2014年8月30日土曜日

メキシコのペメックス社でタンク火災、負傷者も発生

 今回は、2014年7月22日、メキシコのタマウリパス州シウダード・マデロにあるペメックス社の製油所においてガソリン貯蔵タンクで火災が起こった事故を紹介します。
(写真はRegeneracion.mx から引用
 <事故の状況> 
■  2014年7月22日(火)23時半頃、メキシコの製油所でタンク火災が起こった。事故があったのは、タマウリパス州(Tamalipas)シウダード・マデロ(Ciudad Madero)にあるペメックス社(Petroleos Mexicanos: Pemex)のシウダード・マデロ製油所のガソリン貯蔵タンクで火災が起こったものである。
マウリパス州シウダード・マデロにあるペメックス社の製油所のタンク地区付近
(写真はグーグルマップから引用)
■ 国営石油会社によると、ペメックス社のシウダード・マデロ製油所(精製能力19万バレル/日)において火災が起こった。23日に発信されたペメックス社のツイッターによると、火災が起こったのはガソリン貯蔵タンクで、この火災に伴ってペメックス社従業員に9名の負傷者が出たという。貯蔵タンクには90,000バレル(14,000KL)の油が入っていた。

■ 火災発生に伴い、ペメックス社社内の非常事態対処基準が発動されて対応している。シウダード・マデロ緊急対応部署の部隊が消火活動の支援で出動している。

■ 地元テレビは、制御できずに一晩中煌々と輝く火炎の映像を流している。炎は最大50mの高さにまで達したという。

■ 軍は製油所まわりに警戒線を設定し、当局は周辺地域の住民約200人を避難させた。しかし、ペメックス社によると、地元住民は火災による危険性がまったく無かったと語っている。

■ 7月24日(木)、ペメックス社はガソリン貯蔵タンクMJN-T-510で起こった火災について消火したと発表した。同社の声明によると、22日夜中に発生した火災は、およそ29時間後の24日(木)午前5時50分に完全に制圧し、消火したという。予防的処置として、貯蔵タンクの側壁には、引き続き冷却水を放射しているとペメックス社は述べている。
 なお、“重傷者はいなかった”と付け加えられたが、実際には、火炎との戦いの中で23名の負傷者が発生し、うち2名が軽度の火傷で、その他の21名は脱水症状と極度疲労だという。ペメックス社は、23名のうち21名は医師の診療を受けたのち、帰宅していると述べている。

■ 火災の原因については判明していないという。
(写真は左:Adntamaulipas.comから引用、右:620.com.mx から引用)
(写真は両方ともElmercurio.com.mx から引用)
(写真は左:24-horas.mxから引用、右:Diariodelatarde.mx から引用)
(写真はElunversal.com.mx から引用)
(写真はThemalaysianinsider.comから引用)
(写真は左:Conexiontotal.mxから引用、右:Metronoticias.com.mx から引用)
■ ペメックス社シウダード・マデロ製油所における今回の火災は、今年になって3回目の事故である。4月には、圧力異常上昇によるボイラの爆発事故があり、5月には、コーカー装置で火災事故が起こっている。このほか、ペメックス社の施設では、最近、事故が多発している。2013年1月には、メキシコシティの本社ビルで爆発があり、37名の死者が出ている。2012年9月には、タマウリパス州のプラントでガス爆発があり、30名の作業員が死亡する事故があった。

■ 2014年8月11日(月)、ペメックス社シウダード・マデロ製油所では、前の事故からひと月も経たないうちに、コーカー装置で事故が起こった。事故はメンテナンス中に漏れたガスに引火して火災となり、ひとりが即死、11名が病院に搬送された。その後、3名が死亡し、死者は4名となった。

