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2016年3月26日土曜日

アフリカのガボンで石油タンクが爆発して死傷者7名

 今回は、2016年3月12日、中央アフリカのガボンにあるアダックス・ペトロリアム・オイル社の石油施設にあった原油貯蔵タンクが爆発して、7名の死傷者を出した事故と紹介します。
 写真Gabonreview.com から引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、中央アフリカのガボン(Gabon)のオバンク(Obanque)にあるアダックス・ペトロリアム・オイル社(Addax Petroleum Oil)の石油施設である。
 アダックス・ペトロリアム・オイル社は、中国の巨大エネルギー会社である中国石油化工集団公司(China Petrochemical Corporation、略称:Sinopec;シノペック)の子会社で、原油を生産している。

■ オバンクはイロンド-ディノンガ(Irondou-Dinonga)油田にあり、ガボンの沿岸都市ポール・ジャンティル(Port-Gentil)から南東約100kmに位置している。オバンクでは、ガボン政府とアダックス・ペトロリアム・オイル社との間で税金や環境義務などの問題で確執が長年続き、2012年12月にアダックス・ペトロリアム・オイル社は締め出された。このため、オバンクでの生産は、一時、国営のガボン・オイル・カンパニー(Gabon Oil Company)だけの操業になっていたが、2014年にアダックス・ペトロリアム・オイル社の操業再開が認められていた。
ガボン西部の沿岸都市ポール・ジャンティル付近
(ディアベタの近くに発災場所のオバンク石油施設がある) 
(写真はグーグルマップから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2016年3月12日(土)午後5時50分頃、石油施設にあった原油貯蔵タンクが爆発して、大きな炎が上がって火災となった。

■ 爆発は輸出用のNo.1タンクで起きた。このタンクは供用中ではなかったが、内部に2,000バレル(320KL)ほど油が入っていた。このタンクの近くにNo.2タンクがあり、このタンクは内部検査のため縁切りされ、予備清掃工事中だった。

■ 爆発時、現場にはメンテナンス請負会社であるORTEC社の作業員が10名いた。3名は無傷で逃げることができた。2名が軽い火傷を負い、4名はⅡ度からⅢ度の重度の火傷によって病院に搬送された。 1名は行方不明だったが、翌3月13日(日)朝にレスキュー隊によって発見され、死亡が確認された。

■ タンクの火災は、その後、制圧下に入った。

被 害
■ 爆発・火災によって石油施設の貯蔵タンクなどが損壊した。被害の範囲は分かっていない。

■ 爆発によって工事中の作業員に死傷者が出た。被害者は死者1名、負傷者6名の計7名だった。

< 事故の原因 >
■ 事故の原因は分かっていない。原因調査中である。

< 対 応 >
■ ガボン政府は、3月14日(月)、被災者とその家族に対して哀悼の念を表するとともに、事故原因の追究を約束した。
写真Gabonactu.com から引用)
(写真はYoutube.com - aLibrevilleTVから引用)
(写真はYoutube.com - aLibrevilleTVから引用)
(写真はYoutube.com - aLibrevilleTVから引用)
(写真はYoutube.com - aLibrevilleTVから引用)
補 足
■ 「ガボン」(Gabon)は、正式にはガボン共和国で、中央アフリカに位置する共和制国家である。西は大西洋のギニア湾に面し、北西に赤道ギニア、北にカメルーン、南と東にコンゴ共和国と国境を接している。人口は約160万人で、首都はリーブルヴィルである。フランス領から1960年に独立しており、公用語はフランス語である。
 ガボンはアフリカの産油国として、当該地域の他の国に比べ高い経済成長と政治的な安定を保ってきた。1975 年に石油輸出国機構(OPEC)に加盟したが、1995年に脱退している。石油生産量は、1997年のピーク以降、大型油田の成熟化によって減少している。現在、ガボンにおける原油生産量は23万バレル/日であり、国家収益の約60%を占める。
                      中央アフリカのガボン周辺  (写真はグーグルマップから引用)   
■ 「中国石油化工集団公司」(China Petrochemical Corporation、略称:Sinopec;シノペック)は、中国石油天然気集団公司(CNPC)、中国海洋石油総公司(CNOOC)と並んで中国の三大石油会社のひとつである。中国石油化工はもともと石油精製・石油化学を中心とする石油会社だったが、石油事業の川上(石油採掘)から川下(石油化学工業)までを一貫して行う大企業への集約が図られた。石油採掘への進出として、2009年、アフリカやイラクの石油権益をもつスイスのアダックス・ペトロリアム・オイル社(Addax Petroleum Oil)を買収した。

