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2014年10月23日木曜日

マレーシアでタンクローリーに落雷して次々に爆発

 今回は、地上式貯蔵タンクではなく、移動式タンク貯蔵所である石油タンクローリーの事故について紹介します。2014年9月30日、マレーシアのサバ州でタンクローリーに雷が落ち、爆発・火災を起こした事例です。
マレーシア・サバ州で落雷によって爆発・火災を起こしたタンクローリー群 
 (写真は2.hmetro.com から引用
 <事故の状況> 
■  2014年9月30日(火)午後9時過ぎ、マレーシアのサバ州でタンクローリーに落雷があり、爆発を起こして火災となり、近くに駐車していたタンクローリーへ次々に延焼して爆発を起こす事故があった。少なくとも15台のタンクローリーが被災した。
                       マレーシア・サバ州メンガタル付近    (写真はグーグルマップから引用)
■ サバ州の州都コタキナバルから北へ約20kmにあるメンガタルのターマンセラーの住民は、タンクローリー作業場と駐車エリアから起こる何回もの爆発に動揺した。この地区に雷を伴う嵐が通過した際、タンクローリーに雷が落ちた直後に爆発が起こった。この結果、大きな火災となり、駐車していたタンクローリーが少なくとも15台損壊した。

■ 被災したタンクローリーはリアン・ヒン・メガン社所有のもので、同社は10年以上前から当該場所で操業していた。タンクローリーには、翌31日(水)の配送のためすべて油が積み込まれていた。

■ タンクローリー作業場から道路を隔てた向かい側の地区に住む主婦のチン・スー・イーさんは、爆発たびに地面が揺れるのを感じたといい、「恐ろしかった。雷と爆発の件を通報もできなかったです」と話している。

■ サバ州消防・救援部署のノルディン・パウジ署長によると、事故通報があったのは午後9時23分で、ただちに消防車5台と消防士20名を現場に出動させたという。パウジ署長は、「最初は約10台のタンクローリーが火災で大破しているという報告でした。タンクローリーにはガソリンか軽油のいずれかを積んでおり、数回の爆発があったといいます。消防隊が火災を制圧するのに1時間以上かかりました」と語っている。

■ 消防隊は午後11時までに火災を制圧下に入れ、完全に作業が終わったのはその2時間後だった。
 事故に伴う負傷者は報告されていない。火災に至った原因は調査中である。
(写真はThestar.com から引用)
                                発災現場近くの道路を走る車内から撮影  写真Says.com の動画から引用)

補 足
■ 「マレーシア」(Malaysia)は、東南アジアのマレー半島南部とボルネオ島北部を領域とする連邦立憲君主制国家で、人口約2,900万人である。イギリス連邦加盟国で、タイ、インドネシア、ブルネイと陸上の国境線で接し、シンガポール、フィリピンと海を隔てて近接する。通常、マレー半島部分が「マレーシア半島」、ボルネオ島部分が「東マレーシア」 と呼ばれる。一方、マレー半島とボルネオ島間の往来は、マレーシア国民であってもパスポートを必要とする。
 「コタキナバル」(Kota Kinabalu) は、マレーシア・サバ州の州都であり、 東マレーシア最大の都市で、人口は約47万人である。。
 「メンガタル」(Menggatal)はサバ州の西海岸にある町で、州都コタキナバルから北約20kmにある。

マレーシアの州 区分
■ リアン・ヒン・メガン社(Lian Hin Megah sdn.bhd)はマレーシアの運輸業を営む企業で、シピタンを本拠にしている。発災のあったメンガタルのタンクローリー作業場と・駐車エリアがどのような形態の事業所かはわからない。発災場所はJalan Tuaran Bypass沿いという情報があるが、グーグルマップで特定できなかった。

