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2024年4月16日火曜日

愛知県の武豊火力発電所でバイオマス燃料が爆発・火災(調査)

 今回は、愛知県武豊町にあるJERAパワー武豊合同会社の武豊火力発電所で2024131日に起きた爆発事故について現場調査が行われ、2024321日(木)にその内容が報告されたので、事故経緯とともに紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、愛知県武豊町(たけとよ・ちょう)にあるJERAパワー武豊合同会社の武豊火力発電所である。武豊火力発電所は、東京電力と中部電力が出資している電力会社「JERA」に電力を供給している石炭火力発電所で、2022年からバイオマス燃料として使われる木質ペレットも燃料として取り入れ始めた。

■ 事故があったのは、発電事業者であるJERAに電力を供給している設備所有者のJERAパワー武豊合同会社が所有している武豊火力発電所5号機である。火力発電所で使う燃料(石炭・木質バイオマス)を貯蔵するバンカー設備である。施設内には6つのバンカーがあり、このうちのひとつを木質ペレット専用に割り当てている。事故があったのは、木質ペレット専用のバンカーで、当時、このバンカーには300トン程度の木質ペレットが保管されていた。


<
事故の状況および影響
>

事故の発生

■ 2024131日(水)午後3時頃、武豊火力発電所で爆発が起きた。爆発のあと建物から炎と黒い煙があがった。

■ 住民から「爆発音があり、黒煙が上がっている」と消防に通報があり、消防隊が出動した。消防車など16台が出動した。

■ 近くの住民のひとりは、「午後3時すぎ、家にいるときにドーンという音がして家が揺れて、ベランダから外に出たら火力発電所が黒い煙を上げながら燃えていました。その後、『石油コンビナートで火災が発生しました』という町内放送も聞こえ、消防車がたくさん集まっています」と語った。

■ 武豊町は、発電所での爆発と火災を受け、町内に設置されている防災行政無線を通じて住民に対し、「煙が回る可能性があるので、ドアや窓を閉めてください」と注意を呼びかけた。 

■ 発電所の5号機が運転していたが、火災を受けて、午後329分に運転を停止した。武豊火力発電所によると、中部電力管内の電力の供給について「現時点では安定供給できると考えている」と述べた。  

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。当時、敷地内にいた職員ら約220人に怪我はなかった。

■ 武豊火力発電所を運営する㈱JERA社は、燃料の貯蔵設備が出火元とみられると発表した。火元は、燃料となる木質ペレットをためておく鋼製の円筒バンカー(直径10m×高さ35m)で、当時、内部には約300トンの木質ペレットが入っていた。バンカーについている温度センサーが通常20℃のところ、55℃まで上がっており、外壁の損傷もバンカー付近が最も大きかったという。

■ ユーチューブでは、事故を伝えるテレビの映像などが投稿されている。主な動画はつぎのとおり。

  Youtube「高さ76メートルのはるか上まで炎が 火力発電所が爆発した瞬間の映像 近くの住人「ガラス窓がガタガタ揺れた」 」2024/02/01)  

  ●Youtube「武豊火力発電所の火災はなぜ起こった? 専門家に聞く 「燃料自体は危険ではないが保管や運搬などの過程によって発熱の可能性」2024/02/02

  ●Youtube、「【火力発電所が爆発】瞬間映像火柱、黒煙、熱風も何が? 運営会社が「おわび」

2024/02/01)  

  ●Youtube、「全国で火災や発煙13『バイオマス発電所』でなぜ事故が相次ぐのか 専門家が指摘する可能性」2024/02/01

被 害

■ 火災によってバンカー設備を含む18階建て建屋の一部と燃料運搬用のベルトコンベヤーが損壊した。(バンカー囲い~中継タワーJT7の範囲で著しい損傷があった)

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。

■ 住民に対して、煙が回る可能性があるので、ドアや窓を閉めるよう、注意喚起が呼びかけられた。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因はバイオマス燃料による粉塵爆発とみられる。

 ● バイオマス燃料運搬中に、粉塵濃度の高いAバンカー投炭装置下部~バンカー内部で爆発が発生し、ベルトコンベヤー(BC9)~中継タワー(JT8)へ爆発が伝播した。

 ● 着火源は、投炭装置スクレーバー部の機械的摩擦(昇降台カバーとベルトの摩擦)による発熱とみられる。あるいは、燃料中の異物による部材への衝突着火の可能性もあり、引続き調査中である。

< 対 応 >

■ 発電所内の火災は、約5時間後に制圧され、131日(水)午後8時すぎに鎮火した。

■ 21日(木)午後240分頃、ベルトコンベヤー付近において再び出火していることが確認されたため、公設消防に通報され、消火活動が行われた。火災は午後330分過ぎに鎮火に至った。この再出火は1度目の火災で損傷したベルトコンベヤー内の木質燃料に残り火があり、それに引火したとみられる。

■ 木質バイオマス燃料を混焼する武豊火力発電所5号機は20228月に営業運転を開始したが、バイオマス燃料に起因する発煙事象が過去にも起こっており、監視や清掃を強化する取り組みを行ってきたという。同発電所では、20228月、9月、20241月にコンベヤーなどで発火の事故が起きたといい、今回の爆発・火災事故によってリスクが改めて浮き彫りとなった。