補 足                                                        
■ 「メキシコ」は、正式にはメキシコ合衆国で、北アメリカ南部に位置する連邦共和制国家である。人口約12,200万人で、首都はメキシコシティである。
 「タマウリパス州」(Tamaulipas) は、メキシコ北東部で、メキシコ湾に面する州である。人口は約320万人で、州都はシウダービクトリアである。
 「シウダード・マデロ」(Ciudad Madero)は、タマウリパス州南東部に位置し、人口約20万人の都市である。メキシコ湾に注ぐパヌコ川の河口近くの北岸に位置し、周辺はメキシコ有数の油田地帯である。

■ 「ペメックス社」(Petroleos Mexicanos: Pemex)は1938年に設立された国営石油会社で、原油・天然ガスの掘削・生産、製油所での精製、石油製品の供給・販売を行っている。ペメックス社はメキシコのガソリンスタンドにガソリンを供給している唯一の組織で、メキシコシティに本社ビルがあり、従業員数約138,000人の巨大企業である。
 メキシコには国内に6製油所があり、いずれもペメックス社が保有し、合計の精製能力は154万バレル/日である。
 ・南東部内陸のミナティトラン(Minatitlan)製油所 (18.5万バレル/日)
 ・北部内陸のカデレイタ(Cadereyta)製油所 (27.5万バレル/日)
 ・中東部内陸のトーラ(Tula)製油所 (31.5万バレル/日)
 ・中南部内陸のサラマンカ(Salamanca)製油所 (24.5万バレル/日)
 ・東部メキシコ湾岸のシウダード・マデロ製油所 (19.0万バレル/日)
 ・南部太平洋岸のサリナクルース(Salina Cruz)製油所 (33.0万バレル/日)
 シウダード・マデロ製油所は、ペメックス社の中で最も小さい製油所(13万バレル/日クラス)であったが、最近、能力を増やし、規模が大きくなった。 
ペメックス社シウダード・マデロ製油所
構外から見たペメックス社シウダード・マデロ製油所のタンク風景
(写真はグーグルマップのストリートビューから引用)
■ 発災タンクは、未確認であるが、容量150,000バレル(24,000KL)という情報がある。発災タンクには、14,000KLのガソリンが入っていたというので、直径40~45mクラスのタンクとみられる。グーグルマップによると、シウダード・マデロ製油所のタンク地区にはアルミニウム製ドーム型屋根とみられるタンクがいくつかある。おそらく、火災はアルミニウム製ドーム型浮き屋根式タンクで起きたものではないかと思われる。発災写真の中にもタンク上部にドーム部材の残骸らしいものが見える。
 火災は約29時間継続している。仮に全面火災でガソリンの燃焼速度を33cm/hとおけば、約10mの深さの油が燃えたことになる。これはほぼ燃え尽きる量となる。しかし、鎮火後のタンクをみると、側板の座屈はあまり大きくないので、全面火災ではなく、リムシール火災+屋根火災だったと思われる。
 当該タンク火災に必要な大容量泡放射砲の大きさは、日本の法令でみれば、10,000L/min(直径34m以上45m未満)となる。これは大型化学消防車の一般的な放水能力3,000L/minの3~4台分に相当する。このクラスのタンクであれば、大容量泡放射砲が無くても消火可能といわれているが、今回のタンク火災では早期の消火ができなかった。

所 感
■ 今回のタンク火災は、情報が少なく、状況がはっきりせず、いろいろな疑問が生じる。
① タンク火災の要因は何だったのか?
  天候(雨や雷)の影響は無いようであるので、何らかの運転異常があったものと思われる。アルミニウム製ドーム型浮き屋根式タンクで起こったものと推測されるが、この種のタンク型式にこれまで知らなかった弱点があるのかどうかという疑問がある。

② いつ、どのようにして防油堤内の火災が発生したのか?
  発災の写真を見ると、明らかに堤内火災を伴っている。かなり激しく燃え上がっているので、相当な量の油が漏れ出たものと思われる。消火水によるスロップオーバーやフロスオーバーなのか、浮き屋根の排水系統から出たものなのか、そしていつ起こったものかの疑問がある。

