2016年10月22日土曜日

インドネシアの製油所でアスファルト・タンクが爆発・火災

 今回は、2016年10月5日(水)、インドネシアの中央ジャワのチラチャップにあるプルタミナ社の製油所でアスファルト・タンクが爆発し、火災となった事故を紹介します。
(写真はNews.detik.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、インドネシアの中央ジャワのチラチャップ(Cilacap)にあるプルタミナ社(PT Pertamina)の製油所である。

■ プルタミナ社は国有石油企業でインドネシア国内に6つの製油所(合計約104万バレル/日)を所有し、チラチャップの製油所は「プルタミナ・リファイナリー・ユニットⅣチラチャップ」(Pertamina Refinery Unit Ⅳ Cilacap)と呼ばれている。チラチャップ製油所は精製能力388,000バレル/日である。発災があったのは、容量1,500KLのアスファルト・タンク(No.41 T-312)で、1998年に建設されたものである。
チラチャップ市  (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2016年10月5日(水)午後12時半頃、製油所のアスファルト・タンクが爆発し、火災となった。

■ タンクから上がる黒煙は製油所から3~5km離れたところでも見えるほどだった。爆発音を聞いたプルタミナの近くに住む人によると、爆発後に黒煙が空高く立ち昇るのを見て、住民はしばらくパニックになったという。しかし、その後、黒煙の色が薄くなり、落ち着いたという。また、構内にいてちょうど休み時間に爆発音を聞いたという作業員によると、爆発とともに振動を感じたいう。

■ アスファルト・タンクはメンテナンスのために内部の油抜き・清掃工事期間中だった。タンク内のアスファルトのレベルは30cm程度だったとみられる。発災タンクは製油所の中央にある比較的小さいタンクである。

■ 事故に伴う死傷者は報告されていない。
 
■ 火災は消火泡が放射され、午後2時頃に消すことができた。
 火災は延焼することなく、製油所の操業に影響を及ぼすことはなかった。

被 害
■ アスファルト・タンク1基が爆発・火災で損壊した。被災の程度や状況は不詳である。

■ 発災に伴う負傷者は無かった。

< 事故の原因 >
■ 原因は分かっておらず、調査中である。

< 対 応 >
■ プルタミナ社は、事故による製油所の操業に影響はないと発表した。 

補足
■ 「インドネシア」(Indonesia)は、正式にはインドネシア共和国で、東南アジア南部に位置する共和制国家で、人口約2億4,700万人の国である。首都はジャワ島にあるジャカルタである。
 「チラチャップ」(Cilacap)は、ジャワ島の中央ジャワにあり、人口約68,000人の都市である。
ンドネシア  (写真はRin1214.blogspot.jpから引用)
■ 「プルタミナ社」(PT Pertamina)は、1957年に設立され、インドネシア政府が株式を所有する国有の石油・天然ガス会社である。国内に6箇所の製油所を持ち、5,000箇所以上のガソリンスタンドを有している。
 チラチャップには、「プルタミナ・リファイナリー・ユニットⅣチラチャップ」(Pertamina Refinery Unit Ⅳ Cilacap)と呼ばれる精製能力388,000バレル/日のチラチャップ製油所がある。製油所内における発災タンクの場所をグーグルマップで調べたが、情報が乏しく、確認することができなかった。
プルタミナ社のチラチャップ製油所  (写真はBeritadaerah.co.id から引用)
■ 発災タンクは容量1,500KLのアスファルト・タンクであるので、内部加熱器付きのコーンルーフ式タンクとみられる。メディアが伝える直径×高さの情報は、8m×16mおよび6m×16.5mの二つがあるが、容量は500~800KL程度となり、 1,500KLと合わない。(1,500KLであれば、直径11m×高さ16mクラスになる)
 また、タンク内に残っていたアスファルトの量は、メディアによって3cm、35cm、66.7cmとかなり違っている。 判断できる情報はないが、本文では、中間の30cm程度とした。