■ 有識者は、昨今、バイオマス発電での火災事故が目立ってきていると指摘し、再生可能エネルギー拡大のためには、バイオマス発電の安全対策を洗い出し、今後につなげていく必要があるという。

■ 木質ペレットなどのバイオマス燃料は、素材が木質であることから燃えやすい性質を持っているうえに、ペレット状なのでいったん燃え出すと、燃料全体の温度が上昇して鎮火が容易ではない特徴を持つ。特に輸入したバイオマス燃料については、国内の輸入審査が甘いことから、不純物を含んだ質の悪いバイオマス燃料をつかまされるケースも起きている。

 木質ペレットなどのバイオマス燃料は、経済産業省の固定価格買取制度(FIT)で使用燃料ごとに発電電力の買い上げ価格が設定されており、2022年に発覚したベトナムのバイオマス燃料輸出業者の不正では、FITにより年間100億~160億円前後のバイオマス電力事業者への過払いが発生していた可能性が指摘された。だが、経産省は十分な調査をしないまま済ませてきた。

■ 25日(月)、JERA社は火災原因を究明する事故調査委員会を設置したと発表した。委員会のメンバーは、委員長にJERA社の副社長、JERA社の4名、バイオマスに詳しい名古屋大の成瀬教授の5人で構成するほか、他にも社外からの人選を調整している。また、オブザーバーとして経済産業省中部近畿産業保安監督部が加わる。

■ 2024321日(木)、JERA社は、経済産業省で開催された「第20回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会 電気設備自然災害等対策ワーキンググループ」において131日に発生した武豊火力発電所における火災事故の調査状況を報告した。主な報告内容は、事故の概要(事故発生の時系列、火災による主要設備の損傷範囲)、武豊火力発電所における火災事故調査委員会による現在までの調査結果と推定原因、今後の調査内容・スケジュールである。 JERA社は、引き続き、武豊火力発電所における火災事故調査委員会において、火災事故の調査・分析にもとづく原因追究と再発防止を検討していくという。

■ 321日(木)に報告された調査に関する内容はつぎのとおりである。

 < 設備の概要 >

 ● 関係設備である運炭設備、バンカー囲い、投炭装置の概要を図に示す。

 < 設備の損傷状況と爆発の関係 >

 ● 最初の爆発は、構内監視カメラの映像によってAバンカー投炭装置付近で発生している。

 ● 爆発はベルトコンベヤーを伝播して、約1.6秒で中継タワーJT8へ到達した。その後、延焼し続け、約18分後に中継タワーJT7へ達した。

 ● 着火場所とみられるAバンカー投炭装置~バンカー内部には、Aバンカーの天板に膨らみがあるほか、投炭装置のBC9ABC9Bのケーシングに爆発による変形(膨らみ)があった。また、 BC9ABC9Bの投炭装置案内板が上方への浮き上がり(変形)があり、爆発は投炭装置下部で起きたとみられる。

 ● 着火源は、投炭装置のBC9Bの昇降台カバープレート部に変色がみられ、摩擦・発熱の可能性が考えられる。あるいは、燃料中の異物による部材への衝突着火の可能性もあり、引続き調査中である。






 < 爆発の推定原因 >

  ● 事故はバイオマス燃料による粉塵爆発とみられ、着火場所はAバンカー付近である。なお、バンカー囲い~中継タワーJT7の範囲以外の設備には著しい損傷は認められなかった。

  ● 事故は、投炭装置内部で粉塵濃度が爆発下限以上になり、着火源によって装置内部で爆発(一次爆発)が発生して、投炭装置外部に粉塵が飛散することで、バンカー囲い内や建屋内で爆発(二次爆発)が発生したと推定する。

  ● 粉塵爆発の過程はつぎのように推定する。

   ①閉空間であるバンカー囲い内やコンベヤー・中継建屋内において、投炭装置内やバイオマスバンカー内で可燃性粉塵が浮遊する閉空間が形成し、着火源によって引火して一次爆発が発生

   ②一次爆発によって装置内部で拡散・浮遊、さらに粉塵が装置外部に拡散・浮遊

   ③飛散した粉塵によって閉空間の粉塵濃度が上昇、爆発で発生した着火源で引火し、二次爆発が発生

 < 要因分析・評価結果 >

  ● 着火源に関する要因、粉塵源・粉塵飛散・浮遊に関する要因、粉塵以外の要因について要因分析を行い、その評価結果を図に示す。


 < 法令適合の状況 >

  ●関係法令と適合状況の確認を表に示す。







   < 今後の予定 >

  ● 今後の調査項目と調査内容は表に示す。

補 足

■ 「バイオマス発電所」は、植物などの生物資源(バイオマス)を燃料に使用しながら発電する施設で、植物は生育過程で二酸化炭素を吸収するため、発電プロセスでバイオマス燃料を燃焼したとしても、大気中の二酸化炭素は増えない、いわゆるカーボンニュートラルの持続可能な発電方法として、現在、各地に設置されている。