③ 軽傷とはいえ、なぜ23名の負傷者が出てしまったのか?
  負傷者がどのようにして発生したのか分からないが、おそらく消防隊の消防活動中によるものであろう。困難な消火活動だったと思われるが、消防士が脱水症状や極度疲労を起こす事態になるまで対策本部は何をしていたのかという疑問がある。

④ 大容量泡放射砲はなぜ使われなかったのか?
  リムシール火災+屋根火災+堤内火災という難しい消火活動だったが、発災写真からは、大容量泡放射砲は使用されていないとみられる。世界屈指の石油会社であるペメックス社では、大容量泡放射砲システムを保有していなかったと思われる。隣国の米国では、多くのタンク火災を経験し、大容量泡放射砲を開発してきたのに、なぜメキシコは導入してこなかったのかという疑問がある。

■ ペメックス社は社内の非常事態対処基準を発動しているが、的確な対応ができていたかは分からない。しかし、広報や情報公開に関していえば、問題を矮小化しようという意識が出ており、良好とはいえない。事故に関する事実(いつ、どこで、誰が、何を、どのようにして)の基本情報がほとんど出されていない。発災状況の写真が報じられていなければ、事故状況はほとんどわからなかった。

備 考
  本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Reuters.com, Mexico’s Pemex Says Work Halted at Ciudad Madero Refinery Due to Blaze, July 23, 2014
    ・Reuters.com, Update2-Mexico’s Pemex Says Halts Most at Madero Refinery , July 23, 2014   
  ・PetroGlobalNews.com, Blaze at Pemex Refinery Injures Nine, Halts Production, July 23, 2014
    ・OGJ.com, Fire Hits at Pemex’s Ciudad Madero Refinery , July 23, 2014
    ・Hawkesfire.co.uk, Mexico-Pemex, 9 Injured in Refinery Tank Fire, July 24, 2014
    ・OGJ.com, Pemex Restarting Ciudad Madero Refinery , July 24, 2014
    ・Efe.com, Pemex Extinguishes Refinery Fire in Northeast Mexico, July 24, 2014
    ・Bloomberg.com, Pemex Fire at Ciudad Madero Refinery Tank Causes Minor Injuries, July 24, 2014
    ・GlobalPost.com, 9 Injured in Refinery Fire in Mexico, July 24, 2014
    ・Dialogo-americas.com, Mexico Oil Refinery Fire Leaves 23 Injured, July 25, 2014
    ・OGJ.com, Second Fire Hits Pemex’s Ciudad Madero Refinery, August 11, 2014 
 

後記: 今回の事故情報は、当初、製油所の事故として理解し、あまり注目していませんでした。ところが、どうやらタンクに関わる事故らしいということで、調べ直しました。しかし、ほとんどの記事はペメックス社から出されたものに基づいているため、内容の乏しいものでした。いろいろな情報を総合的に整理しても曖昧な点が多い状況でした。そこで、ペメックス社が出している声明文(スペイン語)からスペイン語による検索をしてみると、火災の画像を伴ったメキシコ国内の報道記事が出てきました。この火災写真によってかなりひどいタンク火災だということが理解できました。ただし、所感で述べたように火災状況については多くの疑問が残りました。ペメックス社は事故を教訓として活かす意識が薄いということはいえそうです。




2014年8月24日日曜日

カザフスタンの製油所のタンク地区で火災

 今回は、2014年7月16日、カザスタンのアクトベ州ムガルザール区カンダガッシュの町にあるヴァーナル・オイル・カザフスタン社の製油所で、石油タンク地区から火災が起こった事故を紹介します。
(写真はEn.tengrinews.kzから引用
 <事故の状況> 
■  2014年7月16日(水)午後10時過ぎ、カザスタンにある製油所で火災が起こった。事故があったのは、ヴァーナル・オイル・カザフスタン社(Vernal Oil Kazakhstan LLP )のアクトベ州ムガルザール区カンダガッシュの町にある製油所で、石油タンク地区から火災が起こったものである。
アクトベ州ムガルザール区カンダガッシュ付近
(中央のタンク群があるところがヴァーナル・オイル・カザフスタン社の製油所とみられる)
(写真はグーグルマップから引用)
■ アクトベ州緊急対応部署の消防本部長であるアスカル・ツレスヘヴ氏によると、事故発生は7月16日(水)午後10時06分に報告され、ムガルザール区のヴァーナル・オイル・カザフスタン社の製油所で火災が起こったという。

