12時30分、インドのクジャラート州スーラトにあるインディアン石油(IOC)のハジラ・ターミナルのガソリン用タンクが爆発し、火災が発生した。
 インディアン石油の関係者によると、4番タンクが3日前に漏れがあり、Iインディアン石油のバドダラ施設から3名の作業員が来て溶接作業を行っていたときに、爆発が起こったという。この3名の溶接を行っていた作業員は行方不明だという。その後、行方不明だった3名の作業員は死亡が確認されたと、当局は発表した。事故のあった石油ターミナルは、スーラトから約18km離れたハジラのバーサ近くのイチャプールにあり、石油製品を貯蔵していた。
■ 事故発生に伴い、スーラト、ナブサリ、ビリモラから出動した500名の消防士が火災の消火活動に従事した。また、ONGC(インド石油天然ガス公社)、L&T社(ラーセン&トゥブロ社)、エッサール社、リライアンス・インダストリーズ社の消防隊も消防活動の支援を行なった。少なくとも25台の給水車が火災タンクの消火に使われ、55台を超える消防車と30台の給水車によって隣接する他のタンクへの延焼を防ぐために使用された。
 ハジラ・ターミナルの近くには、ONGC(インド石油天然ガス公社)の鉄道用ガソリンタンク貨車が40台停っていた。当局は、最優先でこれらの貨車を安全な場所へ移動させた。
■ スーラト市消防署のパンカジ・パテル署長によると、タンクの上部屋根が爆発場所から30m離れた所に噴き飛んでいたという。パテル署長は、逆巻くように立ち昇る煙が消防隊の活動の妨げになり、そして夜に入って状況はますます悪化したと語った。パテル署長によると、火災を消火し、延焼を阻止するためには毎分22,000リットルの水量が必要だったという。アーメダバード消防署とバドダラ消防署も支援のために駆けつけた。火災消火と隣接タンク冷却のため、 6,000KLを超える量の水と泡が使用された。
                                         (写真はEnglish.Cina.comから引用
                                        (写真はFireDirect.netから引用
■  1月6日(日)になって火災は制圧下に入った。警察の発表では、火災の制圧までに21時間かかったという。警察当局の話によると、「3人の被害者は溶接工で、地獄のような火に巻き込まれた」という。 同日、インディアン石油は、亡くなった作業員のうち、二人はライシン・チョウドハリさん(38歳)とラーフル・プラサドさん(20歳)であることを確認したと発表した。先に発見された二人の遺体に続いて、6日(日)正午頃、3人目の遺体が発見された。政府は、被害者の家族には5ラーク・インドルピー(30万円)の賠償が払われると発表している。
 インディアン石油は、「昨日の正午頃、ハジラにあるインディアン石油の貯蔵ターミナルにおいてモーター・スピリット(ガソリン)用タンクから発生した火災は、現在、完全に鎮圧され、わずかにくすぶっている状態です。その他のタンクは安全な状態です」と発表した。
モイリー大臣の会見を撮すテレビ画面
(写真はYouTubeの動画から引用
■ インドの石油・天然ガス省ビーラパ・モイリー大臣がくすぶった状態の現地を訪れ、火災の原因について調査するよう指示した。モイリー大臣は、インディアン石油の損害は45クロール・インドルピー(276百万円)にのぼるだろうと語った。インディアン石油は、火災の原因について社内の委員会で調査を行っており、120日には報告書を出す予定だと話している。
■ ハジラ・ターミナルには9基のタンクがあり、うち5基がガソリン用で、残り4基がディーゼル燃料用のタンクである。発災したタンクは容量9,600KLのガソリン用で、火災発生時には約半分の油が入っていた。強風のため、別のガソリン用タンクにも飛び火していた。
■ 週末にスーラトで起こった火災は、インディアン石油としては、2009年、北インドのジャイプールの貯蔵施設で11名が亡くなった大火災に続く事故である。 ジャイプールの火災では、11日間燃え続け、11名が亡くなり、損害額は280クロール・インドルピー(17億円)にのぼった。
           飛び火した隣接タンクの消防活動  (写真はYouTubeの動画から引用