■ アスファルトタンクの事故は毎年起こっており、最近の事例はつぎのとおりである。
 ② 2006年5月、「日本の東亜石油京浜製油所におけるアスファルトタンクの爆発事故」
 ③ 2009年9月、「ニュージーランドのフルトンホーガン社のアスファルトタンク爆発による溶接士の死亡事故」
 ④ 2010年12月、「カナダのポートスタンレーにあるマックアスファルト・インダストリー社のアスファルトタンク破損による漏洩事故」

所 感
■ アスファルトタンクにおいて注意すべきことはつぎのとおりである
   ① 水による突沸
   ② 軽質油留分の混入
   ③ 運転温度の上げ過ぎ
   ④ 屋根部裏面の硫化鉄の生成
 今回の事故は複雑な要因によるものでなく、アスファルトタンクで注意すべき基本事項について危険予知が不足していたことで起ったものと思われる。タンクはメンテナンスのため、タンク内液を抜き、内部の清掃準備にあった際に発生したとみられる。従って、事故の要因としては、アスファルトの流動性をよくするため軽質油を混合し、内部加熱器で加温して温度を上げ過ぎ、タンク内に可燃性混合気が形成して、静電気などの着火源で爆発したことが考えられる。 


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
    ・Af.Reuters.com,  Pertamina Says Fire Extinguished at Cilacap Refinery,  October 05,  2016 
  ・En.sindonews.com,  Cilacap Pertamina Refinery Explodes,  October 05,  2016
  ・Mrcplast.com, Fire Extinguished at Cilacap Refinery of Pertamina,  October 06,  2016  
  ・Kebumenekspres.com ,  Kilang Minyak Pertamina Cilacap Terbakar,  October 05,  2016
    ・Bisnis.liputan6.com, PertaminaApi Sudah PadamTak Ada Korb Akibat Tangki Terbakar, October 05, 2016 
    ・Gtra.com, Pertamina Jelaskan Kronologi Kebakaran Kilang Cilacap,  October 05,  2016



 後 記: 最近、ブログに取り上げている事故をみると、中東など初めての国が多いですね。いわゆる開発途上国のインフラ(ここでは貯蔵タンクが対象)が整備されてきたので、事故が起こるようになったのでしょうか。もうひとつ感じるのは、事故を伝えるメディアが増えてきたことです。以前はローカルな話として海外に伝わることはなかったのが、今はインターネットで地球の裏側にすぐ情報が流れる時代になったからでしょうね。今回のインドネシアも初めての紹介です。ただ、プルタミナのチラチャップ製油所では、2011年にタンク火災事故が起こっています。当時はブログを始めたばかりで、事故情報をキャッチするアンテナが狭かったですね。

2016年10月18日火曜日

イランでサイバー攻撃が疑われる中、精油所でタンク火災

今回は、2016年10月7日(金)、イランのセムナーン州シャーロードにあるピルージ・オイル&ガス・リファイナリー社の精油施設で石油貯蔵タンク1基が爆発し、火災となり、4名の負傷者が発生した事例を紹介します。
            セムナーン州シャーロード市付近 (写真はGoogle Mapから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、イランのセムナーン州(Semnan)シャーロード(Shahroud)にあるピルージ・オイル&ガス・リファイナリー社(Piroozi Oil & Gas Refinery Co.)の施設である。シャールードの施設は、イラン首都のテヘランから東へ約400km離れたところにある。

■ 施設は、天然ガスのコンデンセートや超軽質原油を原料にしてガソリンとディーゼル燃料を生産する精油所で、2016年3月に完成したばかりである。発災があったのは、施設内の石油貯蔵タンクである。

< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2016年10月7日(金)午前2時30分頃、ピルージ・オイル&ガス・リファイナリー社の施設の石油貯蔵タンクの1基で爆発があり、火災が発生した。

■ 発災に伴い、シャーロード消防署が出動した。その後、バスターム消防署とダームガーン消防署が救援で出動し、消火活動を行った結果、5時間後に火は消えた。消防隊の隊長によると、リファイナリーには5基の貯蔵タンクがあったが、ほかのタンクに延焼する前に火災を消すことができたという。