 バイオマス発電に関してこのブログでは、つぎのような事故を紹介した。

 ● 20192月、「山形県のバイオマスガス化発電所で水素タンクが爆発、市民1人負傷」

(● 20196月、「山形県のバイオマスガス化発電所の水素タンクの爆発(原因)」

 ● 20226月、「山口県の下関バイオマス発電所の焼却灰タンクで人身事故」

 ● 20233月、「関西電力㈱舞鶴発電所でバイオマス燃料がサイロ内で自然発火して火災」

 ● 20239月、「米子市のバイオマス燃料発電所で爆発・火災事故」

(● 20239月、「米子市のバイオマス燃料発電所の爆発・火災事故の住民説明会」

 ● 202310月、「米子市のバイオマス燃料発電所の爆発・火災事故の原因調査結果」

 ● 20241月、「愛知県の武豊火力発電所でバイオマス燃料が爆発・火災」 

■「武豊火力発電所」は、1966年に1号機、1972年に2号機から4号機が運転を開始したが、老朽化に伴って1号機から4号機を廃止し、代わりに環境への配慮などから石炭と木質バイオマスを混ぜて燃やす新たな設備を導入し、20228月から5号機として運転を開始した。燃料となる石炭や木質バイオマスは貯蔵施設からベルトコンベヤーでボイラーの周辺へと送られる。

所 感 (今回)

■ 今回の資料は写真や図を多用し、被災箇所や着火源などわかりやすく作成されている。要因分析も粉塵爆発だという推定でみれば、うまくまとめられている。

 一方、バイオマス燃料の木質ペレットには、粉塵爆発のリスクのほか、木質ペレットの発酵による可燃性ガスの発生リスクがある。木質ペレットの発酵による可燃性ガスの発生リスクは本当に無かったかという点について疑問が残る。たとえば、事象発生までCO計濃度の上昇が無かったとしているが、CO計の設置位置は適切だったのか、あるいは粉塵環境のなかでCO計が正しい値を示していたのかという点である。CO計に疑問が出れば、バンカー下部に木質ペレットが堆積していた可能性の要因が出てくる。

■ 前回、つぎのような疑問点を提示したが、今回の調査結果によれば、下線部の内容になり、疑問の残った項目もある。 

 ● 受入建屋、コンベヤー、バンカーには、木質ペレットの発酵による可燃性ガスの発生の可能性のある貯槽機能をもった設備で、この対策が必要である。  法令適合の状況では、バンカーには温度検知器およびガス検知器(CO計)を設置し、監視しているという。

 ● 受入建屋、コンベヤー、バンカーには、発酵による可燃性ガスを検出するようなガス検知器や温度監視計器は適切に機能するシステムを設置する。危険性を検知したら、回避の対応ができる方策が必要である。  同上。発熱兆候があれば、バンカー内のバイオマスの掻き出しを実施するという。  

 ● バンカーには温度計が設置されていたが、温度上昇に対応できていない。  要因分析で温度上昇についてコメントされていない。報道では、「バンカーについている温度センサーが通常20℃のところ、55℃まで上がっている」と報じられているが、要因分析などでは温度センサーに関するコメントはまったくない。

 ● 受入建屋、コンベヤー、バンカーには、粉塵発生のリスクに対して、粉塵爆発を防止する集塵機などの機器を設置する。  要因分析では、集塵機の能力不足の可能性があり、集塵能力を評価中だという。

 ● バイオマス燃料の質的転換をやってしまったのではないか。   要因分析では、バイオマス燃料の調達経緯についてコメントされていない。

 ● 運転管理の面でいえば、バイオマス燃料の自然発火を検知する監視システム(温度検知や一酸化炭素検知など)を装備していると思うが、この監視システムが正しく管理されていたか。1年の実績だけで監視システムをやめたりして、自然発火の要因を見逃したのではないだろうか。  法令適合状況では、建設時に1回、運転開始以降に2回の木質ペレットの発煙事象が発生している。その対応として安全確保のために適切な措置を講じているという。しかし、適切な措置の内容はコメントされていない。

 ● 木質ペレットが粉塵の出やすい種類に変更されていなかったか。  要因分析では、事故時の木質ペレット(米国産)について分析評価中だという。

 ● 1年余の運転実績では、受入搬送設備(受入建屋、コンベヤー、バンカー)に粉塵が多量に発生するような変化はなかったか。  要因分析では、事故時に搬送していた米国産ペレットだったという。現在、燃料を分析し、評価中だという。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