              ほとんど座屈した火災タンク  (写真はYouTubeの動画から引用

          消防隊による消防活動    (写真はAFPから引用

補 足
■ 「インド」は、正式にはインド共和国で、南アジアに位置し、インド亜大陸を占める連邦共和国で、イギリス連邦加盟国である。首都はニューデリーで、人口は約12億人で世界第2位である。
 「クジャラート州」は、インド北西部にある州で、人口は約5,060万人である。
 「スートラ」はクジャラート州の中部にある人口約315万人の都市で、インドで10番目に大きい都市である。

■ 「インディアン石油」(Indian Oil Corporation ; IOC)は、1964年に設立された国営の石油会社で、ニューデリーに本社を置き、従業員は約34,000人である。インドの大統領が会社の78%の株を有しており、国家統制されている。インディアン石油グループは、国内に10箇所の製油所を持ち、年間6,570万トン(約130万バレル/日相当)の精製能力を有し、139箇所の石油貯蔵ターミナルを有している。 
 なお、今回の事故の消防支援に参加した国営の「ONGC 」(Oil and Natural Gas Corporation Limited ; インド石油天然ガス公社)、民間の「エッサール」や「リライアンス・インダスリーズ社」はインドにおける主要な石油会社である。
 
■ 「発災タンク」は、ガソリン用で容量9,600KLだとしたが、 報道には6,000KLや5,000KLといろいろな情報があった。グーグルマップで発災タンクの直径を推測すると、約32mであり、高さを10~12mとすれば、容量は8,000~10,000KL程度となり、9,600KLの情報を採用した。タンク型式は浮き屋根式と考えられるが、消防署長の「タンクの上部屋根が爆発場所から30m離れた所に噴き飛んでいた」という話と、火災写真においてタンク上部に屋根の骨部材が見えており、アルミニウム製ドーム型の浮き屋根式タンクではないかと思われる。
 事故当時、発災タンクには油が約半分入っていたという情報なので、液位は5~6mと思われる。ガソリンの燃焼速度を33cm/h(消防研究所の燃焼実験、2004年10月)とすれば、燃え尽きるまでの時間は約15~18時間となる。発災から鎮圧までに21時間かかったということから、火災は泡消火活動によって鎮圧されたのではなく、燃料が燃え尽きたものと思われる。ただし、隣接タンクでは、シール部の火災が発生しており、この火災は消火活動で消火されたと思われる。
矢印が発災タンク。この写真では改修が行われているように見える。火災写真では、タンク上部に屋根の骨部材が見えており、アルミニウム製ドーム型の浮き屋根式タンクに改造されたと思われる。 
■ 「消火活動」では、大容量泡放射砲が使用されたという情報はない。配備されていなかったと思われるが、例えば、日本の石油コンビナート等災害防止法でも、直径34m以上の浮き屋根式タンクに対して能力10,000L/分の大容量泡放射砲システムを配備する必要があることになっており、今回の発災タンクの大きさでは、配備対象とならない。米国でも、「貯蔵タンクの火災要因と防止策」(当ブログ2012年8月紹介)によれば、「直径45m以下のタンクの場合、有効な消火資機材(水、泡など)と人材が揃えば、消火活動は比較的容易である」 といい、必ずしも大容量泡放射砲を用いなくても消火は可能だと考えている。

■ 「隣接タンクの延焼防止」(輻射熱曝露対策)に冷却放水が行われている。消防署長によると、「火災の消火と延焼阻止に22,000L/分の水量が必要だった。 6,000KLを超える量の水と泡を使用した」という。
 この水量の妥当性について考えてみる。 「貯蔵タンクの火災への備えは十分ですか?」(当ブログ2012年9月紹介)によれば、「一般的には、風下側を第一優先に曝露対策を行うことになる。風下の右側と左側にあるタンクについて冷却する必要が出るだろう。 曝露対策の冷却放水をしている場合、タンク側板部に水蒸気が出ている限り、冷却効果があると見て放水を継続すべきである。水蒸気が出ていない状態になれば、冷却の放水を停止する。タンク側板が再び熱せられた場合、冷却を再開する。このようにして消火用水の量を管理することによって、排水の量を減らす。タンクへの冷却水量は、直径30m未満のタンク;1,850L/分、直径30~45mのタンク;3,780L/分とする。注意すべき点は、過剰に冷却水を使うと、施設内の雨水排水系統のシステムを設計以上に酷使することになる。施設内の排水用ポンプの能力を超えてしまうと、火災地区で使用した水が溢れて、防油堤内をオーバーフローし、混合汚染の問題が生じる恐れがある 」と述べている。
 今回の火災に適用してみると、発災タンクの隣接する2基と前面の2基の計4基のタンクに冷却放水を行なった仮定した場合、 [3,780L/分×1基]+[1,850L/分×3基]=9,330L/分 の水量となる。これに10,000L/分の泡消火水を加えれば、19,330L/分の水量となり、消防署長の話と概ね合っている。総量で6,000KLの水量を注水しているが、防油堤の滞水能力を超えてはいない。消防署長が定量的に把握しており、状況に応じた消防戦術をとっていることがうかがえる。しかし、事故後の消火泡廃水の処理が適正に行われたかの懸念はある。