■ 事故に伴ってリファイナリー従業員4名が負傷した。2名は火傷で、2名は器官損傷で、いずれも救急車でシャールード市内の病院に搬送され、治療を受けた。うち、2名は治療後、退院した。

■ 過去6か月の間、イランの石油、天然ガス、石油化学の施設において同じような悩ましい事故がほぼ12日ごとに起こっており、今回の火災はもっとも新しい事故である。この7月には、フージスタン州のボウアリ・シーナ石油化学コンビナートで大規模な火災が発生し、鎮火までに3日間かかり、9名の負傷者が出た。また、9月には、ブーシェル州の石油化学工場で火災が起こり、4名の負傷者が出ている。さらに、2週間ほど前には、負傷者は出なかったが、ケルマーンシャー州のビスツーン石油化学工場で火災があった。

被 害
■ 施設の石油貯蔵タンク1基が爆発・火災で被災した。このほか、精製施設の一部が損傷を受けたとみられるが、被災の範囲や程度はわかっていない。

■ 火災によって80,000~100,000 L(80~100KL)の石油製品が焼失した。
  
■ 事故に伴い、負傷者が4名発生した。

< 事故の原因 >
■ 事故の原因は調査中である。
 当局は、破壊活動や調整攻撃(コーディネイテッド・アタック)の可能性を否定した。

■ 過去6か月の間、イランの石油、天然ガス、石油化学の施設において同じような事故がほぼ12日ごとに起こっているが、AP通信は、9月22日(木)、一連の火災事故はイランの石油施設へのサイバー攻撃による可能性があると、つぎのように報じている。
 ● イランの石油化学工場・施設で起った一連の火災事故は、ハッキングが潜在的な役割を担っているという疑惑が浮上している。イラン当局によると、事故のあった施設のいくつかでは、ウィリスに感染していた設備があったという。
 ● イラン政府は、正式には、ここ3か月で起った6件の火災事故がサイバー攻撃の結果によるものでないと発表している。しかし、スタックスネット・ウィリスによってウラン濃縮設備の千台もの遠心分離機が稼働停止させられたことが分かった後、イランのインフラが標的にされて感染した施設に対して政府が対応をとってきたことは明白である。

 ● サイバー破壊活動に対するイラン軍の担当部署の長であるジャラリ大将は、当初、火災事故の原因がハッキングによるものではないかということに対して否定的な態度だった。しかし、8月27日、ジャラリ大将は、イランの石油化学工業がサイバー攻撃の標的にされていることを認めた。問題は施設のために輸入して取付けた部品にあるという。ジャラリ大将は、「ウィリスは石油化学コンビナートを汚染していた。ウィリスによる正規でない指令が危険に陥れる原因になりうる」と語っている。 
 ● 感染していたにも関わらず、サイバー攻撃で火災や爆発に至らすことはできなかったと、ジャラリ大将は述べ、防衛策は着実に進行中だと付け加えた。しかし、ジャラリ大将のコメントに曖昧さがある以上に、実際にプラントを感染させたものが何であるかがはっきりしていない。つぎつぎと起こる火災の事例は、イランが標的になっているのではないかという疑念を起こさせる。

 ● 高度な制御装置を長年使用しているユーティリティ供給会社や石油工業界は、ハッカーに感染しやすい状況だったといえる。というのも、これらの業界では、当初、インターネットに接続されるということを想定していなかったし、Eメールや小型パソコンのような汎用的なもののセキュリティに気をつかうことがなかった。
 ● 一方、ハッカー集団は産業用の制御システムを標的にすることを増やしてきているように見える。米国国内では、このようなサイバー攻撃を取扱う国土安全保障センターが対応した事案は、2014年の245件に対して2015年が295件と増えている。今や、サイバー攻撃は、情報を盗むということでなく、国を停止して壊すというものになってきている。

< 対 応 >
■ 発災に伴い、出動した消防士は40名だった。

■ イランのパッシブ防衛機構(受動防衛組織)のジャラリ長官は、最近、アフヴァーズ、マースハールなどの都市は、このような事故を防ぐため新しい三層セキュリティ・システムを導入する予定だと語っている。