  ・Nhk.or.jp,  愛知 武豊町 火力発電所火災 燃料を貯蔵する設備付近が火元か,  February  01,  2024

    Jera.co.jp,  武豊火力発電所における火災発生について(第1報~第5報),  January 31February  01,  2024

    Jera.co.jp,  木質バイオマス燃料を使用する当社火力発電所における緊急点検の実施結果について, February  02,  2024

    Yomiuri.co.jp,  愛知・武豊火力発電所の火災、出火元は燃料貯蔵設備か「木質ペレット」300トン保管, February  01,  2024

    Bloomberg.co.jp,  バイオマス発電所で相次ぐ火災、JERA武豊火力は過去3度発煙, February  01,  2024

    Jiji.com,  JERA武豊火力発電所で火災 ボイラー施設爆発、けが人なし愛知, January 31,  2024

    Nagoyatv.com,  火事の影響で5号機は発電を停止 復旧のめどは立たず 武豊火力発電所, February  01,  2024

    Asahi.com,  爆発音と震動に「地震が来たかと思った」 JERA火力発電所で火災, January 31,  2024

    Xtech.nikkei.com,  木質ペレット燃料が原因でまた火災事故、JERAは火力発電所を緊急点検, February  01,  2024

    News.yahoo.co.jp, 愛知の発電所火災、燃料入るバンカー火元か 通常20→55度に, February  01,  2024

    Rief-jp.org,  JERAの愛知・武豊火力発電所で爆発・火災事故。超々臨界圧火力発電(USC)にバイオマス混焼方式。バイオマスが火災要因の可能性。JERA1年半前に茨城県でもバイオマス火災発生, January 31,  2024

    Chunichi.co.jp, 武豊火力発電所の火災、中部電力など出資のJERAが事故調査委を設置, February  05, 

    Jera.co.jp,  131日に発生した武豊火力発電所における火災事故の調査状況について, March  21,  2024

    Jera.co.jp,  武豊火力発電所における火災事故について(第20回電気設備自然災害等対策ワーキンググループ資料, March  21,  2024


後 記: 今回の資料を最初に見て感じたことは、さすがに保安規定を司る経済産業省(中部近畿産業保安監督部)が関わる(オブザーバーですが)と、りっぱな調査報告書が出されるものだということです。それはそうでしょう、バイオマス発電所では、これまで東京電力、関西電力、中部電力という大手電力会社が直接あるいは間接に事故を起こしているのですから、真剣にならざるを得ないでしょう。ただ、調査報告の内容を読んでいくと、なにかすっきりしないものが残ります。なぜだろうと考えてみると、要因分析や法令適合状況を読むと、設計者の観点からの見方であり、発電所の保守や運転の実績・経験からの分析が希薄だったからです。

2024年4月10日水曜日

米国オクラホマ州の石油生産施設で落雷によるタンク爆発・火災

 今回は、2024320日(水)、米国オクラホマ州カナディアン郡ピエモンテにある石油生産施設に落雷があり、タンクが爆発して火災が起こった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)カナディアン郡(Canadian)ピエモンテ(Piedmont)にあるマラソン・オイル(Marathon Oil)の石油生産施設である。

■ 事故があったのは、ウォータールー道路とシマロン道路(Waterloo and Cimarron roads)の交差点近くにある施設のタンク設備である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2024320日(水)夜、石油生産施設に落雷があり、タンク設備が爆発して火災が起こった。

■ 当時、ピエモンテの住民は数多くの雷の発生を目撃していた。タンク設備から少し離れたところの住民は、落雷時に爆発が見えたと語っている。

■ 発災に伴い、消防隊が出動した。

■ 石油生産施設では、避雷針を立てて雷の衝撃を回避しようとするが、ときには効果なく被害が出ることもある。今回の場合、有効に働かず、タンクに落雷した。

■ 石油生産施設内には、複数基の石油貯蔵タンクや塩水貯蔵タンクがあった。

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。

■ 近くの水路系に流れ込んだものは無かった。

■ ユーチューブには、落雷を伝えるニュースが投稿されている。

 ●Youtube.comPiedmont residents witness lightning causing explosion at oil tank site in Piedmont2024/03/22

被 害

■ 石油生産施設の油タンクが損壊した。 

■ 負傷者は無かった。 

< 事故の原因 >

■ 爆発・火災の原因は落雷である。

< 対 応 >

■ 作業員が現場へ行ってすべてを閉止したあと、火災を鎮めることができた。

■ マラソン・オイル社の関係者は事故に関するコメントの要請に応じていない。


補 足

■「オクラホマ州」(Oklahoma )は、米国の中部にあり、州の南隣はテキサス州で、人口約400万人の州である。

「カナディアン郡」(Canadian)は、オクラホマ州の中部に位置し、人口約15万人の郡である。

「ピエモンテ」(Piedmont)は、カナディアン郡にあり、人口約6,000人の町である。ピエモンテは自治都市であり、市議会と管理政府が管轄し、オクラホマシティ都市圏である。

■ 「発災タンク」の仕様は報じられておらず、分からない。グーグルマップで調べると、発災場所と思われる場所に同じ直径のタンクが4基ある。タンク直径は約3.2mで、高さを56mとすれば、容量は4048KLである。タンクは石油貯蔵と塩水貯蔵であり、爆発して火災になったのが石油貯蔵タンクであるとみられる。被災後の施設を見ると、爆発して横倒しになったタンクが1基ある。立っているタンクは2基しか見られないが、もう1基被災しているのかも知れない。

所 感

■ 雷が地上に落ちる際に通る道は、空気が薄いところ(電気が通るときに邪魔になる窒素や酸素の分子が少ない状態)や湿度が高いところ(水に含まれるカルシウムや金属分によって電気が通りやすい)で、雷光が示すようにジグザグに進むが、地表へ最も速い経路だという。この地方は平原であるが、雷の落ちやすい風力発電の風車や他の設備を狙わず、事故のあった石油生産施設に落ちるとは自然の摂理とはいえ、辛辣な結果だと感じざるをえない。

