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2017年5月26日金曜日

豪州の自動車解体施設でLPG燃料タンクによる火災

 今回は、2017年3月2日、豪州南オーストラリア州アデレード市にある自動車解体施設でLPG自動車用燃料タンクの爆発をきっかけに大きな火災になった事例を紹介します。
(写真はNews.com.au から引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、豪州南オーストラリア州の州都アデレード市(Adelaide)ウィングフィールド(Wingfield)の工業団地にある施設である。施設は自動車解体のリサイクル会社で、家族経営の会社である。

■ 発災の起点になったのは、液化石油ガス(LPG)タンクであるが、タンクはLPG自動車用の燃料タンクとみられ、施設内に複数のタンクがあった。
アデレード市ウィングフィールド付近 (矢印が発災場所)
(写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年3月2日(木)午前9時頃、施設で爆発があり、続いて火災が起った。 火災の煙はアデレード市街地からも見え、臭いも感じられた。

■ 発災に伴い、メトロポリタン消防庁の消防隊が現場に出動した。消防隊が到着したとき、大きな炎が上がっており、現場には、解体用の廃車が120台以上あった。

■ メトロポリタン消防庁によると、作業員が施設内にあった廃車を動かすため、解体用重機のエクスカべーターを使用しているときに事故が起きたという。火災が起った後も何度か爆発があった。

■ 爆発は自動車用のLPG燃料タンクとみられ、残っているLPGタンクが再び爆発する危険性があるため、消防隊は最初にタンクの上から冷却散水をかける防御的な戦術をとることとした。火災は午前10時過ぎには制圧下に入った。

■ 目撃者によると、火災になる前に爆発音を聞いたといい、「最初、爆発のような変な音が聞こえました。当初、火はそんなに大きなものではありませんでした。しかし、10分ほどの間に段々大きくなり、最後はものすごい火災になりました。危険を感じて、その場から逃げました。ちょっと怖かったですね」と語っている。

■ 警察は発災現場近くの道路を封鎖し、交通規制を行った。消防庁は火災の煙に毒性を含んでいることを懸念して、発災現場から南および南西地区の住民に対して、煙が消えるまで家のすべての窓とドアを閉め、車の窓は巻き上げておくよう注意喚起を行った。

■ この事故に伴い、ファイヤーボール発生時にひとりが軽度の火傷を負い、病院に搬送され治療を受けた。このほかにケガをした人はいなかった。火傷を負ったのは、エクスカべーターを運転していた作業員とみられる。

■ 火災は3月2日(木)午前12時過ぎにほぼ消されたが、数時間はくすぶり続けるとみられる。
(写真はFiveaa.com.au から引用)
(写真はFlashover.comから引用)
(写真はAbc.net.auから引用)
(写真は、左:Abc.net.au、 右:Fiveaa.com.auから引用)
被 害
■ 事故に伴い、火傷による負傷者が1名出た。

■ 住民への避難指示は出されなかったが、風下の地区には家の窓やドアを閉めておくよう注意喚起が出された。

■ 約120台の解体用の廃車が焼損した。 損害額は約50,000豪州ドル(約400万円)と推定されている。

< 事故の原因 >
■ 事故の原因は特定されていないが、自動車解体中にLPGタンクが引火・爆発したとみられる。

< 対 応 >
■ メトロポリタン消防庁は、消火活動のため、約70名の消防隊員と消防車14台のほか支援車両を出動させた。 
(写真はNews.com.auから引用)
(写真はFiveaa.com.auから引用)
(写真はFiveaa.com.auから引用)
補 足
豪州の各州の位置
(図は2m.biglobe.ne.jp から引用)
■ 「豪州」(オーストラリア)は、南半球に位置し、正式にはオーストラリア連邦で、人口約2,400万人の国である。オセアニアに属し、オーストラリア大陸本土、タスマニア島のほか多くの小島から成る。
 「南オーストラリア州」は、豪州の南部に位置する州で、人口約170万人の州である。
 「アデレード市」(Adelaide)は、南オーストラリア州の州都で、人口約132万人の都市である。
 「ウィングフィールド」(Wingfield)はアデレード市の北部に位置する地区である。
 
■ LPG自動車は燃料をLPG(液化石油ガス)とする自動車で、日本でもタクシーなどに使用されていた。豪州でも、2000年代初めに税制優遇措置がとられ、かなり普及したが、優遇措置が無くなり、保有台数は少なくなっているとみられる。豪州では、自動車を動かなくなるまで乗り潰す傾向があり、現在、多くの廃車が出てきているものと思われる。

■ 「エクスカべーター」(Excavator)は、本来、掘削用重機であるが、解体工事分野でも押しつぶしなどの作業に使用している。また、解体専用の機種も製造されている。今回、どのような機種が使用されていたかは分からない。
エクスカべーターの例
(写真は、左: Incredible-adventures.com、 右:Sasfork.comから引用)
所 感
■ 廃車になった自動車のLPG燃料タンクが関与したものとみられる。解体作業がどのような工程をとられているか分からないが、かなり荒い作業を行っていたという印象をもつ。しかし、燃料油の場合、燃料タンクからの油の抜き取りは比較的容易であるのに対して、 LPG燃料タンクでは残量が分かりにくい上にLPGの抜き取り(大気放散でなく)はむずかしい。この観点からすれば、LPG自動車の解体作業における盲点だったように思う。

■ 消火作業はなかなか判断がむずかしかったと思われる。自動車の内装は燃えやすいものが多く、一旦火がつけば、積み上げられた車によって短時間で大きな火災になることは想像がつくし、さらにLPG燃料タンクがどのくらいの数あるかわからない状況から、当初は火災拡大を防ぐ冷却を主とした防御的消火戦略がとられたのだろう。その後、爆発がおさまった段階で積極的消火戦略がとられたと思う。これは妥当な判断だったと思う。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Hazmatnation.com,  Industrial Yard in Australia Experiences Multiple LPG Tank Fires,  March  02,  2017   
    ・Adelaidenow.com.au,  Firefighters Have Extinguished a Massive Fire in Wingfield Following LPG Tank Explosion,  March  02,  2017   
  ・ Adelaidenow.com.au,  Fire Crews Have Contained the Wingfield Blaze  Following LPG Tank Explosion,  March  02,  2017  
    ・Abc.net.au, Wingfield Fire Sends Thick Smoke over Adelaide, As Worker Suffers Burns,  March  02,  2017
    ・Fiveaa.com.au, MFS Says Fire Has Been Contained, But Is Expected to Continue Burning for Hours yet,  March  02,  2017
    ・Au.news.yahoo.com, Tower of Smoke over Adelaide as 100 Cars Go up in Flames at Wingfield,  March  02,  2017
    ・Flashover.com.au, Photo & Video: Over 120 Cars Alight in Wingfield, Adelaide,  March  02,  2017



後 記: この事故情報に最初に接したとき、液化石油ガス貯蔵タンクの爆発・火災だと思いました。情報を集めてみると、どうもそうではなく、LPG自動車の燃料用タンクらしいということが分かり、一旦は情報紹介の対象から外しました。その後、貯蔵タンクの事故がない(情報を聞かない)ことから、少し異質ですが、今回の事例を紹介することとしました。改めて調べ直してみて一番難儀したのが、発災場所の特定です。発災地区の情報や発災写真があり、グーグルマップで調べたら分かるだろうと思っていましたが、近くに別な自動車解体施設らしいところがあり、明らかにすることができませんでした。さらに調査してみたら、空から撮影した動画があり、これでやっと特定することができました。

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