補 足
■ 「イラン」(Iran)は、正式にはイラン・イスラム共和国で、西アジア・中東のイスラム共和制国家である。世界有数の石油産出国であり、人口は約7,500万人で、首都はテヘランである。
 「シャーロード」(Shahroud)は、 イラン北部に位置するセムナーン州(Semnan)シャールード郡の郡都で、人口約15万人の都市である。
          イラン北部のシャーロード(Shahroud)周辺 (写真はGoogle Mapから引用)
■ 「ピルージ・オイル&ガス・リファイナリー社」(Piroozi Oil & Gas Refinery Co.)は、イランのシャールードにある精油所で、 2016年3月に完成し、天然ガスのコンデンセートや超軽質原油を原料にしてガソリンとディーゼル燃料を生産しているとみられる。しかし、会社や施設の詳細は不詳である。イランには、ピルージ・リファイナリー社(Piroozi Refinery Co.)という潤滑油の精製会社があり、系列会社かもしれないが、同社のウィブサイトに系列会社に関する情報は記載されておらず、関係は分からない。
 グーグルマップでは、シャーロードに貯蔵タンクのある石油施設が一箇所見られる。しかし、これがピルージ・オイル&ガス・リファイナリー社の精油所かどうか判断がつかない。
       シャールードにある石油施設  (写真はGoogle Mapから引用)
■ 「スタックスネット・ウィリス」(Stuxnet Virus)は、2010年に発見された標的型攻撃を行うコンピュータ・ウィリス(マルウェア)である。イランの原子力施設の制御システムをダウンさせたことで知られる。産業用機器の制御システムを攻撃対象とし、物理的な機器破損・稼動停止を引き起こした初めてのウィリス(マルウェア)であると言われており、イランの原子力施設における1000台近くの遠心分離機がスタックスネットの侵入を受けて稼動停止に陥った。感染に地域的な偏りがあるといわれ、アジア・欧州を中心に報告例があり、6割弱がイランに集中している。
 インターネット経由で伝播し、接続されたコンピュータに感染して、潜伏する。また、ネットワーク経由でなくとも、感染したコンピュータに接続したUSBメモリーを経由しても発症することから、インターネットから隔絶されたネットワークに対しても侵入可能である。Microsoft Windowsの脆弱性を利用しており、Windows Explorerで表示しただけで感染する。スタックスネットは、米国国家安全保障局とイスラエル軍の情報機関が共同で開発したといわれている。
 (スタックスネットについては「新しいタイプの攻撃“Stuxnet:スタックスネット”って何だ?J-Net 中小企業ビジネス支援サイト)を参照)

所 感
■ 発災は午前2時30分頃と真夜中で、従業員4名が負傷しているので、貯蔵タンクの運転に異常があり、現場に駆けつけ、点検中に爆発が起ったものと思われる。貯蔵タンクについては油種や大きさなど主要な仕様も分かっていないので、これ以上の推測はできない。

■ 本事例がサイバー攻撃だったかどうかは分からないが、イランでは石油関連施設で火災事故が続いており、サイバー攻撃への疑念が膨らんでいるという。イランは原子力施設の制御システムをサイバー攻撃でダウンさせられた事例があり、サイバー攻撃に関して関心が高く、また防衛策の開発も進んでいるとみられる。この点、日本はサイバー攻撃への対応が遅れているといわれている。本事例は、自らの設備(制御システム)がサイバー攻撃に対する防衛ができているかどうか見極める必要性を問いかける事例だといえる。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
    ・En.trend.az, Fire at Iran’s Oil Facilities: 100,000 Liters Wasted,  October 07,  2016 
  ・217.25.54.55,   Four Injured in Shahroud Oil, Gas Refinery Fire,  October 07,  2016
  ・Financialtribune.com, Fire Put Out at Refinery in Semnan,  October 08,  2016  
  ・Egyptoil-gas.com,  Iran Lost 100,000L of Fuel in Refinery Fire,  October 09,  2016
    ・Bigstory.ap.org, Iran Oil Industry Fires, Blasts Raise Suspicions of Hacking,  September 22,  2016