■ 石油タンクが爆発で飛んでおり、一瞬の大きな力だったことがうかがえる。火災はタンクというより、周辺設備だったとみられる。消防隊が出動したようであるが、積極的な消火活動を行った様子はなく、燃え尽きるまでの消極的消火戦略だった思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Koco.com, Piedmont residents witness lightning causing explosion at oil tank site in Piedmont,  May 21,  2024

    Dailydispatch.com, Residents witness lightning cause explosion at oil tank site in Piedmont,  May 22,  2024


後 記: オクラホマ州カナディアン郡の発災した石油生産施設の近くには、風力発電の風車が立ち並び、米国の豊かさを感じます。しかし、202367月にかけて起こった「米国オクラホマ州の石油生産施設で相次いで落雷よるタンク火災」 20243月)を紹介しましたが、2024年に入ってからもオクラホマ州でのタンク火災事故は続いているようです。

2024年3月31日日曜日

米国カリフォルニア州でトラックの燃料タンクが爆発、対応中の消防士9名が負傷

 今回は、2024215日(木)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスの路上で、牽引用の大型トラックの燃料用の圧縮天然ガスタンクが火災を起こしたため、通報を受けた消防隊が出動して対応中に爆発が発生し、消防士9名が負傷するという事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国のカリフォルニア州(California)ロサンゼルス(Los Angeles)のウィルミントン(Wilmington )地区の路上である。

■ 事故があったのは、トレーラーヘッドと呼ばれる牽引用の大型トラックで、燃料用の圧縮天然ガス(Compressed Natural GasCNG)のタンクである。圧縮天然ガスの圧力は3,000psi20.6MPa≒210kg/c㎡)である。大型トラックは、ヒーブ・ロード・トランスファー社(Heave Load Transfer, LLC.)所有で、事故当時、トレーラーを牽引していなかった。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2024215日(木)午前7時頃、ロサンゼルスのウィルミントン地区で大型トラックが火災を起こした。  

■ 圧縮天然ガス(CNG)とみられるタンクが燃えているとの通報を受け、ロサンゼルス消防局の消防士10名が出動した。 出動したのはよく訓練され優れた機動部隊だった。

■ 消防隊が対応していたとき、大型トラックに装備された圧縮天然ガスの燃料タンクが爆発し、ファイアボールが舞い上がった。この爆発で、火災に対応していた消防士10名のうち9名が負傷した。9名は全員がハーバーUCLAメディカルセンターに救急搬送された。うち8名の容体は安定していたが、1名は重症である。

■ 運転手は、大型トラックの異変に気づき、緊急通報用の911番に通報するためにその場を離れたため、ケガを免れたという。

■ 大型トラックは圧縮天然ガスを燃料とし、燃料タンクは100ガロン(378リットル)のタンク2本が装備されており、そのうちの1本がウィルミントンの現場に消防隊が到着した6分後に爆発した。このときの音声が公開され、助けを呼ぶ緊急用符号語の「メーデー!メーデー!メーデー!」の後で、「CNGトラックで爆発が発生した。複数の消防士が倒れている」というもので、直後、ハズマット(HazMat)隊を含む150人以上の消防士が現場に出動した。

■ ファイアボールは電信柱と同じくらいの高さ30フィート(9m)で、近くの変圧器のひとつを爆発させた。さらに、2本目の燃料タンクからはガスが出ていて、小さな炎が燃え続けており、爆発の恐れが残っていた。

■ 負傷した消防士を助けるためと燃え続ける2本目のタンクに遠隔から水を供給するため、消火ロボットが導入された。

■ 大型トラックは完全に破壊され、路上に瓦礫が散乱した中で、2本目の圧縮天然ガス燃料タンクは2時間経過しても小さな炎を燃え続けており、消防隊員は安全な距離を保つことを余儀なくされた。

■ 爆発は工業地域に近いところで起きたが、広い道路と線路によって近隣地域からは隔てられていた。また、半径500フィート(150m)の広範囲に警戒線が張られた。

■ ロスアンゼルス市消防局は「住民は屋内に留まるよう呼びかけている」とし、 「当面の危険区域内には住宅はなく、正式な避難命令は出していない」と発表した。一方、発災時、ロサンゼルス警察は近隣住民約75人に数時間の家屋からの立ち退きを求められていた。

■ この地域の住民のひとりは「大きな揺れを伴う爆発だったので、地震のようでもあり、爆弾のようでもありました」と語っている。爆発時の破片が庭に飛んできた住宅もある。爆風の影響でケガをした住民もおり、負傷した人は複数いるという。爆発の近いところに住む人にとって、爆発によって建物の構造に影響していないか懸念する人もいる。

■ ユーチューブには、爆発の瞬間を撮影された動画などのニュースが投稿されている。

 YouTube9 firefighters hurt, 2 critically, in Los Angeles area explosion involving natural gas cylinder2024/2/16