■ 「アダックス・ペトロリアム・オイル社」(Addax Petroleum Oil)は、ガボンで4箇所の油田権益を保有している。うち陸上のイロンド-ディノンガ(Irondou-Dinonga)油田の権益は88.75%保有し、実際の採掘操業行っている。
 オバンクの石油施設の設備仕様のほか、発災に関係した2基のタンク仕様は分からない。被災写真では比較の対象がないので、はっきりしないが、直径10~15m×高さ5~8mだと仮定すれば、容量500~1,000KLクラスの円筒タンクとみられる。爆発したタンクには320KLの油が入っていたとされるので、タンクの半分程度であったと思われる。
 被災写真からすると、爆発したタンクは原形をとどめない状態で損壊したのではないかと思われる。半壊して火災になったタンクは予備清掃工事中のものではないかと思われる。
アダックス・ペトロリアム・オイル社の権益油田(左)とオバンクの石油施設(右)
(図はAddaxpetroleum.comから引用)(写真はPetroglobalnews.comから引用)
所 感
■ 今回の事故は、隣接した2基のタンクのうち、原油の入ったタンクから放出された可燃性ガスに、もう1基の予備清掃工事中の火気作業によって引火・爆発したものと思われる。このような類似事故としては、2003年の「エクソンモービル名古屋油槽所における工事中タンクの火災事故」などがある。
 タンク内外での火気工事は最も危険な作業のひとつであり、米国では「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」としてまとめられている。7つの教訓の項目はつぎのとおりである。(詳細は同ブログを参照)
   ①火気作業の代替方法の採用  ⑤着工許可の発行
   ②危険度の分析        ⑥徹底した訓練
   ③作業環境のモニタリング    ⑦請負者への監督
   ④作業エリアのテスト 

■ 被災写真を見ると、タンクが損壊するほど激しい爆発だったとみられ、単に外部へ放出した可燃性ガスの爆発でなく、タンク内部の爆発混合気による爆発が伴ったのではないかと推測する。爆発は午後5時過ぎであり、工事着工時(おそらく午前中)の環境と変わるような要因が発生していたのではないだろうか。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
    ・Menafin.com, One Dead, Six Wounded in Gabon Oil Site Explosion: Govt,  March  14,  2016 
  ・Upstreamonline.com,  ‘One Killed’ in Sinopec Gabon Oil Site Blast,  March  14,  2016
  ・News24.com, 1 Dead, 6 Wounded in Gabon Oil Site Explosion,  March  14,  2016  
  ・Petroglobalnews.com,   Missing  Worker Found Dead after  Gabon  Tank  Explosion at  Sinopec Subsidiary,  March  14,  2016
    ・Ghanapresident.com, 1 Dead, 6 Wounded in Gabon Oil Site Explosion,  March  14,  2016
    ・Sabreakingnews.co.za,  Gabon Oil Site Explosion Kills 1, Injures 6,  March  14,  2016
    ・Hazardexonthenet.net,  Explosion at Sinopec Oil Storage Site in Gabon Kills One, Injured Six,  March  15,  2016
    ・Hydrocarbons-technology.com,  Sinopec Reports Explosion at Oil Site in Southwest Gabon,  March  15,  2016
    ・Chinabusinessnews.com,  One Killed, Six Injured in Sinopec Gabon Oil Site Blast,  March  15,  2016
    ・Gabonreview.com,  Hydrocarbures: Explosion sur un bac de stockage d’Addax Petroleum,  March  14,  2016



後 記: 今回のタンク事故情報は内容が乏しい割に時間を費やしました。まず、ガボンという国について予備知識がなく、オバンクという土地もグーグルマップではっきりしません。また、悩まされたのは発災写真で、事故を報じたインターネット情報源でいろいろな写真が添付されていました。調べていくと、どうも当該事故の写真ではないものが多いように思えてきました。画像検索を手がかりにやっと確かな発災写真を得ることができました。結局、分かったことは、ガボンの公用語がフランス語であり、英文による情報は限られているということです。
 一方、感心したのは、このような国に進出していく中国(シノペック)の開拓心(?)です。シノペックは原油備蓄を含めた石油精製・石油化学プラントの操業を主にしていると理解していましたが、このような形で原油掘削事業に参画しているとは知りませんでした。現地では、ガボン政府といろいろ確執があるようで、問題は多そうです。タンク事故情報から国情の一端を知る事例でした。
ガボンの石油施設事故報道で掲載された写真


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