後 記: 今回の事例は発災タンクの情報が乏しく、まとめるのをやめようと思っていたのですが、サイバー攻撃の疑念が残るという話があり、調べてみることとしました。イランの核施設で遠心分離機の稼働を停止させたサイバー攻撃があった話は聞いていましたが、最近のイランにおける石油施設の火災事故がサイバー攻撃ではないかという疑念があるとは思っていませんでした。このブログで紹介した2016年7月の「イランの石油化学工場でまた貯蔵タンク火災」では、原因のひとつとして「電気系統の不具合で出火」が挙げられていますが、これなどが疑われているようです。機器の運転を混乱させるだけでなく、火災や爆発に至らすようにプログラム(マルウェア)を組んでいたのであれば、相当な技術レベルです。にわかに信じることができないという気持ちが本当のところです。

2016年10月11日火曜日

中国河北省の原油備蓄タンク基地で防災訓練

  今回は、2016年3月31日(木)、中国河北省唐人市の曹妃甸工業区にある中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄タンク基地で行われた防災訓練について紹介します。
写真Ts.hebnews.cn から引用)
< 防災訓練のあった施設の概要 >
■ 防災訓練があったのは、中国河北省(ホーペイ/かほく省)唐人市(タンシャン/とうざん市)の曹妃甸(カォフェイディエン/そうひてん)工業区にある中国石油化工(Sinopec)系の中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄タンク基地である。

■ 曹妃甸工業区にある原油備蓄基地は、容量10万KLの浮き屋根式タンクが32基あり、総容量320万KLの貯蔵タンク施設である。この基地は河北省の中で最も大きい石油貯蔵タンクの施設である。
河北省唐人市の曹妃甸工業区付近 (訓練のあったのは右上のタンク群)
(写真はGoogleMapから引用)
曹妃甸にある中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄基地   
(写真はBlog.sina.com.cnから引用)
< 訓練の状況 >
■ 2016年3月31日(木)、河北省消防本部が大規模原油タンク施設を対象にした防災訓練を曹妃甸工業区にある原油備蓄基地で行った。

■ 事故想定は、容量10万KLの原油タンクに落雷があり、浮き屋根シール部で着火し、火災が発生したというものである。発災に伴い隣接タンクへの影響のほか、地元の生活地区への影響があるという想定で進められた。

■ 訓練は、中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄基地から事故発生の通報があり、唐人市消防署の出動によって始まった。唐人市消防署のほか、石家荘、張家口、奏皇島、滄州の各市消防署からの増援があった。このほか、唐人市公安局および市役所が訓練に参加した。

■ 訓練には、総員350名、車両56台が参加した。消火活動に使用されたのは、大型高性能消防車、長距離送水装置、大型泡モニター、消防用無人偵察機システムなどである。
         曹妃甸の原油備蓄基地で行われた防災訓練  (写真はChinanews.comから引用)
           曹妃甸の原油備蓄基地で行われた防災訓練  (写真はChinanews.comから引用)
曹妃甸にある中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄基地   
(写真はBlog.sina.com.cnから引用)
補 足
   中国河北省 (図はPref.nagano.lg.jp.から引用)
■ 「河北省」(ホーペイ/かほく省)は、中国(中華人民共和国)東部にある行政区で、河北とは黄河の北にあることに由来する。人口約6,800万人で、省都は石家荘である。
 「唐人市」(タンシャン/とうざん市)は河北省の東部に位置する地級市で、市区人口は約300万人である。
 「曹妃甸(カォフェイディエン/そうひてん)工業区」は、中国国家重点プロジェクトとして唐人市沿海地区において港区建設と工業区の開発が行われた。曹妃甸は渤海湾の最深部に隣接し、水深36mほどの港として最適な条件を有している。30万トン級のオイルタンカーが直接接岸できる原油埠頭が先行して建設され、同時に原油備蓄タンク基地が建設された。