 ●YouTubeWilmington explosion injures 9 firefighters2024/2/16

 ●YouTubeWilmington gas explosion leaves 9 LA firefighters injured2024/2/16

 ●YouTubeNatural gas-powered truck explosion injures 9 firefighters in Los Angeles2024/2/16

 ●YouTubeNew video shows massive Wilmington explosion2024/2/16

被 害

■ 大型トラック1台が損壊した。ほかに爆発の影響を受けた自動車や住宅があるとみられる。 

■ 事故により対応中だった消防士9名が負傷した。近隣に住む人の中にはケガした人も複数いるとみられる。

< 事故の原因 >

■ 爆発の原因は調査中である。

< 対 応 >

■ 2本目タンクは予防措置として「ガス抜き」が行われた。

■ 消防当局は、爆発前に大型トラックがどのようにして火災を発生したのかは不明であり、調査中であると述べた。

■ 消防署長は、「今日という日は、消防活動がいかに危険であるかを私たちに再認識させる日でした。消防隊の対応について消防署として振り返ってみることとします。このチームは高度な訓練を受けており、今回の事故についてあらゆる側面を調査し、教訓と改善事項をまとめたいと思っています」と語った。

■ 一方、専門家も今回の事故について、この職業には絶えず変化する自然環境と危険性があることを気づかせるものであり、「今日の世界では、CNG 燃料、水素燃料、電気自動車、ガソリン、ディーゼルなどさまざまなタイプの車両があるため、火災はもちろんのこと、それぞれのタイプの車両に関連する事故が発生するたびにいろいろな意見が出て議論沸騰している」と語っている。

■ 217日(土)、トラックを所有する会社ヒーブ・ロード・トランスファー社は、つぎのような声明を発表した。 

「ヒーブ・ロード・トランスファー社は、215日(木)朝にカリフォルニア州ウィルミントンで当社の圧縮天然ガス(CNG)トラック1台が爆発したことを認識しています。私どもはアドバイザーとともに事故を調査しており、当局と協力して原因を究明しています。現場で対応した消防士に感謝するとともに、安全を確保する過程で負傷した方々の回復をお祈りいたします」

■ 今回の事故で完全に破壊されたトラックは、一見平凡な世界に潜む危険性を示すものとなっている。消防士は日常的なヒーローとして称賛されることが多いが、奉仕するという使命に内在するリスクがあることを再認識させられる。圧縮天然ガスの輸送や取扱いの安全対策に関する疑問が前面に浮上している。今回の事故は、危険に立ち向かう人々の勇敢さを浮き彫りにするだけでなく、将来の悲劇を防ぐために厳格な安全手順の必要性があることをはっきりと示している。

補 足

■「カリフォルニア州」(California)は米国西海岸に位置し、メキシコとの国境から太平洋沿いに細長く伸び、人口約3,890万人の州である。

「ロサンゼルス」(Los Angeles)はカリフォルニア州の中部に位置し、人口は同州最多の約390万人である。なお、ロサンゼルス都市圏には 11 のトップレベルのプロスポーツ・チームの本拠地があり、野球では大谷翔平が所属していたロサンゼルス・ エンジェルスと現在所属するロサンゼルス・ドジャースがある。

「ウィルミントン」(Wilmington)はロサンゼルス市にある地区で、産業が発達しており、人口約53,800人である。

■「発災タンク」はトラックの燃料タンクで、内部の燃料は天然ガスを圧縮した圧縮天然ガス(Compressed Natural GasCNG)である。燃料タンクは容量100ガロン(378リットル)で左右に2本付いており、圧力は3,000psi 20.6MPa≒210kg/c㎡)である。

■ 天然ガス自動車は燃料の種類によって大きく3種類に分けられ、圧縮天然ガスは天然ガスを20MPaに圧縮して容器(燃料タンク)に貯蔵して使用するもので“CNG自動車とも呼ばれている。天然ガス自動車(CNG自動車)の特徴は地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)の排出量を、ガソリン車より23割低減でき、 光化学スモッグ・酸性雨などの環境汚染を招くNOx(窒素酸化物)、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)の排出量が少なく、SOx(硫黄酸化物)が排出されない。


 天然ガス自動車の安全性は、日本ガス協会によると、使用部品や装置の機能によって衝突時や火災時につぎのように確保されているという。

 ●衝突の場合、①過流防止弁、主止弁、燃料遮断弁など各種の安全装置により、燃料(天然ガス)の漏洩を防止する。②ガス容器(燃料タンク)、配管・継手、機器類はすべて衝突に耐えうる強度を持ち、また損傷しにくいように配置されている。

 ●火災の場合、ガス容器が破損しないように、ガスを安全に排出する安全弁が作動し、ガス容器内の圧力上昇を防ぎ、破損を防止する。また、ガス充填終了後にガス充填ホースを接続した状態で発進した場合、車両および充填設備の損傷を防ぐために、車両側のガス充填口の扉を開くとスタータ回路が切れ、エンジンが始動しないようにした誤発進防止装置(スタータ・インターロックシステム)を装備した車両もある。