所 感
■ 今回の事故は、火気工事中の爆発・火災だと思われるが、かなり大きな爆発が起こっているので、タンク浮き屋根上に多量の可燃性ガスが滞留して着火したものと思われる。可燃性ガスの環境管理や火気管理に問題があったことは間違いない。タンク型式の情報は伝えられていないが、写真などからアルミニウム製ドーム型浮き屋根式タンクと思われる。タンク型式と爆発要因に関係があるのかなど事故原因については調査結果を待ちたい。
■ 断片的な情報からであるが、今回の消火活動に注目すべき点がある。直径32m級で10,000KL未満のタンク火災は従来の消防資機材で対応が可能だと考えられていたが、今回、消火できなかった。強風や障害物(ドーム型屋根の残骸など)など消火活動に支障となる条件があったにしても、消防人員や資機材は揃っていたと思われる中で消火できなかったということは、このクラスでも大容量泡放射砲システムが必要だといえる。

後記; 亡くなった人への賠償が30万円という数字がありましたので、インドの人の収入がどれくらいか調べてみました。少し古いのですが、2008年にインド国立経済応用研究所の行なった調査結果では、1世帯年収50万円以下が1億8千万人、全世帯の81%だそうです。そして年収50万円を超えれば高所得者層だといいます。30万円の金額価値に関する印象は、調べる前後で一変しました。しかし、一方、円換算する意味があるのかという気もします。5ラーク・インドルピーとしておく方が予断を持たないようにも思います。収入が低いからといって、インド人が全員不幸なわけでもありませんし、昭和30年初期の日本人が不幸だったわけでもなかったのですから。これからも外国の情報を調べることになりますが、金額や円換算にこだわることはないなと思っています。

2013年1月8日火曜日

コスモ石油の液化石油ガス爆発火災(2011年)の放射熱解析

 今回は、2011年3月11日、東日本大震災が発生した日に千葉県市原市のコスモ石油千葉製油所で起こった液化石油ガスタンクの爆発火災事故の放射熱解析について紹介します。解析は財団法人消防科学総合センターが行なったもので、石油コンビナートの防災アセスメント指針の改訂に伴って2011年11月21日にまとめられた資料の中に解析事例の一つとして記載されたものです。
 なお、同事故の原因については2012年3月28日の当ブロブ「東日本大震災の液化石油ガスタンク事故(2011年)の原因」で紹介しています。
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Fdmago.jp, 石油コンビナートの防災アセスメント指針の改訂(消防科学総合センター)資料2, November 21, 2012 

<ファイヤーボールに関する解析方法> 
(1) 直径・継続時間
■ ファイヤーボールの直径と継続時間に関する算定式には次のようなものがある。   

(2) 放射熱(輻射熱)
① 現指針
 ファイヤーボールから受ける放射熱は、ステファン・ボルツマンの法則に基づいた次式で表される。
 形態係数は、ファイヤーボールを球形と仮定し、球の中心に正対した受熱面を想定すると次式で表される。

 現指針では、ファイヤーボールを1750Kの完全黒体(ε=1.0)として、次式により放射熱を算定するとしている。
② 長谷川・佐藤(1978)
 長谷川・佐藤は、ファイヤーボールから受ける放射熱について、実験に基づいた次式を示している。この式はAIChE ガイドラインにも掲載されている。
③ AIChE
 AIChE ガイドラインには、次のような手法も示されている。
 ここでRf は、ステファン・ボルツマンの法則ではなく、ガスの燃焼によりファイヤーボール表面から放出される熱量として次式により計算される。
 また、透過率τは次式により計算される。
 Ta:気温 (K)