■ 防災訓練のあった唐人市曹妃甸工業区にある原油備蓄タンク基地は、中国石油化工(Sinopec)によって計画され、中石化集団石油商業備蓄公司(中石化集团石油商业储备公司の唐山曹妃甸分公司)が建設・運営している。容量10万KLの浮き屋根式タンクが32基あり、総容量320万KLの貯蔵タンク施設である。グーグルマップによると、タンク直径は約78mであるので、高さ(液面)は約21mである。唐人市には、同じく港地区に中国石油化工(Sinopec)の原油備蓄タンク基地が建設されている。タンク基数は、以前は8基だったが、グーグルマップによると、さらに8基が増設中である。タンク直径は約78mと防災訓練のあった基地のタンクと同仕様だとみられ、10万KL×16基で総容量160万KLとなる。
曹妃甸にある中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄基地   
(写真はGoogleMapから引用)
唐人市にある別な中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄基地   
(写真はGoogleMapから引用)
唐人市にある別な中石化集団石油商業備蓄公司の原油備蓄タンク基地   
(写真Blog.sina.com.cn から引用
■ 中国の「国家原油備蓄基地」の第1期建設は、遼寧省大連(10万KL×30基)、山東省青島(10万KL×32基)、浙江省舟山(10万KL×30基)、浙江省鎮海(10万KL×16基)の4箇所から始まった。その後、原油だけでなく石油製品を含めた「戦略石油備蓄」と称する計画が行われ、第2期として浙江省舟山(10万KL×20基の増設)と浙江省鎮海(10万KL×36基増設)で増設されたほか、河北省唐人、甘粛省蘭州、新疆ウイグル自治区ピチャン、天津市などでタンク建設が始まっている。さらに、第3期計画として海南省洋浦、河北省曹妃甸などで計画されているといわれ、2020年までに完成させる計画だという。

 しかし、備蓄を含めて石油の戦略投資計画と実行は「中国三大国有石油会社」(中国石油天然ガス集団公司:CNPC=ペトロチャイナ、中国石油化工集団公司:Sinopec、中国海洋石油総公司:CNOOC)が行っており、これらの国有会社からの発表がなければ、実態の把握は難しいといわれている。今回の防災訓練に伴い、調べてみると、第3期とみられる河北省曹妃甸の原油備蓄タンク基地(10万KL×32基)は完成しており、第2期と思われる河北省唐人の原油備蓄タンク基地は10万KL×8基が完成し、さらに8基が建設中である。河北省唐人市合計では480万KLになるが、同市によると、将来的には、1500万KLの戦略石油備蓄基地になる計画だという。
                  中国の戦略石油備蓄基地   (図はKyoto-seikei.comから引用)
■ 「消防用無人偵察機」とは、無人小型ヘリコプターやドローンを使った監視装置である。中国では、2011年頃には無人小型ヘリコプターの消防用無人偵察機が使用されている。最近では、圧倒的にドローン型のものが多い。
中国の消防用無人偵察機の例 
(写真はYyanyh.blog.163.com Gs.people.com.cn News.ifeng.comから引用)
 日本でも、総務省消防庁が導入を検討し、実際に千葉市とさいたま市で配備されたほか、田辺市でも導入されている。
     さいたま市消防局および千葉市消防局の配備例
     和歌山県田辺市での導入例

所 感
■ 中国の石油貯蔵タンク施設における防災訓練の概況が理解できる。主な特記事項はつぎのとおりである。
 ● 大容量泡放射砲システムが使用されている。
     中国でどの程度普及しているのか分からないが、大型石油タンクでは、大容量泡放射砲
    システムが必要と認識されているとみられる。訓練時の写真によると、複数台が使用されて
    いる。(日本の法令でいえば、直径78mのタンクでは50,000L/minの放射能力を必要とし、
    複数台で対応するのがよいと思われる)
 ● 消防用無人偵察機(ドローン)が使用されている。
     ドローンによって上空から観察することについては、日本より意識が高いとみられる。実際
    に多くの消防署で配備され、活用されていると思われる。
 ● 原油備蓄基地の貯蔵タンクには、側板に散水設備が設置されている。
     貯蔵タンクの防火対策にかなり配慮されており、固定泡消火設備のほか、側板に固定散水
    設備を設置している。これは曹妃甸だけでなく、鎮海など第1期建設で建てられた貯蔵タンク
    に共通している。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
  ・Ts.hebnews.cn,  全省最大规模灭火演练在曹妃甸举行(图),  April 08,  2016 
  ・Chinanews.com,  河北消防“水龙”缚百万吨原油罐“火灾”() ,   April 08,  2016