■ マレーシアの雷発生頻度は、「NASAによる世界の雷マップ」によると、雷発生の多い地域のひとつである。ただし、今回落雷事故のあったサバ州のある東マレーシアはマレーシア半島地区に比べると、やや少ない地区である。
 日本の雷マップはフランクリン・ジャパン社が同社ウェブサイトに情報を公開している。 
全国落雷密度マップ(2009年~2013年)
 図は日本列島を一辺20kmのメッシュで区切り、メッシュ内の落雷数を2009年~2013年の5年間で集計したもの。南東北から関東地方にかけての内陸部、中部・近畿・中国の内陸部に多雷域が見られる。また九州から薩南諸島にかけても雷の多い地域がある。   (図および解説はFranklinjapan.jpから引用)
全国落雷日数マップ2009年~2013年)
 図は日本列島を一辺20kmのメッシュで区切り、メッシュ内の落雷日数を2009年~2013年の5年間で集計したもの。落雷の発生した日数でみると、東北から北陸にかけての日本海側、山陰地域、九州~薩南諸島で多くなっている。これは冬型の気圧配置時の日本海沿岸で多くみられる冬季雷のためで、当該地域では冬季でも雷による災害が多く発生している。一方、九州南部~薩南諸島にかけての多雷日域は、低気圧および前線通過時の落雷によるものと考えられる。   (図および解説はFranklinjapan.jpから引用)
全国月別落雷数2009年~2013年)
 図は日本全国2,600km四方に発生した落雷数を月別にまとめたもの。2013年の落雷の特徴は、多雷期にあたる78月の落雷が平年と比較して多かった。特に8月は、2008年と並び過去最多レベルの月間落雷数となった。このように夏季に多雷となった理由は、2012年のような大規模な現象は多くなかったが、各地で局地的な大雨を伴う落雷が多発したことが挙げられる。    (図および解説はFranklinjapan.jpから引用)

所 感
■ 車に落雷があっても車内にいる人は安全だと言われる。タンクローリーのベントにはブリーザ弁(Pressure/Vacuum Breather Valve)といわれる安全装置がついている。すなわち気温上昇によるタンク過圧や油吐出時のタンク減圧時などにタンク内の圧力を大気と平衡に保持する装置が付いており、地上式常圧タンクに比べれば、タンクからの可燃性混合気の排出は少ないと考えられている。タンクローリーに雷が落ちる確率は極めて少ないと思われるが、落雷があれば、タンクローリーも爆発・火災の危険性があるということを示す事例である。 

備 考
  本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
       ・TheStar.com,  Multiple Explosions Rock Tranquil Kota Kinabale Neighbourhood, October 01 , 2014
       ・TheBorneoPost.com, Fire Destroys 10 Tanker Truck, October 01 , 2014   
       ・FireDirect.net, Malaysia – Lightning Strikes an Oil Tanker – Multiple Blasts, October 02 , 2014
       ・Says.com, [VIDEOS] Over 10 Oil Tankers Blow up in Series Of Explosions in KK, October 01 , 2014


 後 記: このブログでは、基本的にタンクローリーを対象にしていませんが、落雷によって爆発・火災事故を起こしたという稀な事例でしたので、とりあげました。また、補足として日本における雷マップを紹介しました。
 昔は夏の夕立時の雷は一種の風情があったように思いますが、今は雷がだんだん強くなって怖さの方を先に感じます。雷が鳴ったときには車の中に避難する方が安全という話はよく聞きます。実際に車の運転をしていて落雷にあった事例もインターネットに情報が流れています。雷電流が車体からタイヤを抜けて、道路に大きな穴があくような強烈な落雷でも、車内にいた人は助かっています。しかし、今回の事例をみると、車でもタンクローリーは必ずしも安全が確保されているとはいえないようです。
 今回、雷について調べていたら、世界にはびっくりするような雷写真がありました。ギリシアのイカリア島で撮影されたもので、写真がインタネットに投稿されて話題を呼んだようです。同時に落雷があったものでなく、70回の雷を一つの画面にしたものだそうです。それにしても自然のパワーには驚きますね。


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