 注) 現指針の手法では、液面火災やファイヤーボールの放射熱計算において大気の透過率は考慮されていないが、海外の手法では無視できないとして考慮されている。

(3) 爆風圧(過圧力)
■ タンクや配管が破損して大量の可燃性ガスが大気中に放出された場合、空気と混合して可燃性蒸気雲を形成し、着火すると大規模な爆発を起こす。そのときの爆風圧の影響を算定するための手法としては、TNT等価モデル、TNO Multi-Energy モデルなどがあるが、一般的に用いられているのはTNT等価モデルであり、現指針でもこのモデルを提示している。また、高圧ガス保安に関わる法令や技術指針もこのモデルがベースになっている。
 TNT等価モデルでは、爆風圧と距離との関係は次式で与えられる。
 注) 爆発係数は、流出して気化したガスのうち爆発に寄与する割合(拡散ガスのうち濃度が爆発範囲内にあるガス量と考えられる)であり、一般的には10%が用いられる。また、TNT収率は、爆轟に寄与した混合気体の総エネルギーと生じた爆風圧に相当するTNT当量のエネルギーの割合であり、一般的には6.4%を用いれば安全側と考えられている。

■ なお、高圧ガス保安法では、式1.1 でγ=0.064、QTNT=1000kcal/kg(4.184×10J/kg)として次式のように表し、Kの値を例えば表1.1.1 のようにガスの種類ごとに示している。(K値に10が掛かるのはWG をトンで表しているためである)
この式では、TNT当量を次のように見積もっていることになる。


<事故事例に基づく試算>
「 コスモ石油・液化石油ガスタンク爆発火災(2011年3月11日)」 
■  2011 年3月11 日の東北地方太平洋沖地震の発生により、千葉県市原市のコスモ石油においてLPG(液化石油ガス)タンクが倒壊し、これによりLPG配管を破損して火災が発生、隣接するタンクが5回爆発し、火災がタンクヤード全体に拡大した。このとき、最初にBLEVE Boiling Liquid Expanding Vapor Explosion)により爆発したタンク(174分に爆発した374 番タンク)について放射熱及び爆風圧の試算を行う。この球形タンクは、容量2,000KLの液化プロパンタンクで、被災時の残量は600KL圧力は1.0MPa であった。

(1) ファイヤーボールの直径・継続時間
■ 被災時、タンク中の液化プロパンの量は600KL(比重0.5 とするとWg=300t)であり、これがBLEVE により蒸気雲を形成し、着火・爆発してファイヤーボールとなった。瞬時に気化して、ファイヤーボールの形成に寄与したプロパンの量は不明であるが、常温で漏洩したときの気化率(フラッシュ率)が0.364であることを考慮すると、100t以上であることが推察される。したがって、可燃性ガス量を100、150、200、250、300tとしたときに形成されるファイヤーボールの直径と継続時間を各手法により計算した。(高温に曝されたとはいえ全量の300tが気化してファイヤーボールを形成したとは考えにくい)
■ 算定結果は表1.1.2 に示すとおりである。実際のファイヤーボールは、当日記録された動画などから直径およそ300m、継続時間20秒程度であったと思われる。表1.1.2 の算定結果から、タンク内の液化プロパン300tのうち150~200tが瞬時に気化して蒸気雲を形成し、これが爆発してファイヤーボールになったと考えるとつじつまが合う。なお、ファイヤーボールの直径と継続時間の算定結果の双方を見ると、AIChE(2010)の手法が最もよく適合しているといえる。
構外から見た爆発直後の画像   (写真はSalonTakahashi.blogから引用) 
(2) ファイヤーボールの放射熱
■ ファイヤーボールの直径(D)を300m、図1.1.2 のような位置関係を想定し、中心直下から任意の距離Xにある地点で受ける放射熱を各手法により計算する。ここで、受熱面はファイヤーボール中心に正対しているとし、ファイヤーボール中心の高さ(Z)はAIChE(1994)により次のとおりとする。

■ 算定結果は図1.1.3 に示すとおりである。現指針の手法については、ファイヤーボール温度を1750K と1500K としたときの値を示している。なお、AIChE の手法では、気温15℃、相対湿度50%として透過率を計算している。