後 記: 今回の情報は別な事を調べているときに、たまたま大容量泡放射砲の画像が目についた情報から調べ始めたものです。情報源は中国国内メディアの簡体字によるものですが、漢字ですので、大方は理解でき、よく分からないところは簡体字を従来の漢字に直したり、インターネットの翻訳機能を活用しました。中国の戦略石油備蓄にも興味がありましたので、この点も調べてみました。(調べた時間からいえば、こちらの方が掛かっています) およそ10年ほど前、中国の国家石油備蓄がゼロの時代には、日本の国家石油備蓄政策に感心していたようですが、その後、急速に拡充しています。タンク建設のスピードは極めて速いというのが特徴です。さあ、これがいつまで続くでしょうか。

2016年10月4日火曜日

サウジアラビアの石油ターミナルで火災、8名負傷

 今回は、2016年9月20日(火)、サウジアラビアのラスタヌラにあるサウジ・アラムコ社の石油ターミナル施設で発生した火災事故を紹介します。
ラスタヌラのサウジ・アラムコ石油ターミナル   (写真はGoogle Mapから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、サウジアラビア(Saudi Arabia)のラスタヌラ(Ras Tanura)にあるサウジ・アラムコ社(Saudi Aramco)の石油ターミナル施設である。

■ サウジ・アラムコ社はサウジアラビアの国営石油会社で、ペルシャ湾沿いのラスタヌラには国内最大の精製能力55万バレル/日の製油所とともに輸出用の石油ターミナルを保有し、国内外へ原油および石油製品の供給を行っている。製油所は輸出用のナフサ、燃料油、中間製品を生産しており、今年12月に定期修理に入る予定である。
          ラスタヌラのサウジ・アラムコ石油ターミナル   (写真はGoogle Mapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2016年9月20日(火)午前9時頃、石油ターミナル施設の北桟橋で火災が発生した。

■ 発災に伴い、自衛消防隊が出動して対応した。火災の規模は比較的小さく、消防隊によって完全に制圧された。

■ 火災発生で施設にいた作業員は避難した。しかし、火災によって8名の負傷者が出た。6名は請負会社の作業員で、2名はサウジ・アラムコ社の従業員だった。負傷者は医師による治療を受けたとしているが、サウジ・アラムコ社は負傷の程度や状況について詳細を明らかにしていない。