所 感

■ 原因は調査中で分からないが、つぎのような状況と経過ではないかと思う。

 ●トラックの運転手は最初に“異変を感じた” と語っているということなので、異変は圧縮天然ガスの燃料系統から漏れ始めていたとみられる。

 ●漏れ始めた圧縮天然ガスがトラックのエンジン系統の熱などの引火源によって火がつき、火災になったと思われる。画像を見ると、火災は結構な大きさに進展しているので、漏洩は次第に大きくなっていたと思われる。

 ●消防隊が到着して6分後に爆発している。炎は燃料タンクをなめており、タンク材質の強度が低下し、圧縮天然ガスの圧力(約20MPa)に耐えきれず、一気に圧縮天然ガスが流出し、爆発現象に至ったと思われる。

■ 圧縮天然ガス自動車の安全対策として“火災の場合、ガス容器が破損しないように、ガスを安全に排出する安全弁が作動し、ガス容器内の圧力上昇を防ぎ、破損を防止するというのが無力感を感じる。ロサンゼルス消防局のよく訓練され優れた機動部隊の消防士10名が出動しているが、天然ガスが豊富で広く流通している圧縮天然ガス自動車の安全対策についてはよく理解していただろう。圧力20MPaといえば、プロセス装置の中でも圧力の高い重油直接脱硫装置と同じレベルである。このような高圧の燃料タンクを装備して移動する自動車はリスクが高過ぎ、無理がある。

 一方、日本では考えられないような危険性のあるプロセス装置を開発・導入してきた米国であり、今回のような事故もハザード評価を行い、事故の発生頻度を推測し、定量的リスクアセスメントにより判断されるのだろう。(見方によっては数字のマジック)

 注記;タンク事故を例にすれば、「貯蔵タンクにおける事故の発生頻度」201512月)や「米国の石油貯蔵タンク基地におけるハザード評価」20161月)を参照。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Sandiegouniontribune.com,  9 Los Angeles firefighters injured after burning truck’s fuel tank explodes,  February  16,  2024

     Theguardian.com,  Los Angeles firefighters rushed to hospital after huge truck explosion,  February  16,  2024

       Fox59.com,  Video shows truck explosion that injured at least 7 firefighters in California,  February  15,  2024

       Abc10.com,  9 Los Angeles firefighters injured in explosion of burning truck's fuel tank,  February  15,  2024

       Nbcnews.com,  9 Los Angeles firefighters injured, 2 critically, in explosion of burning truck’s fuel tank,  February  16,  2024

       Abc7news.com,  9 firefighters hurt, 2 critically, in Los Angeles area explosion involving natural gas cylinder,  February  16,  2024

      Cbsnews.com,  9 LAFD firefighters injured after explosion in Wilmington area,  February  17,  2024

      Bnnbreaking.com,  9 LAFD firefighters injured after explosion in Wilmington area,  February  15,  2024

      Nbclosangeles.com,  SoCal trucking company investigating explosion that injured 9 LA firefighters,  February  15,  2024


後 記: 事故の情報を知って最初はタンクローリーの事故だと思い、つぎにトラックに積んだ横型タンクだと思いました。情報を調べていって、トラックに装備された圧縮天然ガスの燃料タンクだということが理解できました。消防士9名が負傷したという事故だというので、思い出したのは、 19823月に起こった「重油直接脱硫装置配管の水素侵食による破裂」事故です。この事故では、プロセス流体が漏れ出した後、破裂して火災が発生し、運転員5名が死亡し、3名が負傷しました。圧力異常を検知後、計器室から8名が現場確認のため漏出現場に集まりましたが、漏出発見から45分という短い時間で破裂したため、大きな被害となりました。今回の圧縮天然ガス自動車の事故と類似しています。この事故以降、異常を検知したら、大勢で見に行くのではなく、最小限のふたりで行き、万一のことを考えてパイプラックの柱などに身を隠しながら点検するという教訓話が伝わっていました。

  

2024年3月22日金曜日

米国オクラホマ州の石油生産施設で相次いで落雷よるタンク火災

 今回は、202367月にかけて米国オクラホマ州オクラホマ・シティ周辺の石油生産施設で落雷によってタンク爆発・火災が3件続けて起こった事例を紹介します。


< 発災施設1の概要 >


■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma )オクラホマ・シティ(Oklahoma City)に近いユニオン市タトル(Tuttle)にある石油生産施設である。

■ 事故があったのは、ハイウェイ37号線の近くにある石油生産施設のある4基の円筒型タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2023622日(木)夕方、石油生産施設に落雷によってタンクが爆発し、火災が発生した。      

■ タトルの住民は、激しい炎が立ち昇り、煙が空気中に充満しているのに気が付いた。

■ 発災に伴い、ユニオン市消防署の消防隊が出動した。

■ ユニオン市消防署は、火災の状況を撮ったビデオ映像をフェイスブックに投稿した。映像には4基のタンクが火災になっているのが写っている。

 YoutubeLightning strike sparks tank battery fire in Union City, Oklahoma2023/6/24

被 害

■ 石油生産施設のタンク4基が損壊した。内部の原油が焼失した。

■ 負傷者はいなかった。 

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は落雷とみられる。

< 対 応 >

■ 火災は石油生産施設のある4基のすべてのタンクに延焼した。

■ 事故に伴う負傷者は出なかった。

< 発災施設2の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma )オクラホマ・シティ(Oklahoma City)の近郊にある石油生産施設である。