(写真はBnews.kzから引用)
■ 小型製油所の火災は5,000㎥のオイルタンク付近から突発的に起こった。救助隊によれば、火災による被災面積は380㎡に達したという。対応部隊の報告によれば、「現場に19の資機材を搬入し、86名が消火活動に従事し、総計で101名の隊員が出動した」という。
 火災はおよそ5時間後の17日(木)午前3時25分に鎮火した。近くにあったガソリンや燃料油などのタンクへの延焼は回避することができた。

■ この事故に伴い、ヴァーナル・オイル・カザフスタン社の従業員3名が火傷を負った。うち一人は瀕死の重傷で、別な一人は体の50%の火傷で地方病院に入院している。もう一人は軽傷で、すでに帰宅している。

■ ツレスヘヴ消防本部長は、「被災者の証言によると、1基のタンクから別なタンクへ油をポンプ移送する際、最初に引火したといいます。火災の原因および被災状況は現場検証を行なったのちに調査する予定です」と語った。 

補 足                                                        
■ 「カザフスタン」は、正式にはザフスタン共和国で、中央アジアに位置する共和制国家である。人口約1,700万人で、石油が豊富なため隣国の中国ウイグル自治区、ウズベキスタン、キルギスなどと経済で差をつけている。
 「アクトベ州」(Aktobe region)はカザフスタンの北西部に位置し、人口約80万人の州で、州都はアクトベである。「ムガルザール区」(Mugalzhar District)はアクトベ州の中央部に位置する区で、人口は約64,000人である。「カンダガッシュ」(Kandyagash)はムガルザール区の中央に位置する人口約29,000人の町である。

■ 「ヴァーナル・オイル・カザフスタン社」(Vernal Oil Kazakhstan LLP )は2002年に設立された石油会社で、石油の掘削・生産から製油所での精製を手がけている。アクトベ州ムガルザール地区カンダガッシュの町に製油所を有しており、年間150,000トンの精製能力で、小型製油所である。特長は生産された原油を直接精製するという効率性にある。
ヴァーナル・オイル・カザフスタン社の製油所設備の例
(写真は同社のウェブサイトの動画から引用)
所 感
■ 事故の状況ははっきりしないが、タンク間の切替え作業時における事故と思われる。推測される例としては、切替えが円滑に行かず、ポンプが締切り状態になったり、圧力変動が起こったりして、ポンプの軸封部から多量漏洩した可能性がある。揮発性の高い原油やガソリンの場合、漏洩したベーパーへの引火は極めて高い。

■ 従業員が3名も火傷を負っており、多量漏洩の異常事象時の状況確認のため現場に行った際(あるいは作業中)、引火が起こったのではないかと思われる。
 異常事象時の確認は物陰から見るなどして、爆発や火災が突発的に起こっても、人身災害に至らないようにすべきである。過去の事例の中にも、目前の対応を優先する責任感からこのような配慮が足らずに人身災害になったり、大勢で危険な個所へ集まり、被災者を増やしてしまう例はある。

備 考
  本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
   ・Bnews.kz, Large Fire Flam Ed at Oil Plant in Aktobe Region, July 17, 2014   
   ・Cn,TengriNews.KZ, Three Injured in Oil Refinery in Western Kazakhstan, July 21, 2014  