■ また、参考として米国EPA(環境保護庁:Environmental Protection Agency)が開発した影響評価ツールALOHA で算定した結果を図1.1.4 に示す。(このソフトウエアは経済産業省のウェブサイトから無償ダウンロードできる)
 算定条件は、タンク容量2000KL、残量600KLでのBLEVE(ファイヤーボール形成に寄与するガス量は自動計算)、気温15℃、相対湿度50%とした。ALOHAによる算定結果は、図1.1.3 で現指針(1500K)および長谷川・佐藤による値に近いものになっている。
 この事故事例において、実際にどの程度の放射熱を受けたかは不明であるが、現指針に示されたT=1750Kとしたときの放射熱の算定は、予測としては過大評価のように思われる。

(3)  爆風圧
■ コスモ石油のLPG 爆発事故では、爆風圧の影響もあり、事業所内建屋のスレート屋根や窓ガラス、また3km以上離れた民家の窓ガラスが破損するなどの被害が発生している。そこで、前記と同じタンクについて、TNT等価法(式1.1)を用いて蒸気雲爆発に伴う爆風圧の試算を行った。
 算定にあたっては、液化ガスの流出量(WG)をタンク残量の300tとし、K値は放射熱の影響を算定したときの条件(概ね半分が気化して蒸気雲を形成)と合せるため、 表1.1.1 の40~70℃のときの値である97×10 とした(フラッシュ率が概ね0.5)。したがって、爆発時のTNT当量は次のようになる。
 注) 放射熱と爆風圧の算定式はまったく別に開発されたものであり、1つの爆発においてそれぞれで計算されるような影響が同時に起こるというわけではない。どちらの影響が大きいかは、着火したときの蒸気雲の混合状態によって決まるものと推察される。コスモ石油の事故では計5回の爆発が発生しており、どの爆発でガラスが破損したかは不明であるが、1つの試算として上記のような条件を設定した。

■ 算定結果は表1.1.3 に示すとおりである。同表にはClancey(1972)による爆風圧と被害の関係をあわせて示した。(Clancey による爆風圧と被害との関係はAIChE ガイドラインや1994年の消防庁指針にも引用されている)  

■ 一方、コスモ事故報告書によると、事業所内の爆風圧によると思われる被害の発生状況は表1.1.4 に示すとおりである。同表には、被害のあった距離における計算上の爆風圧(WTNT=9542kg としたときの計算値)もあわせて示している。
 これによると、計算上の爆風圧が15kPa を超える約200m以内の範囲でドア(シャッター)・窓枠の破損、安全限界(Clancey による)とされる2.1kPa を超える約900m以内の範囲で室内天井、スレート、窓ガラスなどの破損が見られる。また、爆発タンクから3200m、3300m、3900m離れた民家の窓ガラスが破損しているが、表1.1.3 によると「ガラスが破壊される一般的圧力(1kPa)」が約1500m、2~3km 程度離れても「歪のある窓ガラスが破損される」とされている。これらのことから、爆風圧の算定結果は、実被害と比べて概ね妥当なものといえよう。
 このようなBLEVE による災害事象の事前評価を行う場合、タンク内の液量をもとにファイヤーボールの放射熱や爆風圧による影響算定を行うことになるが、蒸気雲形成に寄与するガス量の想定が重要になってくる。  

爆発とそれを見入る人たち(手前)  (写真はYomiurishinbunから引用)

補 足
■ 「消防科学総合センター」は、総務省消防庁所管の財団法人で、1977年に設立され、本部は東京都三鷹市にあり、災害・火災等に関する科学的調査研究および消防研修に関する業務を行っている。当初は消防科学情報研究センターとして設立され、1982年に消防研修協会と統合して、名称を「(財)消防科学総合センター」に変更された。実施事業として火災原因調査業務を行うことになっていたが、この業務は独立行政法人消防研究所へ移管している。

■ 「BLEVE」(Boiling Liquid Expanding Vapor Explosion)とは、加圧された液化ガスの入った容器やタンクが火災によって熱せられ、大気圧下での沸点より高い温度まで過熱して、内圧が高まった状態で容器やタンクが破損して、圧力が急激に下がると、内容液が突沸して爆発的に蒸発する現象をいう。内容液が可燃性であれば、着火してファイヤーボールを形成することがある。