■ 事故があったのは、ノースウェスト220番通り(Northwest 220th Street) とカウンシルロード(Council Road)近くの石油生産施設の石油タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202376日(木)早朝、石油生産施設にある石油タンクが爆発し、火災となった。

■ 発災に伴い、ディアクリーク消防署の消防隊が出動した。

■ 事故に伴い、近くの道路は交通制限で封鎖された。

■ 事故に伴う負傷者は出なかった。

■ 火災は落雷によるものとみられる。

■ ユーチューブなどでは、火災に関する動画が投稿されている。

 YoutubeLightning sparks tank battery fire in Oklahoma City metro2023/07/06

 YoutubeTank battle explosion in Oklahoma City metro2023/07/06

被 害

■ 石油生産施設のタンク3基が損壊した。内部の原油が焼失した。

■ 負傷者はいなかった。 

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は落雷とみられる。

< 対 応 >

■ 消防隊は、火災を制圧し、火は消された。

■ 交通制限は解除された。


< 発災施設3の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)オクラホマ・シティ(Oklahoma City)に近いユーコン(Yukon)にある石油生産施設である。

■ 事故があったのは、ノースウェスト34区(NW 34th Terr.)の住宅地域にあった石油生産施設の石油タンクである。現在は住宅地域になっているが、もともと石油生産施設だけがあったところに住宅が進出してきたところである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202366日(火)夜、石油生産施設で落雷があり、タンクが爆発し、火災になった。

■ 近隣住民によると、音が大きくて最初は何が起こっているのか分からなかったという。住民のひとりは、裏庭のフェンスのすぐ後ろで火の手が上がり、外に出たときに炎が4050フィート(1215m)の高さで空に向かって燃え上がっているのを見たと語った。

■ タンク1基が爆発して空中に舞い上がり、元の場所から約100フィート(30m)離れたところに落下した。

■ 住民のひとりは、「ダイニングルームの窓から外を見ると、大きな火の玉が見え、私たちを見つめているようでした。それで、すぐに家から離れることを決めました」と語っている。

■ 発災に伴い、オクラホマ・シティ消防署の消防隊が出動した。

■ ユーチューブでは、事故後の状況の動画が投稿されている。

 Youtube Fire Crews Respond To Tank Battery Fire In NW Oklahoma City2023/06/07

被 害

■ 石油生産施設のタンク2基が損壊した。内部の原油が焼失した。

■ 負傷者はいなかった。

■ タンクとその周辺地域での推定被害額は約2万ドル(300万円)とみられる。  

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は落雷とみられる。

< 対 応 >

■ 消防隊が現場に到着したとき、雨によって大部分の火災は消えていた。

油の大半は排水ますの中に流れ込み、燃え尽きていた。火災は石油生産施設まわりに生えていた草木が燃えている程度だった。

■ 現場では、24時間経っても空気中にまだ焦げた匂いが漂っているため、作業員が後片付けをしていた。

■ オクラホマ・シティ消防局は、タンクとその周辺地域での推定被害額は約2万ドル(300万円)だと発表した。


所 感

■ 最新データではないが、NASAによる世界の雷マップ」20126月)の米国における雷発生頻度はメキシコ湾岸のフロリダ州が雷活動の高い地域である。オクラホマ州も雷の多い地域のひとつである。しかし、今回のように202267月の1か月の間に、オクラホマ・シティ周辺の石油生産施設で落雷によるタンク火災が3件も起きており、異例の状況だといえよう。これも異常気象の現われの例であろう。

 最近の雷は、発生時期のズレや発生雷の激しさを感じる。もともと、米国の陸上油田の石油生産施設におけるタンクは落雷のリスクにさらされているが、落雷によるタンク爆発・火災の頻度は増えていくだろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Kfor.com,  Lightning strike likely to blame for tank battery fire,  June  23,  2023

     News.yahoo.com,  Lightning Strike Causes Tank Battery Fire in Oklahoma,  June  23,  2023

     Localnewsx.com,  Tank Battery Fire Caused by a Lightning Strike, Per the Union City Oklahoma Fire Department,  June  23,  2023

     Koco.com,  Lightning sparks tank battery fire in Oklahoma City metro,  July  06,  2023

     News.yahoo.com,  Lightning sparks tank battery fire in Oklahoma City metro,  July  06, 2023

     Kfor.com, Tank battery fire in NW OKC leaves burnt smell in the air 24 hours later,  June  07,  2023

     Okcfox.com,  Lightning strikes tank battery in northwest Oklahoma City,  June  07,  2023


後 記: 初めは622日の落雷によるタンク爆発・火災の情報を得ようとインターネットで検索していったら、別なタンク爆発・火災の事例があることがわかりました。いずれもオクラホマ州の事例で、しかもオクラホマ・シティの周辺であり、情報がこんがらかりました。しかし、622日の事故情報は市の消防署がSNSで動画投稿したものです。日本では、タンクの事故を消防署などがSNSで動画投稿するなどは考えられません。メディアが縮小傾向にある中、情報の伝達の場として考える時期ではないでしょうか。