■ 貿易関係者によると、発災のあった桟橋は、今年5月から6ヵ月の予定でメンテナンスのために停止中だったという。

被 害
■ 火災によって8名の作業員が負傷した。負傷の程度や状況は不詳である。

■ 桟橋設備が火災によって損傷を受けていると思われるが、状況は不詳である。

< 事故の原因 >
■ 原因は分かっておらず、調査中である。

< 対 応 >
■ サウジ・アラムコ社は、事故による石油および天然ガス施設の操業に影響はないと発表した。 
              ラスタヌラ石油ターミナルの北桟橋付近   (写真はGoogle Mapから引用)
                サウジ・アラムコの貯蔵タンクの例  (写真はEnglish.alarabiya.net,から引用)
補 足
■ 「サウジアラビア」(Saudi Arabia)は、正式にはサウジアラビア王国で、中東・西アジアに位置し、サウード家を国王にした絶対君主制国家で、人口約3,000万人の国である。世界一の原油埋蔵量をもち、世界中に輸出している。
 「ラスタヌラ」(Ras Tanura)は、サウジアラビア東部州のペルシャ湾に面しており、人口約74,000人の港湾都市である。
             サウジアラビアの原油・天然ガス施設の位置   (図はPecj.or.j pから引用)
■ 「サウジ・アラムコ」(Saudi Aramco)は、サウジアラビアの国営石油会社で、保有原油埋蔵量、原油生産量、原油輸出量は世界最大である。設立は1933年といわれるが、これは1933年に米国スタンダード・オイル・オブ・カリフォルニア(現在のシェブロン)の子会社であるカリフォルニア・アラビアン・スタンダード・オイル・カンパニー(CASOC=カソック)が同国の石油利権を獲得した時に始まる。その後、1944年にCASOCはアラビアン・アメリカン・オイル・カンパニー(Aramco)、すなわちアラムコに変更した。さらに、1988年に完全国有化が進められ、国営石油会社「サウジ・アラムコ」となった。サウジアラビアの原油・天然ガス事業はサウジ・アラムコが独占して運営している。
 ラスタヌラには、輸出用の石油ターミナルを保有しており、一日当たり340万バレルの取扱い能力があり、サウジアラビアの石油輸出のほとんどを取り扱っている。陸上側には2つのT桟橋があるほか、沖合に複数の大型タンカーを着桟できるシーアイランド桟橋があり、合計20の積込み埠頭を保有している。港は1年中休みなく、毎日24時間運営している。
 サウジ・アラムコはテロを憂慮しており、この対策のひとつとして5,000名のガードマンを直接雇用している。さらに、サウジ政府は国家警備隊と軍の治安部隊合わせて約20,000名を配備しているという。
                                ラスタヌラのシーアイランド桟橋        (写真はOocities.org から引用)
所 感
■ 今回の事故は、①桟橋で起こっている、②桟橋はメンテナンス中だった、③請負会社の人とサウジ・アラムコの人が8名負傷している、④火災が発生しているという状況から推測すると、
  ● 発災は配管と思われる。
  ● サウジ・アラムコ立会のもとに行う工事時に起こった。
  ● 配管内部には油が入っていた。
  ● 溶接・溶接などの火気工事だった。
  ● 火災は退避する時間がないほど急に起こった。
 このような要因の中で、運転または工事上の①ルールを正しく守る、②危険予知(KY)を活発にする、③報連相により情報を共有化する、の基本がどこかで抜けたものと思われる。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
    ・Saudiaraco.com,  Saudi Aramco Contains Minor Fire at Ras Tanura,  September 20,  2016 
  ・Gulfbusiness.com,  Fire at Saudi Aramco’s Ras Tanura Terminal Injures Eight,  September 20,  2016
  ・English.alarabiya.net, Saudi Aramco Fire Injures 8 Workers; Operations Not Impacted,  September 20,  2016  
  ・Arabianbusiness.com,  Saudi Aramco Says Eight Injured in Oil Terminal Blaze,  September 20,  2016
    ・Bloomberg.com, Saudi Aramco Fire Injures 8 Workers, Operations Not Impacted,  September 20,  2016
    ・Arabianindustry.com,  Aramco Contains Fire at Ras Tanura Oil Terminal,  September 21,  2016
    ・English.aawsat.com,  Aramco: Ras Tanura Fire Did Not Affect Export Operations,  September 21,  2016



後 記: 今回の事例は過去に紹介したことのないサウジアラビアの事故だったので、調べ始めました。発災は貯蔵タンクではないようでしたが、世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアの石油ターミナルに興味がありましたので、まとめることにしました。サウジ・アラムコのウェブサイトのニュース欄に事故のことが掲載されており、もう少し詳しい状況がわかるかと思いましたが、結局はブログでまとめた程度のことしかわかりませんでした。
 ところで、サウジアラビア軍が守るべきものの優先順位は第一に「イスラム教義」、第二に「主要なモスク」、第三が「社会と祖国」であり、「国民」の防衛は含まれていないということです。石油施設の警備に軍が配備されており、今回の事故のように負傷者が出ても、操業に影響は無いというクールというか冷たい声明が出される背景がわかります。
 蛇足ついでに、先日の国会所信表明での「海上保安庁」、「警察」、「自衛隊」をたたえる演説が波紋を呼んでいますが、地震などの緊急事態時の隊員の苦労を思い浮かべれば、「消防隊および消防団員」が抜けていますよね。明らかに武器を携えた軍や準軍事組織しか頭にないということでしょう。このブログでは、当然ですが、火災と戦う消防隊(FireFighter)の人たちを常に念頭にまとめています。