■  「AIChE」(American Institute of Chemical Engineers)は、1908 年に設立され、化学工学知識を育成して広め、会員の専門的および自己的な啓発を支持し、会員の専門技術を適用して社会への貢献を果たすことを目的とし、化学工学分野でリーダーシップを発揮する4万人以上の専門家の会員から構成されている。AIChEは、日本では「アメリカ化学工学協会」あるいは「アメリカ化学工学技術者協会」などと呼ばれている。

■ 「ALOHA」 (Areal Locations of Hazardous Atmospheres ) は、米国海洋大気庁(NOAA : National Oceanic &Atmospheric Administration)および米国環境保護庁(EPA : U.S.Environmental Protection Agency)が開発した大気拡散予測システムである。破損したタンク等から漏出する化学物質が大気中でどのように拡散するかを予測し、化学物質の漏出事故に対応したり、事故に備えての計画や訓練を担当する人々を補助することを目的として設計された。海上災害防止センターおよび(株)伊藤忠テクノソリューションズが日本語化し、経済産業省のウェブサイトで公開され、入手可能である。
 本来、拡散予測のシステムであるが、「タンク破損のタイプ」で「BLEVE」を選択した場合、「火球での沸騰液膨張蒸気爆発」を予測することができる。

■ 火災による放射熱限界(基準値)としては消防庁指針があり、最新の「石油コンビナートの防災アセスメント指針の改訂」(2012年11月21日、財団法人 消防科学総合センター)では、「基準値自体には問題はないと考えられる。旧単位系で切れの良い2,000kcal/㎡・h としており、これを国際単位系に変換し、2.3kW/㎡ に改める」としている。なお、海外の放射熱限界(基準値)については、ヨーロッパが「1.5 kW/㎡」(EN1413)、米国が「5 kW/㎡」(NFPA59A)をベースとしている。
 同指針改訂では、「ファイヤーボールの放射熱の基準値について10,000kcal/ ㎡・h を見直し、人体への影響がファイヤーボールの継続時間により異なることから、想定災害の規模に応じて、5~10kW/㎡ 程度を基準値とする」とされている。
 また、爆風圧の基準値は、現在、高圧ガス保安法に基づく保安距離のベースの一つになっているが、同指針改訂では、「既存製造施設に対して11.7kPa(0.12kgf/cm2)、新設製造施設に対して9.8kPa(0.1kgf/cm2)となっているのに対して、建屋の窓ガラスやスレート屋根が破損するなどの二次被害により人が負傷する可能性も考慮し、2~5kPa 程度の値を基準値とする」よう見直されている。

■ 今回の試算結果は、放射熱限界(基準値)との関係について言及していない。ファイヤーボールの放射熱の基準値は5~10kW/㎡ である。図1.1.3(ファイヤーボールの放射熱と算定結果;コスモ石油)ではつぎのようになる。
 ・現指針(1750K)では、 5kW/㎡の距離は約1,500mで、 10kW/㎡ の距離は約1,070mとなる。
 ・現指針(1500K)では、 5kW/㎡の距離は約1,110mで、 10kW/㎡ の距離は約770mとなる。
 ・AIChE法では、 5kW/㎡の距離は約960mで、 10kW/㎡ の距離は約690mとなる。
 ・ALOHA法では、 5kW/㎡の距離は約1,200mで、 10kW/㎡ の距離は約900mとなる。
 前述のように「現指針に示されたT=1750Kとしたときの放射熱の算定は、予測としては過大評価のように思われる」としても、他の算出結果から、安全距離は1,000~1,200mが必要となる。前回紹介した「最近の石油貯蔵タンク火災の教訓」(ドイツ連邦材料試験研究所;BAM)では、「バンスフィールドの蒸気雲について火災ハザード評価を行なった。その結果、同様な自然条件にあるところでは、安全距離(ヨーロッパ基準)は最低1kmを考慮すべきであることが明らかになった」としている。爆発・火災の条件は異なるが、安全距離の値は符合しているといえる。