後 記: このところ良いことであるのですが、タンク事故がなく、7月のタンク本体の火災ではないカザフスタンの製油所事故を取り上げました。名前はよく聞きますが、どこに位置する国かよく知らなかったので、初めて調べました。 
 ところで、最近、知ったのですが、外国人の名前についてWeblio辞書「外国人名読み方字典」というのがあります。私のブログでは、基本的に人名は日本語にしますので、非常に参考になります。今までは、原文の名前を入力して検索し、日本名の文章になったものを探していました(当たる確率は低いのですが)が、同じように悩んでいた人が少なくなかったのですね。

2014年8月19日火曜日

リビアで国内の戦闘によって燃料貯蔵タンクが火災

 今回は、2014年7月27日、リビアのブレガ・ペトロリアム・マーケティング社の首都トリポリ郊外にある石油貯蔵施設においてガソリン貯蔵タンクに武装勢力の放ったロケット弾が当たり、火災を起こした事例を紹介します。
武装勢力の砲撃により火災となったリビアの石油貯蔵施設
(写真はDunyanews.tvから引用
 <事故の状況> 
■  2014年7月27日(日)、リビアにある石油貯蔵施設で燃料タンクがロケット弾を受け、火災を起こす事故があった。事故があったのは、国営石油会社ナショナル・オイル・コーポレーション(National Oil Corpo.:NOC)の子会社であるブレガ・ペトロリアム・マーケティング社(Brega Petroleum Marketing)の首都トリポリ(Tripoli)の郊外にある石油貯蔵施設において6,000KLのガソリンが入ったタンクに武装勢力の放ったロケット弾が当たり、火災を起こしたものである。
トリポリ郊外のブレガ・ペトロリアム・マーケティング社の石油貯蔵施設付近
(写真はグーグルマップから引用)
■ 石油貯蔵施設はトリポリ国際空港へつながる道路沿いにあり、市街地から約10km離れたところにある。事故のあった地区周辺では、7月中旬から世俗派民兵とイスラム系民兵の武装勢力間の対立による激しい戦闘が繰り返されていた。

■ 被弾に伴い、燃料タンクは大量の黒煙を上げて炎上した。消防隊が出動して消火活動に当たったが、戦闘が続いているため、何度も現場からの避難を余儀なくされた。国営石油会社のナショナル・オイル・コーポの広報担当モハメド・アルハラリ氏は、「消防隊は何時間も火災を消そうと試みましたが、うまくいきませんでした。最終的に消火用水を使いきり、現場を離れざるをえませんでした」と語り、火災は制御不能な事態に陥っているという。

■ リビア政府は火災現場から半径3km圏内の住民に対し、「自宅からの即時避難」を呼びかけた。同時に、政府は武装勢力に対して声明で「直ちに停戦」するように改めて訴えた。


■ 7月28日(月)には、別な燃料タンクが被弾して火災を起こしたと報じられている。当局によると、地上からの消火活動が失敗したため、空中消火のみが唯一の打開策とみているという。リビア政府は、数か国が国際支援として消火用航空機の派遣を申し出ていると語った。 

■ 731日(木)、リビア当局によると、イタリア政府が消火活動の支援のため、7機の航空機をリビアに派遣したという。暫定政府のアブドラ·アル·タニ首相の発表した声明によると、日曜夜のミサイル攻撃によって始まったブレガ・ペトロリアム・マーケティング社構内の火災を消火させるために、イタリアの石油会社ENI社もまた航空機と技術専門家を派遣したという。

■ 8月3日(日)の報道では、8基の燃料タンクが火災になっており、リビアでは人道的・環境的な災害への危険をひしひしと感じる日曜日だと伝えている。燃料タンク地区の近くには、全部で9,000㎥の燃料・調理用ガスタンクがあり、爆発の危険性の増大が懸念されている。
 石油省は、「朝方、ブレガ・ペトロリアム・マーケティング社の消防隊が火災を制御し、残りのタンクへの延焼を食い止めようと試みたが、砲撃がときどき起こるような状況のため、残念ながら消防隊は貯蔵施設に近づくことできなかった」と述べている。リビア当局は、火災現場から少なくとも半径4km内の住民に対して避難するように呼びかけている。

■ 8月6日(水)、ナショナル・オイル・コーポ広報担当によれば、石油貯蔵施設の大火災は制圧下に入ったという。しかし、武装勢力による戦闘は続いており、施設は依然としてリスクに直面しているという。ナショナル・オイル・コーポ広報担当アルハラリ氏は、「8基の燃料タンクが炎上しましたが、現在のところ制圧下に入っています。消防隊は他のタンクへ延焼しないように現場で監視を行っています。私どもは最悪の大災害を回避できましたが、空港近くの戦闘が続けば、別な火災が起こる危険性は今もあります」と語った。

■ 首都トリポリとベンガジにおいて武装勢力間の激しい戦闘が2週間以上続いており、死者は200人を超えている。各国の大使館は業務を停止し、リビアに入国している自国民の避難を行っている。 2011年、長年、独裁者ムアマール・カダフィによる政権を倒して以降、今回の戦闘は最も暴力的で、7月13日(日)、イスラム系民兵の武装勢力が空港襲撃を行なったことから始まった。戦闘による爆発音はトリポリの市街地からも聞こえるという。
消火活動に努める消防隊
(写真は左:News.nationalpost.comおよび右:Geo.tvから引用)
燃料タンクの火災状況
(写真は左:Channelnewssasia.comおよび右:Businessinsider.comから引用)
              燃料タンクの火災状況   (写真はOnline.wsj.comから引用)
補 足                                                        
■ 「リビア」は、地中海に面する北アフリカに位置し、人口約640万人共和制国家である。海を隔てて旧宗主国のイタリアが存在する。2011年、カダフィ打倒を旗印にしたリビア国民評議会とカダフィ政権側の間でリビア内戦が勃発した。一時期はカダフィ政権側が評議会側の拠点だったベンガジ進攻寸前まで至ったが、NATO(北大西洋条約機構)などから軍事的な支援を受けた評議会軍が同年8月に首都トリポリを制圧した。10月にカダフィがシルトで射殺され、42年間続いたカダフィ政権は崩壊するに至った。
 「トリポリ」(Tripoli)は、リビアの北西部に位置する地中海に面した港町で、人口約170万人の首都である。
■ 「ナショナル・オイル・コーポレーション」(National Oil Corp.NOC)は1970年に設立されたリビアの国営石油会社で、石油・天然ガスの掘削・生産のほか、製油所・石油化学工場を有する。
 「ブレガ・ペトロリアム・マーケティング社」(Brega Petroleum Marketing)は1974年に設立されたNOCの子会社(公社)で、石油製品の貯蔵・物流・販売を行っている。トリポリに石油貯蔵施設を有している。グーグルマップによれば、この施設は直径約35m×6基、直径約40m×1基、直径約43m×5基、合計12基の浮き屋根式タンクが設置されている。従って、推定10,000KL級×6基、12,000KL級×1基、14,000KL級×5基の貯蔵タンクで合計86,000KL級の貯蔵能力を有しているとみられる。また、直径約14m×6基の球形タンクがあり、1,500㎥×6基で合計9,000㎥のガス貯蔵能力を有しているとみられる。
トリポリのブレガ・ペトロリアム・マーケティング社の石油貯蔵施設
(写真はグーグルマップから引用)
■ 「空中消火」は航空機やヘリコプターを用いて、空から消火活動を行うことである。山火事などでは、地上から消防車などのよる消火が困難であり、消火用航空機やヘリコプターの活用が図られてきた。一般に旧型機を消火用航空機に転用する例が多いが、ボンバルディアCL-415は、空中消火機として造られたカナダの水陸両用飛行艇である。大型機の例としては、ボーイング747が消火用飛行機として転用されている。今回の事故時に出動したイタリアの消火用航空機の種類や成果は明らかになっていない。
 日本でも林野火災の対応として1960年代から空中消火方法が実施されてきたが、ヘリコプターによるものである。しかし、各自治体の所有するヘリコプターは放水能力が小さく、小規模火災の対応しかできない。実際の林野火災では、自衛隊の大型ヘリコプターを活用しているのが実情である。なお、東日本大震災でも、津波被害で地上からの消火活動が困難となった仙台や気仙沼の大規模火災に対して出動している。
消火用航空機の例
所 感
■ 戦闘の砲撃によるタンク火災という稀な事例である。しかし、世界的に見ると、それほど珍しい事例とはいえない。このブログで紹介した「貯蔵タンクの事例研究」(2011年8月)によると、1960年~2003年までの43年間に起こった242件のタンク事故のうち、「故意の過失」は5番目に多い原因で18件を数え、うち15件がテロ攻撃または戦争行為である。1991年には、イラクのクウェート占領中、数個所のタンク基地施設に火がつけられ、2・3個所は消火活動が行われたが、その他は戦争行為のため燃え尽きさせた事例がある。最近の故意の過失によるタンク火災の事例としては、2012年1月に起きた「米国オクラホマ州で銃弾によるタンク火災」がある。