■ 今回の試算結果は、爆風圧の基準値との関係について言及していない。爆風圧の基準値は2~5kPa である。表1.1.3(爆風圧の算定結果)ではつぎのようになる。
 ・爆風圧2kPaの距離は956mである。
 ・爆風圧5kPaの距離は490mである。
 ・300m地点における爆風圧は約9.4kPaである。
 前回の「最近の石油貯蔵タンク火災の教訓」(BAM)では、TNT等価法は実際の火災事故の解析に使えないとし、英国バンスフィールド火災(2005年)事故では、試算していないが、他の2件のタンク火災において爆発に寄与した可燃性燃料の重量に従って300m地点の過圧力(爆風圧)を試算している。その結果、米国領のプエルトリコ火災(2009年)では24kPa 、インドのシータプル火災(2009年)では13kPaとなっている。被害解析(過圧力推測>200kPa)や他の解析手法による結果と大きな差異がある。
 一方、今回の資料では、「爆風圧の算定結果は、実被害と比べて概ね妥当なものといえよう」と述べているが、TNT等価法では、TNT火薬の等価量が地上で爆発する前提である。液化石油ガスが大量漏洩して蒸気雲を形成し、発火源によって爆発した事例と、今回のようなBLEVEによるファイヤーボールを形成する爆発事例が同じように扱われるのには違和感がある。今回の事例では、ファイヤーボールは、中心の地上高さ225mで、半径150mで形成している。爆心をどこにおくのか曖昧である。球形タンク部に爆心をおく場合と火球に爆心をおく場合で異なるのは明らかである。例えば、表1.1.3 (爆風圧の算定結果)によると、球形タンク部を爆心とすれば、距離0mで爆風圧は>70kPaであるが、火球を爆心とすれば、球形タンク部の爆風圧は14kPaに過ぎないことになる。また、表1.1.4(爆風圧による被害状況;コスモ石油)は、球形タンク設置場所からの水平距離だと思われ、解析のための合わせ込みを行うためには、被害状況の詳細と距離(爆発中心点から)について検証する必要がある。
 いずれにしても、TNT等価法は、初期評価以外の実際の爆発事例の解析に用いるのは無理があり、別な手法を用いて解析する必要がある。
球形タンク群の火災状況   (写真はAsahishinbunから引用) 

所 感
■ 日本でも、実際の爆発火災事例に対して輻射熱(放射熱)や爆風圧力(過圧力)の解析を行うようになったという印象を持った。特に、ファイヤーボールの放射熱に関する解析では、現指針による手法だけでなく、AIChEの方法やALOHAによる解析を試みて比較しており、評価できると感じる。
■ 一方、爆風圧(過圧力)はTNT等価法のみの解析であり、物足りないという印象は免れない。また、「石油コンビナートの防災アセスメント指針」を前提にしており、現指針を是とする基本的な思考が背景にあり、解析結果に対して踏み込んだ考察が少ないように感じる。事例の結果と基準値との関係について言及すべきであると思う。
■ コスモ石油の液化石油ガスのBLEVEによるファイヤーボールの放射熱の解析結果からすれば、同じような液化石油ガスの球形タンクを有するところでは、安全距離は1,000~1,200mが必要となる。火災事故では、5回の爆発が発生しており、解析の対象は1回目の爆発で、2回目以降の爆発がどのような状況であったか不明であるが、仮に同じ規模だったとすれば、この結果は重要である。火災写真でわかるように球形タンク群が火の海に包まれ、状況として最悪の状態にも関わらず、ファイヤーボールの放射熱の観点から、安全距離が最低1kmレベルであったことは一つの大きな知見であると思う。


後 記; コスモ石油の液化石油ガスタンク爆発火災事故では、多くの人が避難し、住宅の窓ガラスが割れ、市原市民の人は生きた心地がしなかったということを認識した上で、あえて言えば、ファイヤーボール(輻射熱)の安全距離は予想と異なり、小さいと感じました。もっと、長い距離が必要だと思っていました。最新のグーグルマップの空撮写真では、被災した球形タンク地区には新しい基礎が建設されています。これに対して福島原発事故では、いまも放射能汚染が継続し、住民が帰れないことは勿論、汚染除去もままならない状況です。
 事故当時、コスモ石油のタンク事故も福島原発事故も壊滅的な状況だと感じましたが、原発の事故は、その後の影響度で見る限り、石油の事故と比較にならないほど大きく、長いということです。最近のキーワードは「安全・安心」ですが、ミサイルを保有する北朝鮮に近い日本海側にずらりと原発が並んでいるのは何なのだろうと思いますね。