■ 今回のタンク火災事故では、戦闘が行われている中、消火活動が困難で、消防隊が退避したような報道もあったが、写真や情報を総合的に見てみると、消防隊は懸命に消火活動を行っていたようだ。今回の事例では、消火用航空機による空中消火が試みられた。この消火活動の成否については何も報道されていないが、おそらく効果は無かったものと思われる。大容量泡放射砲を理解していれば、空中消火が大型タンク火災に有効だとは考えられない。しかし、戦闘が継続し、消火用水が尽きた状況下では、選択肢としては空中消火しか残されていなかった。
 戦闘中のタンク火災に関する消火戦略について過去に言及した資料はないが、とり得る隣接タンクへの延焼防止策を講じるとともに、火災タンクは燃え尽きさせる戦略をとるのが基本だと考える。

備 考
  本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
        ・ChannelNewsAsia.com, Huge Oil Depot Blaze Puts Tripoli under Threat, July 28, 2014
        News.Yahoo.com, Libiya Oil Depot Fire Rages, Raising Fears of Major Disaster, July 28, 2014   
        ・NDTV.com, Huge Oil Depot Blaze Puts Tripoli under Threat, July 28, 2014
        BBC.co.uk, Tripoli Fuel Depot Fire: Italy to Help Douse Blaze, July 29, 2014
        AFPbb.com, リビア、燃料貯蔵粗切の火災が「制御不能」に戦闘で消火できず, July 29, 2014
        ・Mainichi-jp, リビア:首都で燃料タンク炎上 高まる内戦突入への懸念, July 29, 2014
        NewsPakistan.pk, Italy Sent Aircraft to Extinguish the Fire in the Libyan Oil Tank, July 31, 2014
        Online.WSJ.com, Libya Says Tripoli Fuel-Tank Fire Spreads, Warns of Disaster, August 03, 2014
        Online.WSJ.com, Libya Says Tripoli Fuel-Tank Fire under Control, August 06, 2014



 後 記: ブログ更新はしばらく夏休みでした。孫が帰省していたこともありますが、ぎっくり腰が出てしまい、安静にせざるを得ない状態でした。タンク事故の情報もあまり無いようでした。今回のリビアの戦闘によるタンク火災の報道の情報は断片的で、当初はロケット砲によるタンク火災があったという事実だけにとどめようと思っていました(というより、その程度の情報しかないと見ていました)が、消火用航空機の派遣という興味深い情報などがありました。
 ところで、以前から地元の出光徳山製油所のプラント解体工事を紹介していますが、現在は流動接触分解装置(FCC装置)の反応塔が撤去されました。ときを同じくしてスポーツクラブ「ルネサンス」(以前、出光興産が建てた旧アルテミス)が道路反対側に建て替えられ、波型が特徴だった旧施設も解体される予定です。